マリー・ローランサンー時代をうつす眼、アーティゾン美術館 3 | ワインは素敵な恋の道しるべ

ワインは素敵な恋の道しるべ

白ワインは天使の如く貴方の心を解き放ち、赤ワインの真紅のグラスの底には悪魔が潜む。そして貴方は天使の如く大胆に、悪魔の如く繊細に、新たな恋の道を歩み始める。

12月のこと、ちぃさんと「アーティゾン美術館」で過ごす楽しい午後の続き。

 

鑑賞しているのは、”マリー・ローランサン-時代をうつす眼”。

 

第4章は、マリー・ローランサンと舞台芸術。

ローランサンは、1924年にモナコのモンテカルロ歌劇場やパリのシャンゼリゼ劇場で公演された、ジャン・コクトーが台本を書きフランシス・ブーランクが作曲をした、バレエ・リュスによるバレエ、「牝鹿」で舞台衣装と舞台装置を担当し、高く評価された。

それ以来多くの舞台で、衣装と装置を手掛けるようになった。

 

限定書籍「セルゲイ・ディアギレフ劇場≪牝鹿≫1・2巻」を始め、「牝鹿」の書籍、声楽譜、プログラム、写真、葉書が展示されている。

石橋財団アーティゾン美術館および兵庫県立芸術文化センター薄井憲二バレエ・コレクション蔵。

 

マリー・ローランサン、「牡鹿と二人の女」(1923年) 油彩・カンヴァス ひろしま美術館蔵

 

マリー・ローランサン、「田園の祭典」(1928年) 水彩・紙 マリー・ローランサン美術館蔵

 

マリー・ローランサン、「舞台装置」(1928年) 水彩・紙 マリー・ローランサン美術館蔵

 

(左)表紙:マリー・ローランサン、「シャンゼリゼ・バレエ団プログラム」(1945年10月12日) プログラム 兵庫県立芸術文化センター薄井憲二バレエ・コレクション

(右)表紙:マリー・ローランサン、「シャンゼリゼ・バレエ団プログラム」(1946年6月15日) プログラム 兵庫県立芸術文化センター薄井憲二バレエ・コレクション

 

第5章は、マリー・ローランサンと静物画

ローランサンが静物画を描いていたことは知らなかったが、花を画題とした絵を好み、生涯に80点ほどの静物画を描いているのだそうだ。

また舞台芸術を手掛けたのに加え、装飾美術の作品も残している。

 

マリー・ローランサン、「扇」(1919年頃) 油彩・カンヴァス テート美術館蔵

(撮影不可。)

扇はローランサンのお気に入りの画題で、1911年頃から作品に登場している。

 

マリー・ローランサン、「レモンのある静物」(1919年) 油彩・カンヴァス パリ市立近代美術館蔵

(撮影不可のため、画像はCICIBELLAからお借りしました。)

マリー・ローランサンはこのような絵も描いていたのかと驚く作品。

スペイン亡命時代に描かれたもので、この時期の絵は灰色を基調とした暗いものが多い。

 

マリー・ローランサン、「花束」(1939年) 油彩・カンヴァス マリー・ローランサン美術館蔵

 

マリー・ローランサン、「花を生けた花瓶」(1950年頃) 油彩・カンヴァス マリー・ローランサン美術館蔵

 

アンドレ・グルー(デザイン)、マリー・ローランサン(絵付)、アドルフ・シャノー(制作)、「椅子(2脚)」(1924年) 黒檀、鼈甲、ファブリック(ボーヴェ織物工房)、真鍮 東京都庭園美術館

 

ジャクリーヌ・マルヴァル、「花」(制昨年不詳) 油彩・カンヴァス 石橋財団アーティゾン美術館蔵

 

終章は、マリー・ローランサンと芸術

マリー・ローランサンの絵の特徴は、パステルカラー。

終章ではローランサンが描く群像を通じ、そのパステルカラーの表現を鑑賞することができる。

 

マリー・ローランサン、「プリンセス達」(1928年) 油彩・カンヴァス 大阪中之島美術館蔵

華やかな衣装の4人の女性と3匹の犬。

舞台の一場面を切り取ったような画面構成。

青色が効果的に使われている。

ローランサンは、「心得のある人たち、達者な人たちほどブルーを好みます」と後年回想しているのだそうだ。

 

マリー・ローランサン、「五人の奏者」(1935年) 油彩・カンヴァス 吉野石膏コレクション(山形美術館寄託)

5人もの人物が描かれたローランサンの絵は珍しい。

後列の4人の女性は、花、ギター、トランペット、フルートを持ち、何も持たない中央の女性は黄色い衣装が印象的。

1930年代の作品では黄色を効果的に使っているのだそうだ。

 

マリー・ローランサン、「三人の若い女」(1953年頃) 油彩・カンヴァス マリー・ローランサン美術館蔵

10年近い年月をかけて完成させた、ローランサン晩年の集大成ともいえる大作。

背景にはミラボー橋が描かれ、若い時の恋人、詩人のアポリネールのことを暗示しているとされている。

 

アポリネール作の詩、「ミラボー橋」。

アポリネールのことを愛したことは、年老いても良い思い出だったのだろう。

 

ローランサンは、「夜の手帖」の中で次のように語っている。

「私の学びとった少しばかりのものは、私が大画家と呼ぶ同時代の人たち-マチス、ドラン、ピカソ、ブラックといった人たちから教えられたものです。この人たちは私がここで引き合いに出すのをよろこばないでしょうが、じつはそうなのです。カルメンの歌にたとえているなら《あなたは私を好かなくても、私はあなたが好き・・・》というわけです」。(大島辰雄訳)

アンリ・マティスとアンドレ・ドランはフォーヴィスム、パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックはキュビスムを代表する画家。

ローランサンはどちらの活動にも正式には加わらなかったが、若い頃に出会った画家たちのことを生涯大切にしていたことがわかる。

 

パブロ・ピカソ、「女の顔」(1923年) 油彩、砂・カンヴァス 石橋財団アーティゾン美術館蔵

 

ジョルジュ・ブラック、「梨と桃」(1924年) 油彩・板 石橋財団アーティゾン美術館蔵

 

アンリ・マティス、「両腕をあげたオダリスク」(1921年) 油彩・カンヴァスボード 石橋財団アーティゾン美術館蔵

 

アンドレ・ドラン、「自画像」(1913年) 油彩・カンヴァス 石橋財団アーティゾン美術館蔵

 

以上で、”マリー・ローランサン-時代をうつす眼”の鑑賞は終了。

見応えのある、素晴らしい企画展だった。

ちぃさんと過ごす、「アーティゾン美術館」での楽しい午後は続きます。