大相撲春場所・中日八日目、元大関の高安がただ一人勝ちっ放しで給金を直した。宏美さんは、NHK『福祉大相撲』で共演されて以来、高安関の大ファンであることを公言している。高安関は大関時代にも何度となく優勝のチャンスがあったのだが、未だ実現していない。今場所は一人横綱の照ノ富士も休場、千載一遇の好機到来と言える。初優勝を目指して、高安関の後半戦の奮闘を期待したい。

 

 

 今日取り上げる「愛しても愛しても」は、2枚組の少々変わったベスト『EXCEL ONE 岩崎宏美のすべて』のA面2曲目に収められた未発表オリジナルである。作詞:阿久悠、作編曲:萩田光雄。2年前、まだ幼かった二十才の頃の恋をほろ苦く思い出す歌である。

 

 説明のために曲の構成に触れておこう。カッコ内数字は小節数、歌詞のカッコはアウフタクトである。

 

A(8):枯葉が街に舞い踊り〜


A’(8):二十才は遠い出来事で〜


B(12):愛 愛しても ルルル〜


C(8):(くちびるふ)れた あのひとは〜


 

 というワンコーラスで、全体としてもAA’BC×2と、スッキリした作りだ。サビはCではなくBパートである。

 

 イントロはストリングスのユニゾンで劇的に始まる。テンポはBPM≒100とミディアムで、宏美さんの歌い方も内容に比してライトに聞こえる。Aメロでは16分音符で畳み掛けるような符割が目立つ。AとA’の後半4小節の楽譜を以下に示す。

 

 

 見比べていただくとお分かりと思うが、ほぼ同じモチーフを用い、A’の方が少し音域を上げて盛り上げている。そしてコード進行もドッペルドミナント「感傷時代」「コンサート」のブログ参照)→ドミナントトニックと流れるようにサビに突入するのだ。

 

 「♪ 愛 愛しても ルルル〜」からは、憂いを含んだ湿度の高い宏美さんの声が、美味しい音域で響くサビだ。ここで萩田先生は、この前年のシングル「スローな愛がいいわ」にも入っているカスタネットを効果的に使用している。

 

 サビ後半では、「♪ いつも●●●うしろ●●●姿●●●」という風に、歌メロをピアノが後を追う(●印の部分)のが効果を発揮していると感じる。Cパートのバックで流れるオーボエも印象的だ。間奏では、そのまま流れると見せて後半2拍余計に入るのもアクセントとなっている。

 

 

 宏美さんの膨大な作品群の中ではマイナーな小品ではあるが、噛めば噛むほどになかなか味のある佳作である。

 

(1981.12.5 アルバム『EXCEL ONE 岩崎宏美のすべて』収録)