CWU-36/P余話「ベストガイ」 | 飛行服千夜一夜物語

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どんなフライトジャケットにも、袖を通した者と歩んだドラマがあるもの。
飛ばなくなったフライトジャケット達との思い出話と、そこに秘められたヒストリーを紹介します。

 フライトジャケットとはあまり関係のない話です。


 前回、前々回と「トップガン」の話をちょこっとしましたが、アラフィフ以上の世代が「トップガン」を話題にするとき、この映画を想起する人も多いんじゃないでしょうか。

織田裕二主演 「ベストガイ」1990年


 トップガン公開から4年も経ってから作られた、言わずと知れたパクリ作品ですね。

 名優織田裕二の黒歴史としても有名です。


 この映画を初めて見たのは1995年頃、レンタルビデオででしたが、その時のことをよく覚えています。

 以前のブログで書きましたが、当時、職場の先輩の車に乗って死にかけたことがありました。



 事故の後、意気消沈する私と同僚を元気付けるため、友人が近所のレンタルビデオ屋から借りてきたVHSテープ、それが「ベストガイ」でした。

 映画の公開から5年程しか経っていませんでしたが、既に駄作として世に知られており、私たちを笑わそうとしてくれたんだと思います(良い友人だ)。

 そのときが私の「初ベストガイ」でしたが、言う程酷くはないという感想を持ちました。開始5分でベッドシーン(ストーリー上、特に必要ではない)という展開には戦慄しましたが……。


 私が気になったのは、劇中でパイロットや整備員が着ているCWU-36/Pでした。

 アクションプリーツのあるものと無いものが混在していたように記憶してます。

 おそらく、サープラスショップから程度の良い実物をかき集めたのかと思います。

 当時の空自のパイロットや整備員が着用していたジャンパーは、青い地味なものだったため、CWU-36/Pを着せるという判断はとても良かったと思います。

 映画オリジナルのパッチデザインや貼り付け位置もリアリティがありました。 


 昔の官品の出来は酷いもので、実際、私物を着用する隊員も多く、ある程度黙認されていたようです。  私もかなり昔にCWU-45/Pを着ていた海自のパイロットを見た事があります。

 空自でCWU-36/Pを着た隊員がいなかったとは言い切れません。


 ところでこの画像、久しぶりに見たら、なんか、違和感を感じるところが2箇所ありました。
 フライトジャケットとか、財前さんが乗っている事ではありません。
 そもそもツッコミどころ満載のこの映画に30年以上も経ってからイチャモンつけるのもアレなんですが……、
 
 ①「織田裕二が無帽である。」
 軍人は屋外では頭に帽子やヘルメットをかぶらなければいけません。国籍も陸海空の別もありません。
 軍隊組織の文化を持つ警察、消防、鉄道関係者も同じかと思います。
 ただし記念撮影のときは顔が見えるように無帽にすることもあります。
 でも民間人をコクピットに乗せて記念撮影をする場合、主役はその民間人であり、エスコートする隊員が無帽になるのはおかしいです。


 ②「機体にボーディングラダーがかかっていない」
 F-15のような高翼配置の機体は、ボーディングラダー(ハシゴ)がないとコクピットに上がれません。
 機体に内蔵される華奢なラダーもあるが、通常は引っかけるタイプのラダーを整備員が機体の左側に取り付けて登り降りします。


 コクピット内の作業をするときや、民間人が見学や体験搭乗(座るだけ)するときは、大型のラダーを機体の右側に設置します。しかしその場合でも左側に通常のラダーを引っ掛けます。


 さっきのベストガイの写真はラダーがないので、落ちそうで危なっかしいですね。織田裕二は怖い想いをしていたんじゃないでしょうか。


 どうでもいいことですが、F-4も取り付け式のボーディングラダーを用いるのですが、なくてもウイングタンクを足場にして、タンク→主翼→インテーク上部→コクピットとたどり着くことができます。

 低翼配置ならではの特権ですね。



 そういえば、旅客機も乗り降りは左側から行うんですね。昔の船の文化を受け継いでいるかららしいです。


 
 フライトジャケットのリサーチばかりだと疲れてしまうので、今回はしょーもない話をしてみました。
 しかし、F-4はカッコいい飛行機でしたね。とてもうるさくて、音だけで識別できました。
 今更ですが、もう飛んでいる姿を見れないのが残念です。