真説ミリアムの魔術書・武術家たちの誇り (THE REAL FIGHTERS)  -25ページ目

朝ですね


いやだな と不安になるより 飛び出していったほうがずっと楽です


今日もいってらっしゃいな



ウィルソンの思い出



歌うことは苦手だけど 心を聴かせる言葉はもってる


それもないあなたはちょっとかわいそう


わたしが言うことを歌ってみたら?


それともあなたの気持ちを詞にしてみせようか?



・・・・・・・・・!



拳で生きる。表現するのさ。


呪文なんか知らんさ、あいつも俺も。



愛とかどうなんだろうな。そういう話はしたことがない。


俺も話さない。


そんなこと言ってたらたまらないんだ。


もう普通の人間ではないから。



これって悲しいのか。


知らないな。戦うだけだよ。




・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・






煤けた空気の中にいる。


ウィルソンとサナは並んで腰を下ろして、轟音や稲光が交錯する世界を共有していた。



「私は雇われ皇帝だった。恋人を裏切り、妻や子供には死なれてもう行き場がなかった。そのときにリューゲンが現われた」


「帝国の人たち」


「その通り」


大きく揺れる大地。

何か大きなものが近くに落ちたようだ。そんな音。


「ほんっと地獄ね」


「私が見てきたものもそうだ。懸命に生きてもそこかしこが地獄のように映ることもある。それでも生き続けた」


途中から何か吹っ切れたようにウィルソンは語調が軽くなった。表情も、サナがこの場所で会ったそのときより穏やかになっている。

過去を語るのは懺悔に似ていた。

話し出すまでは時間がかかるが、いったん言葉を口にすればそこから始まる。


「どこから聞くかい?」


「・・・・帝国の人たちのことよりあなたのこと」


「ジュノーのこともかい?」


「そっちを聞きたい」


モンスターがふたりをみつけたようだ。向かってくる。


数メートルという巨体。ジグザグに生えた牙。

相当腹をすかせているようだ。


サナは掌に意識を集中させ、瞬時に光の玉を作り出した。


小さな気合を合図にサナの手から放たれ、幾つにも分裂しながら地面を滑りモンスターの目の前で破裂する。


その後残ったのは土煙だけ。凶悪な牙も何も残さずモンスターは消滅した。




「まだランクが足らないのよね。ね、話を続けて」




望むもの 地の底にあり


地獄は修羅界。


死んでここにきて7日ほど経った。


それでもさらに死ぬかという思いもして過ぎた日々。地上はどうなっているのかも、少しは気になるというもの。


「先客がいたんだね」


サナは独り言のように呟いて、正面に項垂れて座している男を見た。


あなたも地獄にきたの。



そこにいたのはウィルソン。

最強のウィルソン小隊のリーダー。最強の格闘家。そしてリースロット帝国の皇帝。


そしてジュノーの恋人だった。

その恋人に背後から刺されて死んだ男。



「わたしみたいにランクアップが目的ではないね。死んだんだろうけど、ここに来なくてもよかったよ、あなたは」


返事はない。



モンスターの慟哭が耳につく。

空といえるのか、真上には煤けたような空気が立ち込める。


ここは地獄の中でも修羅界。


永遠に戦い続けるところ。


死しても戦う魂たち。


パートナーは悪魔や化け物。


ウィルソンは振り返らない。



修羅界に舞う


煉獄。かつてのバコスタ島。

そうでなければ。

まるでウィルソン小隊が全滅(正確には隊長を除く)した時のペケージャル。


地獄の中でも修羅界はモンスターの巣窟であり、それを統括する悪魔属の棲家。


黒地に蝶の刺繍の拳法着の裾が揺れる。


サナはここで無数の敵と闘う。


目的は決まっていた。


いわゆる経験値稼ぎであり。



サムソンとの戦闘で闘技場を半壊させた「氣」の力ではまだまだ足らない。


もっと上の力を得るにはもう1ランクアップしたいところだが。


今のリースロットでは手ごたえが足らない。



人魚の力。人魚の秘密。


それによって倒されても蘇ってしまうサナは、わざと死んでそこへ辿り着いた。


肉体が復活するまでにランクアップしなければ。


背後に気配。


強力なモンスターは肥やしであって。今は歓迎する。


強くなったら、今度は国ひとつ潰せるだろうが、標的は帝国にいた旅人たち。


「こうなるとわたしが彼らの敵なのよね」


呟いてモンスターの首を撥ねる。


視界は血に染まり、手刀には返り血が、敵一匹倒したときそのままの手ごたえと共に残っている。



飛ぶように、舞うように闘うということは楽しかった。これが生きるということかと思うほどに。


(笑い出しそうよ)


生き返ったら兄はどんな顔をするだろうか。




このままでいけたら



いえいえこのまま続くけども、今はかなりスローペースというだけ。




しかし、変なの。


逃げるようにアメリカに行った人が、わたしが待ってるなんて思って日本にきたのが先月。


わたしはもうその人のことを忘れたつもりだったから、


「迷惑ですよ」と答えたら、


「自分に会えなくていいの!」なんて電話で威張ってた。


「会う気はないしとにかく迷惑。次に何か言ってきたら警察ですよ」


と言っておいた。


最初は強気だったし、連絡がとれたためか声が上機嫌だったけど、最後は泣いていた。


ここはその人にとって泣くところだから泣いてもらうしかない。





この続きちょっと書きたい。