昨年7月のこと、早朝の電車で羽田空港に向かう。
しづちゃんと第二ターミナルで合流すると、荷物検査場へ。
チェックインは前日にネットで済ませてある。
プライオリティーレーンで荷物検査を済ませると、ラウンジでひと休み。
学校の夏休みの初日と言うことで空港内は大混雑だが、早朝のラウンジは空いている。
まずは生ビールで乾杯。
しづちゃんは一番搾り、私は黒ラベル。
羽田空港のコンビニで朝食を買うつもりだったが、電車が遅れ、更にコンビニのレジがとても混んでいたので断念。
地方空港行きの便はバス移動かサテライトでの搭乗となるため、ラウンジから航空機への移動にとても時間がかかる。
従って、一時間前に空港に着いても、ラウンジで過ごせる時間は20分ほどしかない。
延々と歩き、バスゲートに到着。
多くの搭乗客でごった返している。
飛行機の出発時間になってやっとバスが来た。
両隣の大分便と岡山便は既に出発時間を過ぎているが、バスの数が足りず、多くの乗客が未だターミナルで待機の状態。
バスの運転手が足りないと聞いていたが、ここまでとは思っていなかった。
優先搭乗のお陰で最初のバスに乗り、ようやく駐機場に到着。
結局、25分遅れでの離陸となった。
早朝の起床だったので、機内では二人とも爆睡。
ふと目が覚めると、眼下に陸地が。
ここは室戸岬なのだろうか。
右にゆっくりと旋回しながら高度を下げる。
海面が迫り着水するのではと思ったが、このまま滑走路に滑り込む。
今年(2024年)も高知龍馬空港に到着。
かずみさんと到着ロビーで落ち合うと、かずみさんが手配してくれたタクシーに乗り込む。
前回までの旅はかずみさんが車を出してくれたので、酒蔵巡りをしてもかずみさんは試飲することが出来なかった。
そこで今回はタクシーをハイヤー利用することにしたのだ。
訪問する土佐酒造がある土佐郡土佐町は吉野川沿いの山の中。
片道約1時間、60km程の旅となり、タクシーの貸し切り料金は往復で約33,000円。
車は吉野川沿いの道をどんどん山の中へ。
何故こんな場所に酒蔵があるのかと不思議に思う。
いよいよ土佐酒造に到着。
これが蔵への取り付け道路。
山の中だが、思ったより田んぼがある。
嶺北地方の米は美味しいことで有名なのだそうだ。
そして食用米と収穫時期がずれる酒造好適米は農家にとってもありがたい栽培品種とのこと。
歴史を感じさせる煉瓦造りの煙突。
今はもう使われていない。
かずみさんが事務所に、到着した旨を告げに行ってくれる。
入り口の柱には、「銘酒桂月酒造工場」と書かれている。
事務所の入り口には、大きな杉玉。
杜氏の佐竹さんが蔵の案内をしてくれる。
昔はこの釜で米を炊いていたが、今は蒸気で蒸しているのだそうだ。
釜の上の天井は二重構造で、蒸気が抜けるようになっている。
先代のオーナーの時までは普通酒ばかり造っていたが、先代の甥にあたる今のオーナーになってから大改革をし、純米酒、純米吟醸酒中心の経営に転換。
そのため、温度管理ができるサーマルタンクなどの最新設備が導入されている。
佐竹さん自身、この改革の一環として司牡丹から土佐酒造に招聘されてきたとのこと。
麹室も案内してくれる。
重い蒸米を乗せるので、長年の使用で木製の台にも床にも歪が出ている。
最新の設備も導入されている。
省力化機械も多い。
搾り機は薮田製かと思ったら、NSKエンジニアリング(兵庫県神戸市、旧・内外食品工機)製だった。
米の保管庫では精米技術について話が弾む。
超扁平精米では効率的に不純物を取り除き有用なでんぷん質を無駄なく残すことが出来る。
このため、従来の高精米は不要で、低精米でも高品質の酒を醸すことが出来る。
一方で日本では純米吟醸酒は磨き60%以上、純米大吟醸酒は50%以上と定められており、超扁平精米によって造られたどんなに高品質な酒でも精米歩合を達成しないと純米吟醸、純米大吟醸を名乗れないという矛盾が生じている。
新しい精米技術が出来たのだから、SDGsの時代、それに合わせて規格を変える時期に来ている。
敷地内にある新しい建物は、東京工大出身の現社長が自ら設計されたもの。
佐竹杜氏はどんな質問にも丁寧に答えてくれ、最新の酒造技術、そして桂月に関し知識を深めることが出来る。
蔵には黒く塗った壁が残っている。
第二次世界大戦のときは、米軍機が太平洋から高知を横切って瀬戸内の工業地帯を爆撃していた。
その帰りに使い残した爆弾を投下することがあったので、標的にならないように白い壁を真っ黒に塗りつぶしていたのだそうだ。
友人たちと過ごす、楽しい高知旅は続きます。