11月のある週末、彼女と六本木のフレンチで待ち合わせ。
乃木坂駅の地下から「国立新美術館」に上る通路には、”I Hate Free Hugs”のプロジェクト・マッピング。
地上に出ると、長いアプローチには多くの来館者。
”イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル”と”日展”が開催されている。
入館すると多くの扉に迎えられる。
その上には丸い大きな灯り。
この中に”どこでもドア”があるかもしれない。
この照明は、渡辺篤の「ここに居ない人の灯り」。
ドアを後ろ側に回り込むと、ハグする人々の映像。
こちらにもドアが並ぶ。
そしてハグする人々。
これらの作品は、渡辺篤の「私はフリーハグが嫌い I Hate Free Hugs」。
外国人の方がエスカレーターの映像を撮影している。
私も隣に立ってみて、このエスカレーターの下部がスケルトンになっていることに初めて気が付いた。
上から降りてくる折りたたまれた足板が鋸の歯のように動くのが見えるのだ。
これは動画を撮りたくなる。
ここには何十回も来ているのに、この外国人の方にこの面白さを初めて教えてもらった。
”イヴ・サンローラン展”はまだ入場可能。
普通は閉館間近なので入場できないが、今は金曜日と土曜日は鑑賞時間が18時までから20時までに延長されている。
待ち合わせの場所は、何時もの天空のレストラン。
ここに来ると、この景色を毎回撮影してしまう。
天空のレストランに渡る橋の入り口には、『ポール・ボキューズ』のスペシャリティ、きのこのスープのポスター。
秋を感じる。
『ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ』に通じる橋を渡る。
レセプションで酒巻マネジャーに迎えられ、席に案内してもらう。
コロナの規制が解除された今も、ここでは四人用テーブルに斜向かいに席がセッティングされている。
今夜の植田シェフの料理が楽しみだ。
日本における『ポール・ボキューズ』一号店のここの厨房を取り仕切る植田さんは、リヨンの『ポール・ボキューズ』本店の料理を最も忠実に再現していると評されている。
彼女が到着し、松尾支配人が最初のワインを注いでくれる。
ドゥラモット、シャンパーニュ、ブリュット、プール・ヒラマツ。
サロンの姉妹メゾンのシャンパーニュは美味い。
アントレが届く。
鴨フォアグラのポワレ、ソース・フランボワーズ、胡椒風味のインゲン豆と共に。
『ポール・ボキューズ』の料理には、フォアグラは必須アイテム。
日本に輸入されるフォアグラの大部分はハンガリー産だが、『ポール・ボキューズ』では貴重なフランス産が使われている。
フォアグラにはポルトのソース、両脇にはフランボワーズのソース。
フランボワーズの酸味とフォアグラの甘みがよく合って美味い。
欧州でも鳥インフルエンザが流行し、長い間フォアグラを食べることができなかった。
輸入が再開されて嬉しいが、円安のせいだろうか、以前に較べるとフォアグラが小さくなっている。
パンが届く。
ここのバゲットは美味い。
でも料理のヴォリュームがあるので食べ過ぎは要注意。
ソースを救って食べるため、このあとお代わりして今夜は二個食べてしまった。
パンのお供は、カレー風味の鶏のリエット。
これが美味しく、パンが進んでしまうのが問題。
ポワソンに合わせて選んだワインは、彼女が好きな銘柄。
ボルドー、ソーテルヌの、クロ・デ・リュンヌ、キュヴェ・リュンヌ・ダルジャン、2015年。
このワインの2015VTが残っているのは嬉しい驚き。
ペサック・レオニャンの銘醸、ドメーヌ・ド・シュヴァリエのベルナール家がソーテルヌで造る辛口の白。
2012年がファースト・ヴィンテージ。
8年の熟成を経て、ソーヴィニヨン・ブラン由来の白い花の香りは影を潜めているが、豊かな果実味、複層的なストラクチャー、綺麗な酸は健在で、まだまだ若々しさを感じる。
セパージュはセミヨン70%、ソーヴィニヨン・ブラン30%で、セミヨンの貴腐ぶどうが少量ブレンドされている。
彼女と過ごす、六本木の楽しい夜は続きます。