2025年12月のこと、神楽坂の隠れ家フレンチ、『シュシュ』で彼女と過ごす楽しい夜の続き。
今夜はシェフのお任せコースと、各料理に合わせるワインのペアリングをお願いしている。
三種類めのワインが届く。
冷前菜に合わせるワインは、何ともインパクトのあるエチケットと名前。
スロバキアのデイヴィット・クシツキーが造るオレンジワイン、セロトニン、2023年。
セロトニンは、 幸せホルモンとも呼ばれる、脳内の神経伝達物質のひとつ。
デイヴィット・クシツキーはドミン&クシツキー・ファミリー・ワイナリーの若き醸造責任者。
新しいワイン造りを模索する中で、ワイナリーの歴史と伝統を守るため、彼独自の新しいワインは彼の名前でリリースすることとしている。
渋いぶどうの皮を齧ったような味わいで、何とも表現が難しい。
ぶどうはモスカートで栽培はオーガニック。
EUのオーガンニック認証マークのユーロリーフが付いている。
10日間のスキンコンタクトで造られている。
冷前菜は、四万十鶏のテリーヌ、カボチャのムース添え。
皿に散らされているのは、カボチャの種。
「四万十産の牛も豚も鶏も銘柄品で美味しいですね」と、私。
「高知県には美味しい食材がいっぱいありますね。四万十鶏は一番美味しい鶏だと思います」と、シェフ。
この言葉は高知のかずみさんに伝えなければだ。
カトラリーは、新潟県燕市の燕振興工業が造る、SUNAO。
四種類めは温前菜に合わせるワイン。
シャトー・デュ・クロ・デュ・プレヴォー、ボルドー・ブラン、2024年。
白い花に続き、オレンジやパイナップルの香り。
ファーストアタックにはソーヴィニヨン・ブランを感じる。
果実味、酸味、ミネラルのバランスが良いボルドー・ブラン。
セパージュは、ソーヴィニヨン・ブラン60%、セミヨン40%。
温前菜は、静岡県の紅富士サーモンのミキュイ、ポロネギのソース、九条ネギのトッピング。
ミキュイで調理された生感触の紅富士サーモンは口の中でとろける美味しさ。
紅富士サーモンは、富士養鱒漁業協同組合の規定に従って生産された高品質な虹鱒。
続いて、五種類めは魚料理用の白ワイン。
フランス、ラングドックのドメーヌ・ド・クロヴァンが造る、アン・ノワール・エ・ブラン、2023年。
変わった名前だと思ったら、ピノ・ノワール92%、リースリング8%という驚きのセパージュ。
香りはリースリング、口に含むとピノ・ノワールの重厚な果実味。
これは素晴らしく美味い。
南仏ラングドックではあっても、畑があるのは標高250~400mの北向きの斜面という冷涼な立地。
栽培はビオディナミ。
このワインにもユーロリーフ。
魚料理は、福井県産鰆のポワレ、根セロリのソース、カリフラワー添え。
皮目をパリッと焼かれた鰆が美味い。
根セロリのソースに和風出汁を感じる。
シェフに尋ねると、鰹出汁が加えられているとのこと。
香ばしくソテーされたカリフラワーが良い働きをしている。
自家製パンを追加注文。
厨房で焼きあがったのが見えたので、食べたくなった。
六種類めのワインは、肉料理用の赤。
フランス、ラランド・ド・フロンサックのドメーヌ・ヴィルジニー・テュヌヴァン、2006年。
ドメーヌ・ヴィルジニー・テュヌヴァンは、シャトー・ヴァランドローのジャン・リュック・テュヌヴァンのお嬢さんが設立したワイナリー。
シャトー・ヴァランドローはシンデレラワインとして人気を博し、今ではとても高価で手が届かなくなった。
実はジャン・リュック&ミュリエル・ヴァランドローご夫妻と私と彼女の四人でテーブルを囲んでディナーをご一緒したことがある。
食後には、奥様から彼女にヴァランドローNo.1のボトルをプレゼントしてもらった良い思い出。
19年の時を経て、残念ながらピークは過ぎている。
それでもしっかりとした果実味とタンニンを感じることが出来る。
セパージュは、メルロー70%、カベルネ・ソーヴィニヨン20%、カベルネ・フラン10%。
醸造はヴァランドローのチームが担当。
肉料理は、津軽鴨のグリエ、ジュと蜜柑のソース。
鴨にはオレンジのソースが定番だが、オレンジの代わりに蜜柑が使われている。
津軽鴨は旨味が強く、適度な弾力のある肉質が心地良い。
肉料理用に出されたナイフは、ブラジルのトラモンティーナ。
『バルバッコア』で馴染みのあるナイフだ。
ヴィルジニー・テュヌヴァンを追加でもう一杯。
ピークは過ぎていると言いながらも、サンテミリオンのヴァランドローの片鱗を感じさせるワインだ。
今夜の客は約20人。
シェフとホールスタッフの女性の二人で対応されているので、シェフは大忙し。
盛り付けは実に手際が良い。
デセールは、苺とマスカルポーネのビスキュイ、とでも言えばよいのだろうか。
二枚の自家製ビスキュイの間にはマスカルポーネとあまおう。
たっぷりのあまおうのソース。
上には、沖縄の天然塩アイスクリーム。
食後は熱いコーヒーでまったり。
気が付くと、三時間余りが経っていた。
シェフに見送られ、満腹満足で店をあとにする。
彼女と過ごす、神楽坂の楽しい夜でした。


























