この曲は、ミュージカル『プロミセス・プロミセス』(1968,Promises, Promises)のためにバート・バカラックが作曲、ハル・デヴィッドが作詞した曲。原題は「I’ll Never Fall in Love Again」である。ディオンヌ・ワーウィック盤(1969)が全米6位の大ヒットを記録した。

 

 

 ディオンヌ・ワーウィック、バート・バカラック、ハル・デヴィッドのトリオは、「ウォーク・オン・バイ」「サンホセへの道」など、洗練されたポップスでヒットを連発した強力な組み合わせだった。

 

 

 宏美さんは、この曲をデビュー2年目の秋のコンサートで歌っている。ライナーノーツによれば、「選曲では『ジョリーン』『愛がすべて『サムシング』明日に架ける橋』など洋楽がかなり増えていますが、これは、歌いたい曲をあれこれお願いし、それがどんどん採用されたからなんです」とのことで、この「恋よ さようなら」が宏美さんのリクエストによるものだったのかどうかは判然としない。訳詞は岩谷時子先生で、原詞の雰囲気をよく残している。

 

 お洒落でユーモアのある失恋ソングで、綺麗に韻も踏んだ原詞である。友だち(或いは自分自身?)に向かって「恋なんてしても◯◯、△△、□□とロクなことがない。私はもう恋はしないわ」と忠告めいたことをあげつらいながら、最後には

 

♪ So far at least until tomorrow

 I’ll never fall in love again.

(とりあえず明日までは、もう決して恋に落ちたりしないわ)

 

とは、また恋する気満々の歌詞で、微笑ましい限りだ。

 

 宏美バージョンは、そこまで訳出していないが、ライトなサウンド(編曲:田辺信一)と宏美さんのちょっとお茶目な歌い方から、何とはなしに「ホントにもう恋をする気ないのかしら?」とやや疑わしく聞こえるのである。😉まさに名曲、名演と言うことだろう。

 

 この曲は途中でメンバー紹介が入る。初年度と違い宏美さんは落ち着いて紹介ができていると思うが、その後のバンドプレイでメロディーのトランペットが見事に音を外す。🤣私もトランペットを吹くので、間違えたのではなく外れてしまうことはあるあるで同情するのだが。これもライブならではである。💦

 

 

 ところでこの歌は、マリーンのアルバム『マリーン sings 熱帯JAZZ』(2009)にも収録されている。タイトル通り、カルロス菅野プロデュース、熱帯JAZZ楽団とのコラボを含むゴキゲンなラテン・アルバムで、私はこの「恋よ さようなら」という曲の魅力を再認識してしまった。是非皆様にご紹介したかったのだが、残念ながらこの曲のマリーンの動画は見つからなかった。だが、熱帯JAZZとのライブでご自身のヒット曲「マジック」を歌っている動画が上がっていたので、ご紹介しておこう。素晴らしいテイクで、「恋よ さようなら」の歌唱も想像できるのではないだろうか。

 

 

 1985年4月頃、NHKの『ザッツミュージック』という番組で、宏美さんとそのマリーンが競演したことがある。お二人で「想い出の中に」(Among My Souvenirs)を歌われた。その映像は残念ながら見つからなかったが、同じ回に宏美さんが「渚のデイト」、マリーンが「大人になりたい」を続けて歌われているシーンが見つかったので、最後にご覧いただこう。当時の若手実力派同士、夢の競演である。

 

 

(1976.12.5 アルバム『ロマンティック・コンサート Ⅱ 〜ちいさな愛の1ページ〜』収録)