永住資格取消制度創設とは? | ワーカーズの直のブログ

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永住資格取消制度創設は公的な外国人差別

アリの一言 2024年06月11日 | 差別・人権

 

 

 

「裏金問題」に端を発した政治資金規正法「改正」騒動は、与野党一体の、そしてメディアも加わった茶番劇と言うしかありません。重大なのは、関心をそちらに集中させておいて、重大な悪法がいつのまにか成立しているという状況がつくられていることです。

 

参議院で審議中の入管難民法「改正」案もその1つです。大きな問題は、外国人の永住資格取り消しを容易にする新たな条項が盛り込まれていることです。

 

その条項とは、①在留カードの不携帯など些細な違反を犯した場合②税や社会保険料などを「故意」に滞納した場合③短期の刑期や執行猶予がついても拘禁刑が宣告された場合に、永住者の在留資格を剥奪することができる、とするものです。

 

これに反対する緊急集会が6日、国会前で開かれました。呼びかけた在日本大韓民国民団によると在日韓国人ら約500人が参加。「永住資格取り消し条項は、約89万人の永住者の地位を不当に不安定にする。法案が通過すれば永住者と家族は永住資格取り消しにおびえる日々を過ごすことになる」との声明文を読み上げました(6日付朝日新聞デジタル、写真右も)。

 

神奈川県弁護士会(岩田武司会長)は4日、「永住資格取消制度の創設に反対する会長談話」を発表しました。その中でこう指摘しています。

 

「人であることにより当然享有することができる人権は、外国人であっても当然に享受することができます。もし、外国籍・無国籍市民に対してだけ従来のルールを超えて、入管の広範な裁量で永住資格を剥奪し、生活の基盤を軒並み奪ってしまうことができるような仕組みを作るのであれば、外国人市民に対する苛烈な差別以外の何ものでもありません

 

鈴木江理子・国士舘大教授(移民政策)によれば、同改悪条項は、23年12月の自民党外国人労働者等特別委員会の「提言」を端緒に、「育成就労制度創設を口実として、どさくさ紛れに」加えられたものです(鈴木江理子氏「「育成就労制度」でも継承される問題構造」、「世界」7月号所収)。

 

鈴木氏はこう指摘します。

 

「入管法上の義務違反には罰則規定があるので、永住者にのみ在留資格取消しというペナルティを新たに加える合理的理由はない。…外国人である永住者にのみ在留資格取消しという過大なペナルティを科すとしたら、これは明らかに公的な外国人差別である。…その結果実現される社会は、外国人を従属的で不安定な地位におく「国民」中心の「まやかしの共生社会」でしかないだろう」(同前)

 

入管難民法は昨年も改悪され、難民認定申請を2回以上すれば、申請中でも迫害のおそれのある母国に強制送還できるようにする改悪法が10日施行されたばかりです。

 

日本は周知の通り難民認定率がずば抜けて低い国です。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の統計によると、22年の難民認定率は、英国68・6%(認定数1万8551人)、米国45・7%(4万6629人)、ドイツ20・9%(4万6787人)に対し、日本は2・0%(202人)です(9日付朝日新聞デジタル)。

 

そのうえ、入管難民法の相次ぐ改悪によって、「公的な外国人差別」を強めているのです。世界に恥ずべき国と言わねばなりません。

 

問題の根源は、多くの日本「国民」がこの現実を知らない、あるいは知ろうとせず、日本政府(国家)の外国人差別に加担していることです。