1月のこと、「東京ミッドタウン」を出て向かったのは、「国立新美術館」。
黒川紀章氏が設計した最後の美術館が闇夜に妖しく光り輝く。
エントランスで警備員に「レストランのご利用ですか」と聞かれ、「はい」と答えて入館。
美術館は既に閉館しているので、この時間に訪れるのはレストランの利用客以外には居ない。
目的の場所は、この上。
エレベーターを3階でおり、レストランに向かう。
横から見るとせり出した断崖絶壁の上にテーブルが並ぶが、実際に席に着くと下が見えないので怖くはない。
開場時間になると、次々と客が入店する。
今夜は満席の予約なのだそうだ。
メンバーが揃い、店内に歩を進める。
私たちのテーブルは、この長い六人用。
植田シェフがどんな料理を考えられたか楽しみ。
今夜は、『ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ』の”16周年記念パーティー”。
ポール・ボキューズ氏の言葉、”良い料理とは、「良い素材、良い味付け、良い火加減」だ”、が印刷されている。
私の若い頃の愛読書の一冊がポール・ボキューズ氏の著書、「キュイジーヌ・デュ・マルシェ」だったことを思い出す。
今夜のワインは、スパークリング以外は全て石川県産。
これらのボトルは昨年末に既に入荷していたので、被災を免れたとのこと。
料理も元々は石川県の食材で構成されていた。
ところが1月1日に発生した能登半島地震のため、予定していた食材が入荷しなくなり、急遽仕入れ先を切り替え、料理を変更することとなってしまった。
支配人の松尾さんの挨拶で会が始まる。
この会には日本の『ポール・ボキューズ』5店の支配人とシェフが集結するのだが、今夜は金沢店の『ジャルダン ポール・ボキューズ』が欠席となっている。
続いて、植田シェフによる料理の説明。
主催者挨拶が終わると、乾杯。
今夜のメンバーは、きゅーちゃん、KEiさん、すみれさん、ちぃさん、茶目子さん、そして私。
最初のワインは、ウィルムが造る、クレマン・ダルザス、プレステージ、ブリュット。
アルザスの三ツ星レストラン、『オーベルジュ・ド・リル』でオンリストされているクレマン。
1896年創業で、アルザス北部に120haの畑を有する造り手。
このワインは好きで、私のセラーにも二本入っている。
グレープフルーツやライムの爽やかな香り。
綺麗な酸と活き活きとしたミネラルを持ち、きりっと引き締まったブリュット。
ぶどうはオーセロワ、栽培はリュット・レゾネ。
瓶内熟成期間は12ヶ月。
バゲットが届く。
パンのお供は、カレー風味の鶏のリエット。
これが美味しくてパンが進む。
アミューズ・ブーシュは三種盛り。
カリフラワーのスープとビスク、栗のマドレーヌ、タルト・フランベ。
タルト・フランベはアルザス地方の郷土料理で、生地にベーコンとオニオンを乗せて焼いたピッツァのようなもの。
アルザスのワインにはアルザスの郷土料理が良く合う。
白ワインを注いでくれるのは、『ブラッスリー ポール・ボキューズ 銀座』の竹内支配人。
他にも『メゾン ポール・ボキューズ』の先崎支配人、『ブラッスリー ポール・ボキューズ 大丸東京』の外山支配人と次々と挨拶を交わすのに忙しい。
石川県金沢市の金沢ワイナリーが造る、OKU-NOTO、シャルドネ、2022年。
金沢ワイナリーは、金沢市尾張町に醸造所を構える、アーバンワイナリー。
石川県には米や野菜などの農作物に適さない痩せた傾斜地が多くあり、そこでぶどう栽培を始めたとのこと。
色合いは緑を帯びた干し藁色。
完熟した洋梨やメロンの香り。
爽やかな果実味、活き活きとしたミネラルを持つ、きりりと引き締まった辛口。
珠洲産のぶどうが使われている。
アントレは、フランス産鴨フォアグラのポワレ、ソース・ポルト、じゃがいもとモリーユ茸のクレープ。
『ポール・ボキューズ』の料理にはフォアグラは必須アイテム。
ソース・ポルトにはフォン・ド・ヴォーが使われている。
じゃがいもとモリーユ茸のクレープの上にフォアグラ、その上にはイタリアンパセリ。
添えられているのは、能登島の高(たか)農園のプチヴェール。
プチヴェールは、ケールと芽キャベツの交配種。
友人たちと過ごす、『ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ』での”16周年記念パーティー”の楽しい夜は続きます。