マリー・ローランサン-時代をうつす眼、アーティゾン美術館 | ワインは素敵な恋の道しるべ

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白ワインは天使の如く貴方の心を解き放ち、赤ワインの真紅のグラスの底には悪魔が潜む。そして貴方は天使の如く大胆に、悪魔の如く繊細に、新たな恋の道を歩み始める。

引き続き時系列を飛び越えて、鑑賞した企画展が終了しないうちに美術館訪問記事をアップ。

この企画展は3月3日まで開催されているので、興味のある方は是非訪問して下さい。

12月のこと、ちぃさんと京橋で待ち合わせ。

 

向かった先は、「アーティゾン美術館」。

 

3階に上がると、ネットで購入しておいた時間指定の電子チケットを提示し、美術館に入場する。

 

鑑賞する企画展は、「マリー・ローランサン-時代をうつす眼」。

 

展示会場は6階。

 

展覧会の概要は、アーティゾン美術館の石橋館長の”ごあいさつ”から引用。

【マリー・ローランサン(1883-1956)は、20世紀前半に活躍した女性画家です。キュビスムの画家として紹介されることも多くありますが、「前衛的な芸術運動」や「流派(イズム)」を中心に語る美術史の中にうまく収まらない存在です。ローランサン自身は、自分に影響を与えた存在として、同時代の画家マティス、ドラン、ピカソ、ブラックの名前を挙げていますが、彼らの様式を模倣することなく、パステルカラーの独自の画風を生み出しました。彼女は同時代の状況を見つつ、時代の要請を理解して、自らの方向性を模索しました。
本展では石橋財団コレクションや国内外の美術館から、ローランサンの作品約40点、挿絵本等の資料約25点に加えて、ローランサンと同時代に活躍した画家たちの作品約25点、合計約90点を展示します。ローランサンの画業を複数のテーマから紹介し、関連する他の画家たちの作品と比較しつつ、彼女の作品の魅力をご紹介します。】

 

序章は、マリー・ローランサンと出会う。

【マリー・ローランサン(1883-1956)は、パリのアカデミー・アンベールで学び、キュビスムの画家として活動をはじめました。1914年にドイツ人男爵と結婚、ドイツ国籍となったため、第一次世界大戦が始まるとフランス国外への亡命を余儀なくされました。1920年に離婚を決意して、パリに戻ってくると、1921年の個展で成功を収めます。第二次世界大戦勃発後もほとんどパリに暮らし、1956年に72歳で亡くなるまで制作を続けました。】

 

マリー・ローランサン、「自画像」(1904年) 油彩・板 マリー・ローランサン美術館蔵

ローランサンの絵は数多く見ているが、自画像を見るのは初めて。

写実的な、21歳の自画像に少し驚く。

 

マリー・ローランサン、「自画像」(1905年頃) 油彩・板 マリー・ローランサン美術館蔵

 

マリー・ローランサン、「自画像」(1908年) 油彩・カンヴァス マリー・ローランサン美術館蔵

25歳の自画像は大きく変化し、単純化された平面的な表現となっている。

この時期、ローランサンはモンマルトルの集合アトリエ兼住居「洗濯船(バトー・ラヴォワール)」に出入りするようになり、パブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックらと共に自らの表現を探求。

またピカソの紹介で知り合った詩人のギョーム・アポリネールと恋人関係となっている。

 

マリー・ローランサン、「帽子をかぶった自画像」(1927年頃) 油彩・カンヴァス マリー・ローランサン美術館蔵

ドイツ人男爵との結婚(1914年)、第一次世界大戦勃発によるスペインへの亡命、離婚(1921年)を経てパリに戻ったローランサンは個展(1921年)で成功をおさめ、人気の画家となった。

44歳の自画像はまさにローランサン独特の絵であるが、本人の特徴も良く表現されている。

 

第1章は、マリー・ローランサンとキュビスム。

ローランサンはモンマルトルの集合アトリエ兼住居「洗濯船(バトー・ラヴォワール)」でパブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックらと交流を深めていたことから、キュビスムの画家とされることも多い。

しかしローランサンは自書「夜の手帖」に、「私が立体派(キュビスム)の画家にならなかったとしても、それはつまり、なろうにもなれなかったからです。その力がなかったわけですが、彼らの探求には今でも情熱をかきたてられるのです」(大島辰雄訳)と記している。

第1章では、1909年頃に始まったキュビスムの時代のローランサンが、パステル調の作品を描く前に、前衛的な位置にいたということが示されている。

 

マリー・ローランサン、「パブロ・ピカソ」(1908年頃) 油彩・カンヴァス マリー・ローランサン美術館蔵

 

マリー・ローランサン、「横たわる裸婦」(1908年) 油彩・カンヴァス 名古屋市美術館蔵

(撮影禁止のため、名古屋市美術館の作品紹介の画像を使用。)

 

マリー・ローランサン、「若い女たち」(1910-11年) 油彩・カンヴァス ストックホルム近代美術館蔵

(撮影禁止のため、美術手帖の画像をお借りしました。)

「若い女たち」はキュビスム時代のローランサンの絵の特徴が最もよく出ている作品なのだそうだ。

特に背景の描き方にはキュビスムの影響が強く感じられる。

 

マリー・ローランサン、「サーカスにて」(1913年頃) 油彩・カンヴァス 名古屋市美術館蔵

(撮影禁止のため、名古屋市美術館の作品紹介の画像を使用。)

この頃になると、ローランサンの絵はキュビスムの手法を残しながらも、柔らかな線とパステルカラーを使う独自の方向に向かい始めている。

 

マリー・ローランサン、「ブルドッグを抱いた女」(1914年) 油彩・カンヴァス 群馬県立近代美術館蔵

ローランサンの絵には、犬と楽器が数多く描かれている。

このブルドック、とても可愛い。

 

ジョルジュ・ブラック、「円卓」(1911年) 油彩・カンヴァス 石橋財団アーティゾン美術館蔵

ここではローランサンの絵と共にキュビスムを代表する画家たちの作品が展示されているので、その共通点、そしてその違いを理解することができる。

この作品はブラックの分析的キュビスムの盛期の作品。

署名は画面にではなく、裏面に入っている。

 

ジョルジュ・ブラック、「パル(テーブル上のバスの瓶とコップ)」(1911年) エッチング 石橋財団アーティゾン美術館蔵

 

ジャン・メッツァンジェ、「キュビスム的風景」(1911-12年) 油彩・カンヴァス 石橋財団アーティゾン美術館蔵

風景画をキュビスムの手法で描いた、初期の作品。

 

ジャン・メッツァンジェ、「円卓の上の静物」(1916年) 油彩・カンヴァス 石橋財団アーティゾン美術館蔵

メッツァンジェの絵は、ピカソやブラックよりも色彩や意匠性に富んでいる。

 

ロベール・ドローネー、「街の窓」(1912年) 油彩・厚紙 石橋財団アーティゾン美術館蔵

窓から見えるエッフェル塔を描いた作品。

フランスにおける抽象画の先駆的存在で、ドローネーの絵は色彩豊かで躍動感がある。

 

パブロ・ピカソ、「ブルゴーニュのマール瓶、グラス、新聞紙」(1913年) 油彩・砂、新聞紙・カンヴァス 石橋財団アーティゾン美術館蔵

画面に異物を混入するコラージュの技法が用いられた、総合的キュビスムの作品。

絵の具に砂が混ぜられ、画面には新聞紙が貼られている。

 

フアン・グリス、「新聞と開かれた本」(1913-14年) 油彩・カンヴァス 石橋財団アーティゾン美術館蔵

スペイン出身のキュビスムの画家で、「洗濯船(バトー・ラヴォワール)」に住み込んで制作を続けた。

 

アルベール・グレーズ、「手袋をした女」(1922年頃) 油彩・板 石橋財団アーティゾン美術館蔵

グレーズは伝統的な主題である女性肖像画を新しい造形で表現する試みを続け、この主題の絵を25点描いている。

 

これで第1章は終了。

ところで、「アーティゾン美術館」では有料のイヤホンガイドを借りなくてもアプリをインストールするだけで、スマホで解説を聞くことができるのが嬉しい。

ちぃさんと「アーティゾン美術館」で過ごす楽しい午後は続きます。