11月のある週末、彼女と六本木のフレンチ、『ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ』で過ごす楽しい夜の続き。
ポワソンに合わせて飲んでいるワインは、ボルドー、ソーテルヌの、クロ・デ・リュンヌ、キュヴェ・リュンヌ・ダルジャン、2015年。
ペサック・レオニャンの銘醸、ドメーヌ・ド・シュヴァリエの醸造チームがソーテルヌで作る辛口の白。
仙台産平目とほうれん草のパイ包み焼き、ソース・ショロン。
これは『ポール・ボキューズ』のスペシャリティ。
魚は鱸が使われることが多いが、平目も美味い。
パイ包み焼きには必ずローズマリーの枝が突き刺さっているが、これを見るとお化けのQ太郎を連想してしまう。
「ソース・ショロンはどんなソースなの」と彼女。
「ベアルネース・ソースにトマトのピュレを加えたソースだよ」と私。
「本当に何でも知っているわね。尊敬しちゃうわ」と彼女。
フランス料理のソースの種類は多く、とても覚えきれない。
ベアルネーズ・ソースは基本で、トマト・ピュレを加えるとソース・ショロンとなり、レモン汁を加えるとオランデーズ・ソースとなる。
パイ皮の中には平目の身がぎっしり詰まっている。
酸味のあるソース・ショロンがよく合って美味い。
爽やかな苦味を持つリュンヌ・ダルジャンも料理を引き立ててくれる。
リュンヌ・ダルジャンを飲み干すと、今度はブルゴーニュからもう一種類彼女が好きなワインを選ぶ。
コート・シャロネーズのクローディ・ジョバールが造る、リュリー、モンターニュ・ラ・フォリ、2015年。
これも2015VTと熟成が進んだ白。
クローディはぶどう育苗家の父とワイン醸造家の母の元に生まれ、自らのドメーヌを率いると共に、ブルゴーニュの名門ネゴシアン・エルブール、ルモワスネの醸造責任者をも務める、ブルゴーニュで人気の女流醸造家。
クローディのシャルドネはとても力強く、果実味、酸味、ミネラルのバランスが抜群で、彼女も私も大好きなワインだ。
私のセラーにはクローディのワインが常に何本か入っている。
ヴィアンドは、マグレ鴨のロースト、赤ワインソース、じゃがいものドフィノワと季節の野菜添え。
鴨の中でもマグレ鴨は好物。
フォアグラ用に肥育された鴨は身も美味い。
リヨン料理に、じゃがいものドフィノワは必須アイテム。
美味いがお腹に溜まる。
付け合わせの野菜は、ズッキーニ、マッシュルーム、ナス、ブロッコリー、ポロネギ、そして左端の茶色い塊はクリ。
クリの甘味が良いアクセントになっている。
ヴィアンドに合わせるワインは、ボルドー、メドックの、シャトー・オー・モーラック、クリュ・ブルジョワ、2010年。
ジロンド川近く、サン・イザン・ド・メドック地区に居を構えるシャトー。
13年間の熟成を経て、果実味にタンニンが綺麗に溶け込み、強いがまろやかなボディ。
セパージュは、カベルネ・ソーヴィニヨン60%、メルロー40%、樽熟成は12~14ヶ月で新樽比率は1/3。
元々強いボディのワインだが、熟成が進んでいるので鴨にも上手く馴染む。
ここはランチは激混みで長い行列ができるが、ディナーは客が少ない。
でも今夜は満席。
今(2023年11月)は人気の”イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル”と”日展”が開催され、金曜日と土曜日は鑑賞時間が18時までから20時までに延長されている。
デセールは、洋梨のコンポートとジュレ、キャラメルのアイスクリーム、ナッツのキャラメリゼ。
大きな洋梨がまるまる一個使われている。
柔らかな洋梨のコンポートとジュレに対し、ナッツのキャラメリゼはカリカリの食感。
洋梨の下には、大きなキャラメルのアイスクリーム。
美味しくヴォリュームのあるデセールに満足。
今夜の植田シェフの料理も素晴らしかった。
いっぱいになった胃を濃いコーヒーが癒してくれる。
松尾支配人に見送られ、満腹満足で店をあとにする。
何時もなら私たちが最後の客となるのだが、今夜はまだ多くの客が残っている。
週末は遅くまで正面エントランスが開いている。
何時もは建物横にある非常口から退出しているので、正規の出入口を使えるのは嬉しい。
振り返ると、黒川紀章設計のガラス張りの造形が明るく輝いている。
「東京ミッドタウン六本木」まで来た。
何時もはここから地下に下るのだが、クリスマス・イルミネーションが始まっているのでミッドタウンガーデンを散策。
ここは”光の散歩道”。
今日は金曜日、人が多く開放的な雰囲気が漂う。
何だか存在感のある樹だ。
人が居なくなった深夜、動き出しそう。
今年も昨日からステートリンクが開場している。
今年は、"COACH MIDTOWN ICE RINK"。
ガレリアの吹き抜けを飾るのは、”some snow scenes”。
ビジュアルデザインスタジオWOWによる演出と、音楽家の江﨑文武による楽曲の美しいコラボレーションだ。
プレッセに寄り、彼女と私の明日の朝食用のサラダを何点か購入。
〆の撮影は、「意心帰」。
彼女と過ごす六本木の夜は素敵に更けていきました。