5月のこと、ちぃさんと上野の「国立西洋美術館」で””西洋絵画、どこから見るか?”展鑑賞の続き。
「サンディエゴ美術館(SDMA)」と「国立西洋美術館(NMWA)」の共同企画展で、両美術館所蔵の88作品が展示されている。
サンディエゴから出展される49点(常設展示場で展示される5点を含む)は全て日本初公開。
この絵画展は、個人使用目的での写真撮影は可能。
SNSでの発信が禁止されている作品には”禁SNS”のタグが付けられている。
見逃された方のために、少し詳しくアップ。
第 Ⅱ章はバロック。
H.P.の説明を添付。
静物画はスペイン語でBodegonと言うのですね。
英語ではStill Life painting。
実はBodegonの語源はワイナリーや酒蔵を意味するBodega。
スペインの静物画は食べ物を題材とすることが多かったので、厨房画とも言われ、Bodegonには居酒屋の意味もある。
フアン・バン・デル・アメン「果物籠と猟鳥のある静物」(1621年頃) 油彩/カンヴァス NMWA
確かに食材満載の静物画だ。
フアン・サンチェス・コターン「マルメロ、キャベツ、メロンとキュウリのある静物」(1602年頃) 油彩/カンヴァス SDMA
この作品は今回の企画展の目玉の一つ。
コターンはスペインの写実主義静物画の第一人者。
この作品は”最も偉大な静物画”、”ボデゴンの歴史を作った記念碑”と称されている。
左上から右下に流れるような構図が独創的。
野菜類が精緻に描かれているが、影を見ると、光がどちらから射しているのかわからなくなる不思議な絵だ。
フランシスコ・デ・スルバラン「神の仔羊」(1635-40年頃) 油彩/カンヴァス SDMA
そうだ、エル・グレコはスペインに居を移して制作していたのだった。
エル・グレコはギリシャ人で、グレコはイタリア語でギリシャ人の意味、それにスペイン語の男性定冠詞のエルが付いた通称。
本名はドミニコス・テオトコプロス。
今回の企画展の出品目録には本名もちゃんと記されている。
エル・グレコ「悔悛する聖ペテロ」(1590-95年頃) 油彩/カンヴァス SDMA
エル・グレコ「十字架のキリスト」(1610-14年頃) 油彩/カンヴァス NMWA
ペドロ・デ・オレンテ「聖母被昇天」(1620-25年頃) 油彩/カンヴァス NMWA
フアン・サンチェス・コターン「聖セバスティアヌス」(1603年頃) 油彩/銅板 SDMA
コターンはスペイン静物画の第一人者と言われているが、43歳の時に修道士となり、それ以降は宗教画しか描いていない。
そのため、現存するコターンの静物画は世界に6点しかないとされている。
イタリアがルネサンス以降、大理石やブロンズによる無着彩像に移行したのに対し、スペインでは引き続き木やテラコッタに着彩した彫刻が好まれたとのこと。
フアン・デ・メサ「幼児キリストの勝利」(1620年頃) 彩色/錫、鉛合金 SDMA
ペドロ・デ・メナ「アルカラの聖ディエゴ」(1665-70年頃) 彩色/木 SDMA
ここからの4点は、17世紀のセビーリャで活躍し、”修道僧の画家”と呼ばれたスルバランの作品。
フランシスコ・デ・スルバラン「聖ドミニクス」(1626ー27年) 油彩/カンヴァス NMWA
聖ドミニクスは、ドミニコ会修道会の創設者で13世紀初めの聖人。
フランシスコ・デ・スルバラン「聖ヒエロニムス」(1640ー45年) 油彩/カンヴァス SDMA
聖ヒエロニムスは、ラテン語訳『聖書』の決定版 (ウルガタ訳聖書) を完成させた聖人。

フランシスコ・デ・スルバラン「洞窟で祈る聖フランチェスコ」(1658年頃) 油彩/カンヴァス SDMA
聖フランチェスコは、フランシスコ会修道会の創設者。
フランシスコ・デ・スルバラン「聖母子と聖ヨハネ」(1658年) 油彩/カンヴァス SDMA
続いては、スルバランと同じく17世紀のセビーリャで活躍したバルトロメ・エステバン・ムリーリョの女性聖人を描いた作品。
同時期の制作でありながら、ムリーリョが得意とする等身大の優美な作品と、素早い筆致の小振りの作品の対照的な絵が展示されている。
バルトロメ・エステバン・ムリーリョ「悔悛するマグダラのマリア」(1660ー65年頃) 油彩/カンヴァス SDMA
バルトロメ・エステバン・ムリーリョ「聖フスタと聖ルフィーナ」(1660ー65年頃) 油彩/カンヴァス SDMA
次の二作品は、17世紀前半にナポリで活躍したジョゼペ・デ・リベーラが描く、使徒と古代哲学者。
ジョゼペ・デ・リベーラ「聖バルトロマイ」(1632年頃) 油彩/カンヴァス SDMA
右手に持った紙には使徒信条の第6節がラテン語で書かれていることから、この男性がその著者のバルトロマイであると想定されている。
ジョゼペ・デ・リベーラ「哲学者クラテース」(1636年) 油彩/カンヴァス NMWA
この絵では画中の机の上にcrate tebanoと名が記されていることから、哲学者クラテースと同定されている。
リベーラの使途像、哲学者像では画中の人物が誰なのか曖昧なものが多く、一種の謎かけだったのかも知れない。
ダヴィデとゴリアテは多くの画家が描いている画題。
17世紀初頭のイタリアではダヴィデがゴリアテを殺す暴力的な絵画が好まれたが、世紀半ばになるとダヴィデの瞑想と祈りに焦点を当てた、より宗教的意味合いが強い絵画に変化したのだそうだ。
アントニオ・デ・ベリス「ゴリアテの首を持つダヴィデ」(1642ー43年頃) 油彩/カンヴァス SDMA
グエルチーノ「ゴリアテの首を持つダヴィデ」(1650年頃) 油彩/カンヴァス NMWA
カラヴァジズムとは、カラヴァッジョ没後の1610年代から1630年ごろにかけて流行した、劇的な明暗法のもとで対象を写実主義的に描き出す画風。
バルトロメオ・マンフレーディ「キリスト捕縛」(1613-15年頃) 油彩/カンヴァス NMWA
実物大の半身像を複数横に並べた横長の構図は”マンフレーディ形式”と呼ばれ、カラヴァジズム絵画の典型となった。
ジョゼペ・デ・リベーラ「スザンナと長老たち」(1615年頃) 油彩/カンヴァス SDMA
ナポリ画壇を牽引したスペイン人画家。
旧約聖書に基づく画題で、カラヴァジズムの影響が明確にみられる。
ジュリオ・チェーザレ・プロカッチーニ「悔悛するマグダラのマリア」(1620年頃) 油彩/板 SDMA
サンディエゴ美術館に所蔵された当初はリベーラの作品とされていたが、現在ではプロカッチーニの作品とみなされている。
ルーベンスは大規模な工房を構えて制作をしていたことで有名。
ヤーコプ・ヨルダーンスは若い共同制作者。
ペーテル・パウル・ルーベンス「眠る二人の子ども」(1612-13年頃) 油彩/板 NMWA
ペーテル・パウル・ルーベンス「永遠(教皇権の継承)の寓意」(1622-25年頃) 油彩/板 SDMA
ペーテル・パウル・ルーベンス「豊穣」(1630年頃) 油彩/板 NMWA
ヤーコプ・ヨルダーンス(に帰属)「ソドムを去るロトとその家族」(1618-20年頃) 油彩/カンヴァス NMWA
ペーテル・パウル・ルーベンスと工房「聖家族と聖フランチェスコ、聖アンナ、幼い洗礼者ヨハネ」(1625年頃) 油彩/カンヴァス NMWA
この絵は工房の作品だが、一部にルーベンス本人とヨルダーンスの筆も認められるのだそうだ。
17世紀のネーデルランド、特にフランドルでは宗教人物像の周囲を花で彩る”花環図”が人気となったのだそうだ。
その”花環図”の名手、ダニエル・セーヘルスが人物画家と共同制作した作品2点が展示されている。
セーヘルスの名前の隣の名前が共同制作者の人物画家。
ダニエル・セーヘルス、コルネリス・スフート「花環の中の聖母子」(1620-25年頃) 油彩/板 NMWA
ダニエル・セーヘルス、エラスムス・クエリヌス「花環の中の聖家族」(1625-27年) 油彩/銅板 SDMA
この絵では中央の聖家族が浮彫彫刻を模したトロンプ=ルイユ(だまし絵)として描かれている。
花と人物それぞれを得意とする二人の画家の共同制作の絵があるとは知らなかった。
オランダの静物画には色々な流れがあるようだ。
ヴァニタス画、フランドル伝統の画題をテーブルに盛った静物画、そして花や球根を描いた静物画の三点が展示されている。
ヘーラウト・ダウ「シャボン玉を吹く少年と静物」(1635-36年頃) 油彩/板 NMWA
ヴァニタス(虚栄)画では、この世の儚さを象徴するモティーフとして、骸骨、砂時計が描かれ、すぐに弾けて消えてしまうシャボン玉もこのモティーフの一つなのだそうだ。
コルネリス・デ・ヘーム「果物籠のある静物」(1654年頃) 油彩/板 NMWA
確かに画題がテーブル上に溢れている。
この絵を見て、『レストランひらまつ レゼルヴ』のホールに飾られていた額賀加津己画伯の静物画を思い出した。
ラーヘル・ライス「花卉」(1689年) 油彩/カンヴァス SDMA
オランダでは花、そして球根が人気だったので、花の絵がオランダで定着した最初の静物画だったのだそうだ。
オランダで芸術の支援者となったのは王族や貴族ではなく、貿易で財を成した富裕な市民達。
そこで市民生活を描いた風俗画が発展した。
思い浮かぶのはフェルメールだが、あまりに作品数が少なく、今回の展示には含まれていない。
ヤコーブス・フレル「座る女性のいる室内」(1660年頃) 油彩/板 SDMA
この絵を見るとフェルメールの室内画を想起するが、最新の研究ではこの構図はフレルが先行し、フェルメールに影響を与えたとのこと。
ボケてしまった。
ニコラース・マース「少女の肖像」(1664年頃) 油彩/カンヴァス SDMA
フランス・ハルス「イサーク・アブラハムスゾーン・マッサの肖像」(1635年頃) 油彩/板 SDMA
風景画は17世紀にオランダで大きな発展を遂げたとのこと。
ロイスダールは私でも知っている風景画家。
ヤーコブ・ファン・ロイスダール「滝のある森の風景」(1660年頃) 油彩/カンヴァス SDMA
ヤーコブ・ファン・ロイスダール「樫の森の道」 油彩/カンヴァス NMWA
どちらの絵も人間や建物が小さく描かれ、自然の力強さが強調されている。
「樫の森の道」では、林道に二人、左手前に焚火をする三人が描かれているが、目を凝らしてみないと気が付かない。
長くなったので、続きはまた明日。























































