11月のこと、四年ぶりの楽しい高知旅の続き。
メンバーは、高知のかずみさんご夫妻、そして、しづちゃんと私。
蔵見学を終えると、いよいよ試飲の始まり。
この試飲カウンターは、酒を搾る槽(ふね)を改造したもの。
カウンターの上には酒造好適米の磨きのサンプル。
50%を超える精米だとこんなに小さくなるのかと、改めて感心する。
そして亀泉を代表する酒のボトルも。
亀泉と言えば、純米大吟醸 CEL-24。
通常は白いラベルなのだがこれは黒。
理由を伺うと、これは発売開始24周年の記念ボトルで、高級酒造好適米の愛山で醸されたものとのこと。
CEL-24は今年で26年目。
最初の10年間は甘い独特の風味が受け入れられず、売れずに苦労されたとのこと。
酒の仕様を記したこの特徴あるラベルは、元々は裏ラベルだった。
CEL-24を最初に置いてくれたお店の女将から、「これをラベルにしたら面白いのでは」というアイデアをもらい、表ラベルにされたとのこと。
西原社長が冷蔵庫から一升瓶を取り出すと、コップになみなみと注ぎ始められた。
試飲でコップ酒とはと一同驚く。
でも、これは和らぎ水だった。
お顔を拝見すると、何時もこのパフォーマンスで来訪者を驚かせているのだろう。
「今日は十種類の酒を試飲してもらいます」と、西原さん。
プラカップではなく試飲用のグラスが出され、試飲を終えると次の酒を注ぐ前に、水で洗ってくれる。
最初の酒は、本醸造。
心地よいリンゴ系の果実香を持つ、きりりと引き締まった辛口。
飲み飽きしない酒だ。
酵母はCEL-19、米は松山三井、精米歩合は60%。
参考までに主要な高知吟醸酵母の一覧を添付しておく。
二種類目の酒は、しぼったばっかし。
「この酒は昨日、高知駅の庄やで飲みました」と私。
「まだありましたか。それは春に搾った酒ですが、これはまさに搾ったばかりですのでフレッシュ感が違いますよ」と西原さん。
ラベルに書かれているとおり、”フレッ酒”で”デリッ酒”な本醸造生酒。
精米歩合は70%。
アルコール度数が18%もあるので、飲みやすいが飲み過ぎ注意。
三種類目の酒は、特別純米。
非常にバランスの良い酒。
これを飲むと、やはり純米酒は旨いと思う。
酵母はA-14/AA-41、酢酸イソアミル系の酵母だ。
米は土佐錦、精米歩合は60%。
真剣に試飲すると背筋が伸びる。
四種類目の酒は、純米吟醸 無濾過 生原酒。
これは心憎い試飲の順番。
毎回同じことを書いているが、これを飲むと純米吟醸は旨いと思う。
華やかな香りと旨みと酸味のバランスが素晴らしい。
酵母はAC-95、酢酸イソアミルとカプロン酸エチルをバランスよく生成する酵母だ。
米は吟の夢、精米歩合は60%。
酒造好適米の稲穂が飾られている。
風鳴子に較べ、亀の尾は草丈が長い。
やはり栽培しにくい種類なのだとわかる。
五種類目の酒は、純米吟醸 原酒 高育63号。
高育63号は高知県で開発された酒造好適米、風鳴子のこと。
酢酸イソアミル系の華やかなメロン香。
しっかりした米の旨みを持ちながら、切れの良い辛口。
酵母はAA-41、米は風鳴子、精米歩合は55%。
ここで閑話休題。
使用されている試飲グラスには、”KAMEIZUMI SINCE 1897”と記されている。
六種類目の酒は、純米大吟醸 原酒 CEL-24。
残念ながら左の生酒は品切れで、右の火入れヴァージョンを試飲。
初めて飲んだCEL-24も亀泉だった。
その時は-10を超える日本酒度に引いてしまったが、飲んでみると華やかな香り、優しい甘味=旨み、そして活き活きとした酸、そのバランスの良い美味しさに驚いたことを思い出す。
酵母はもちろんCEL-24。
この酒の仕様は聞き忘れたが、生ヴァージョンの使用米は八反錦、精米歩合は50%。
西原さんがスマホで、サケタイムで発表される分野ごとの銘柄の人気順位を見せてくれる。
この記事を書きながら高知県の酒のランキングをチェックすると、亀泉のCEL-24が堂々の一位だった。
「鰹に一番合う酒のコンペティションでは、うちの酒が一位だったんですよ」と西原さん。
その時の優勝額が飾られている。
七種類目の酒は番外酒。
CEL-24の生酒はなかったが、三日後に搾る予定のCEL-24を試飲させてくれた。
フレッシュなにごり酒が美味い。
蔵でしか飲むことができない、これぞ蔵訪問の醍醐味。
八種類目の酒は、純米吟醸 土佐のはちきん。
まさにはちきんのような、活きが良く切れ味が素晴らしい辛口。
はちきんとは男勝りの女性のことで、”金〇が八つあるくらいの”、という表現。
使用米は山田錦と八反錦、精米歩合は50%、使用酵母はKA-1。
KA-1は高知県保有の熊本酵母。
九種類目の酒は、純米吟醸 吟麓。
CEL-24ほどではないが、リンゴ系(カプロン酸エチル系)の華やかな香りを持ち、米の旨みと酸味が素敵にバランスしたボディ。
使用米は吟の夢、酵母はCEL-19で、精米歩合は50%。
十種類目の酒は、純米大吟醸 兵庫山田錦。
兵庫県産の山田錦を50%まで磨いて醸された、贅沢な純米大吟醸。
使用酵母はCEL-19で、リンゴ系の甘いフルーツ香を持ち、まろやかな米の旨みを感じることができる。
それでいて後味に甘さが残らない切れの良さは、流石亀泉。
そして十一種類目の酒、番外酒を除けば十種類目、最後の酒は、純米大吟醸 亀の尾。
幻の酒造好適米、亀の尾を50%まで磨き、CEL-19とA-14で醸した酒。
リンゴ系とバナナ系の香りが共存する、リッチな造り。
芳醇な米の旨みを酸が引き締め、切れ味が良い。
これで十種類の酒の試飲が終了。
色違いのエチケットが素敵だ。
友人たちと過ごす、亀泉酒造での楽しい蔵訪問は続きます。