8月初旬のこと、彼女と六本木のフレンチで待ち合わせ。
乃木坂駅で降りると、国立新美術館への直結地下道に進む。
長いエスカレーターを上ると、国立新美術館入口へのアプローチに出る。
この時は”ルードヴィッヒ美術館展”が開催されていた。
空を見上げると、羽田空港に向かう航空機。
写真では遠くを飛んでいるように見えるが、肉眼では美術館のすぐ上を横切っているように見える。
今夜のお店はこの上。
ここに来るとこのアングルから必ず撮影してしまう。
エレバーターで三階に上がると、再びレストランを撮影。
テーブルは断崖絶壁の縁に配置されているが、実際にテーブルに着くと下が見えないので恐怖感は無い。
レストランと反対側、展示室の屋上にあたるところには、竹林。
開業時には全面に竹が茂っていたが、薄い土では育たないようで、残り僅かとなっている。
松尾支配人に迎えられ、何時ものテーブルに案内される。
前夜彼女から、「予約時間より少し早く着きます」とのメッセージをもらったので、15分早めに到着した。
日本の『ポール・ボキューズ』各店の中で、ここの植田シェフの料理はリヨン本店の味を最も忠実に再現していると言われている。
今夜の料理も楽しみだ。
ディナー営業が始まったばかりなので客の数は少なかったが、このあとどんどん訪れ、結構賑やかになった。
それにしても彼女は来ない。
既に予約時間になっている。
私は待つことに慣れているが、松尾支配人が気に掛けてくれ、時々話しかけてくれるのが申し訳ない。
元々の予約時間を10分ほど過ぎた頃、ようやく彼女が到着。
一番ほっとしたのは松尾支配人のようで、直ぐにシャンパーニュを抜栓し、注ぎに来てくれた。
ドゥラモット、ブリュット、プール・ヒラマツ。
サロンの姉妹メゾンのシャンパーニュは美味い。
「最近シャンパーニュも品薄だそうですね」と私。
「このヒラマツ仕様のドゥラモットも年内の入荷は無理だそうで、今の在庫が切れたら大変な状況です」と松尾さん。
『グラン・メゾン オレノ』でも、ルイ・ヴィトンのシャンパーニュがもう入荷しないと言っていた。
プーチンのせいでシャンパーニュまで飲めなくなるかもしれないとは、怒りに火がつきそうだ。
バゲットが届く。
今日のバゲットはとても長くカットされている。
パンのお供はカレー風味の鶏のリエット。
これがバゲットによく合って美味い。
アントレは、鴨フォアグラのパヴェのポワレ、ソース・フランボワーズ、くるみ風味のモロッコインゲン添え。
ソースの配置が美しく、生のフランボワーズも添えられている。
鴨のフォアグラも入荷難となっている。
コース料理に必ずフォアグラが入る『ポール・ボキューズ』としては大変な状況だ。
フォアグラにフランボワーズのソースがよく合って美味い。
ポワソンが届く。
スズキのロースト、サフラン風味のブールブランソース、イカ墨のリゾットとトマトのドゥミセッシュ。
この皿も絵のような美しさ。
流石ミュゼにあるレストランだ。
白はスズキのロースト、黒はイカ墨のリゾット、赤はトマトのドゥミセッシュ、黄はサフラン風味のブールブランソース。
肉厚のスズキが美味い。
楽しく美味しい一皿だ。
合わせるワインは、コート・デュ・ローヌのドメーヌ・ジャンヌ・ガイヤールが造る、マルサンヌ、I.G.P. デ・コリンヌ・ローダニエンヌ、2019年。
ジャンヌ・ガイヤールはピエール・ガイヤールの長女として生まれ、2008年に父から受け継いだ8haの畑で自らのドメーヌを創設。
アルコール度数は14%と高い。
黄桃や熟した洋梨の香り。
豊かな果実味を持ち、樽や蜂蜜のニュアンスも。
それでいて洗練されたボディの辛口に仕上げられている。
ぶどうはマルサンヌ100%、熟成は樽(新樽比率10%)で7~8ヶ月間。
料理によく合って美味しく、マルサンヌのグラスも進む。
彼女と過ごす、国立新美術館での楽しい夜は続きます。