5月下旬、初夏を思わせる青空にヤナギの花粉が漂い始める。
 おもむろに樹木を蹴ると大きなカミキリムシが落ちてきた。
 キィキィと泣きながら、
 厚みのある胴体に黄色い線が入った大きな個体こそ、
 日本最大のカミキリムシ
 
  シロスジカミキリ
 
 3年間という長い成長期間を経た成虫は、
 丈夫でがっちりした大顎を使用して、
 幹の中から這い出てくるのだ。
 
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 挟まれるとケガをしてしまうほどの大顎と複眼は、
 まるで西洋美術に描かれた悪魔の顔にそっくり。
 このカミキリムシが活動を始めるのを確認し、
 初めて自分の中で夏のスイッチが入るのだ。
 
 
 気性が荒く、
 クヌギ・コナラ・ヤナギ等の皮を餌とするため、
 飼育は注意が必要だ。
 
 ケースに2~3頭の個体を同時に入れて飼育してみた次の日、
 長い触角が途中から嚙み切られ情けない姿になっていた。
 やはり飼育は、ワンケースに1頭が基本だ。
 

 

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 蝉の声が騒がしい汗がしたたり落ちる7月下旬。
 ♀のシロスジカミキリがいよいよ産卵活動に入った。
 時間をかけてゆっくりと産卵していくその姿。
 その大きさと仕草には、母親となる風格を感じる。
 私はその姿に畏れを感じ、直立不動で産卵を見守った。
 言葉に表せない生命の神秘を、
 1頭のシロスジカミキリが教えてくれた。
 

 

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  秋深まる10月初旬の雑木林。
 黄色から白色に変色した亡骸を見つけた。
 約4ヶ月ほどでその一生を終えるシロスジカミキリの成虫。
 
     
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                循環しているこの世界。
              全て生命あるものは
             生まれ生まれてやがて死んでいく・・。
 
 
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 葉を落とし北風吹きすさぶ冬本番の雑木林の中で、
 「次は自分の番だぞ」
 と決意しながら越冬している新成虫が眠っている。
 
  
 季節はめぐりやがて春・・
 
 
 雪が溶け、あたたかい日差しが注ぐ雑木林。
 
 そっと静かに耳を澄ませれば、
 
  カリカリ・・・
  カリカリカリ・・・
  カリカリカリカリ・・・
 
 という幹を削る生命の音が、
 
 ほら、どこからともなく聞こえてくるよ。
 
 
 
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長年にわたり、シロスジカミキリが羽化したコナラの木。
木の幹がスカスカに乾燥し、折れていた。
 
 
                                                                             
チョキ過去のカミキリ画像を活用してみました。仙台市周辺にて撮影
 
  ※長さだけを計測すればミヤマカミキリが国内最長であるが、
  外骨格の大きさなど総合的に判断するとシロスジカミキリが国内最大 
    のカミキリムシといえる。