宏美さんのファースト・アルバム『あおぞら』B面で、アクセント的な存在感を発揮するナンバー。作詞が阿久先生、作編曲が筒美先生である。

 

 『あおぞら』は、内容的には恋愛に憧れる少女といった体のラブソングがほとんどだ。音楽的には全体に初々しい宏美さんの透明感溢れる声をフィーチュアしたアイドル歌謡然とした楽曲が多い。もちろん、筒美先生・穂口先生をはじめとした強力な作家陣であり、クォリティ・完成度が高いのも特徴だ。

 

 その中でこの「涙のペア・ルック」は、歌詞世界でも音楽面でもやや異色と言って良い。内容的には唯一の失恋ソングであるし、2ndアルバム『ファンタジー』の曲作りを先取りしたような雰囲気を感じさせるのだ(「センチメンタル」のB面の「そうなのよ」も75年の曲だが、同じ匂いがする)。

 

 

 星屑スキャットのギャランティーク和恵さんが、「アーリー岩崎宏美アルバム」(70年代の10枚)のレビューをされているので、ご紹介しておこう。非常に興味深い内容が多い。その中でもこの「涙のペア・ルック」は推薦曲とされている。ついでと言っては失礼だが、星屑スキャットの歌う「シンデレラ・ハネムーン」も貼っておこう。ハモるところなど大好きである。

 

 

 まず簡単に曲の構成を押さえておこう。

 

A:街角には似合いの ペア・ルックの恋人〜

B:私は今はひとり あなたは来てくれない〜

 

A:腕を組んで歩いた あの坂道下れば〜

B:私は今はひとり あなたは来てくれない〜

C:季節の変る色を はじめて気がついた〜

B:私は泣いているの あなたに忘れられて〜

 

A*:ソフトクリーム 手にして歩いているの

B:私は今はひとり あなたは来てくれない〜

 

C:街にはたそがれが 静かにしのびより〜

B’:私は今はひとり あなたは来てくれない〜

 

 Bパートがサビと考えられるが、大サビに当たるCパートが2度出現する。A*とした部分は、前半4小節はメロディーをアレンジした演奏のみで始まり、後半4小節からボーカルが入る。最後にフェイドアウトするリフレインは、Bパートの後半をカットしたフレーズという、やや凝った作りになっている。

 

 どことなく洋楽の香りがして、『ファンタジー』の楽曲たちとの類似を感じるサウンドである。一つ指摘できるとすれば、イントロとAメロで第3音にフラットが付いて、ブルーな感じになるところだ。歌詞で言うと、「♪ 午後のひざしを背に受け 歩いているわ」の太字にした、「受け 歩いてい」と7音連続するG♭の音である。

 

 とまれ、この楽曲が収録されていることで、アルバム全体に幅と深みをもたらし、来るべきセカンドアルバムのリリースに大きな期待を持たせることになった、と言えるのではないだろうか。

 

 

 ところで、ペアルックと言えば、3年余り前に素敵な熟年ご夫妻のペアコーデが話題になったのをご記憶の方も多いかも知れない。われわれ夫婦も大いに刺激され、「素敵だね。こんな可愛い熟年カップルになりたい!」と憧れたものだが、残念ながら2人ともファッションのセンスはまるでない。😅リタイアしたら、どなたかコーディネートしてくれないかしら。

 

 

(1975.9.5 アルバム『あおぞら』収録)