特別展 ポンペイ、東京国立博物館 平成館 3 | ワインは素敵な恋の道しるべ

ワインは素敵な恋の道しるべ

白ワインは天使の如く貴方の心を解き放ち、赤ワインの真紅のグラスの底には悪魔が潜む。そして貴方は天使の如く大胆に、悪魔の如く繊細に、新たな恋の道を歩み始める。

上野の東京国立博物館で開催されている”特別展 ポンペイ”の鑑賞記の続き。

 

第4章は、”ポンペイ繁栄の歴史”。

ここではポンペイの繁栄を象徴する3軒の邸宅(「ファウヌスの家」、「竪琴奏者の家」、「悲劇詩人の家」)に焦点を当て、ポンペイの繁栄の歴史が紐解かれている。

 

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大きな邸宅の壁の写真パネルを過ぎると、「ファウヌスの家」に至る。

 

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まずはヴィデオで「ファウヌスの家」を体験。

見えているのは、この邸宅の名前の由来となった、「踊るファウヌス」。

 

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見取り図で出土品の位置を確認。

「ファウヌスの家」は紀元前2世紀に遡るポンペイ最大の邸宅で、ヘレニズム美術を代表する多くの品が発掘されている。

 

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「猛犬注意」 モザイク

玄関の床に敷かれたモザイク画。

玄関に犬の絵を描くことで、注意喚起、防犯効果を狙ったものと考えられる。

「悲劇詩人の家」にもあり、古代ローマの邸宅(ドムス)では幾つもの例が確認されている。

 

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会場には「ファウヌスの家」の部屋の一部が再現され、モザイク画のシートが床のあるべき場所に貼り付けられている。

手前は、「ナイル川風景」。

 

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床に張られた、「アレクサンドロス大王のモザイク」。

実物は来日していないが、このシートで如何に大きな(3.1m x 5.8m)作品か知ることが出来る。

 

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プロジェクターでは修復が進むモザイク画の説明。

紀元前4世紀に、アレクサンドロス大王がマケドニア軍を率いて東方に遠征しペルシャ軍と戦った、イッソスの戦いを描いたものとされている。

 

愛馬ブケパロスに騎乗したアレクサンドロスです。アレクサンドロス大王を描いたもので最も有名なものかもしれません。<br /><br />

アレクサンドロス大王が凛々しく描かれている。

 

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「ナイル川風景」(東京のみ) モザイク

ナイル川はよく用いられるモチーフで、ローマ人がエジプトに強い興味と憧れを持っていたことがわかる。

中に描かれているのは、カバ、ワニ、コブラ、マングース、トキ、カモ。

 

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「踊るファウヌス」 ブロンズ

今回観たかった展示品の一つ。

 

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牧神ファウヌスの躍動感あふれるブロンズ像で、ヘレニズム彫刻の傑作。

高さは71cmと、小振り。

 

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「湯沸かし器」 ブロンズ、鉄

「ファウヌスの家」ではこんな湯沸かし器を使っていた。

鉄製の三本足の外筒の内側に、ブロンズ製の鍋が入っている。

 

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「スフィンクスのテーブル脚」(東京のみ) ペンテリコン大理石

これはエジプトのスフィンクスではなく、ギリシャ神話のスフィンクス。

 

エジプトにおけるスフィンクスは、ネメスと呼ばれる頭巾を付けたファラオ(王)の顔とライオンの体を持ちますが、ギリシア神話では、ライオンの身体、美しい人間の女性の顔と鷲の翼を持つ怪物として描かれます。<br />

エジプトでは頭巾を被ったファラオの顔とライオンの身体を持つが、ギリシャ神話では美しい女性の顔とライオンの身体と鷲の翼を持っている。

 

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「イセエビとタコの戦い」 モザイク

紀元前2世紀末の、ローマ以前のヘレニズム期のモザイク画。

海の生物は当時好まれた題材。

イセエビとタコとウツボが三すくみの構図で、ウツボの好物はタコ、タコの好物はイセエビ、イセエビはウツボを返り討ちにするという内容。

当時の国家間の国際情勢を反映したものかもしれない。

 

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「ネコとカモ」 モザイク

紀元前1世紀の作品。

食糧庫に忍び込んだ猫が活き活きと描かれている。

エジプトのアレクサンドリア工房の作品と推定されているそうだ。

 

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「葉綱と悲劇の仮面」 モザイク

紀元前2世紀末の作品。

当時から演劇が盛んであったことがわかる。

 

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ここからは「竪琴奏者の家」。

ここではポンペイがローマ化し、帝政期になってローマ文化が黄金期を迎えた頃のフレスコ画などを観ることが出来る。

 

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会場内に中庭の一つを再現。

イオニア式の円柱と池。

 

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左:「へび形噴水」 ブロンズ

右:「イヌとイノシシ」 ブロンズ

池にはこれらのブロンズ像が設置されていた。

 

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左:「シカ」 ブロンズ

右:「ライオン」 ブロンズ

これらのブロンズ像は1世紀の作品。

工芸技術の高さに感心させられる。

 

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「詩人」 フレスコ

詩人、または哲学者とされる男性の肖像画。

ヴェスヴィオ山噴火の直前の作品。

 

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「女性胸像」 ブロンズ、目:練りガラス

この家を所有していたポンペイの有力氏族、ポピティウス家の人物の胸像と考えられる。

練りガラスで造られた目が異様に目立つ。

 

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「男性胸像」 ブロンズ、目:練りガラス

同じくポピティウス家の一員の男性の胸像と考えられる。

 

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「竪琴を弾くアポロ」 ブロンズ

この家の名前の由来となった、紀元前1世紀のブロンズ像。

等身大の大きさで存在感がある。

熱の影響で表面が荒れている。

 

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ここからは「悲劇詩人の家」。

噴火直前に描かれたフレスコ画を観ることが出来る。

 

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1861年に製作された家の模型。

こちら側は家の右半分。

 

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そして左半分。

壁には、神話やトロイア戦争のエピソードを中心とした、噴火直前に描かれた8点のフレスコ画。

このうち4点が来日している。

 

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フレスコ画などの展示コーナーの入り口には、この家の玄関の「猛犬注意」のモザイクが再現されている。

この犬は噛み付きそうで防犯効果がありそうだ。

 

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「ユピテルとユノの聖婚」 フレスコ

ユピテル(ゼウス)とユノ(ヘラ)の聖なる婚礼を描いたもの。

 

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「ブリセイスの引き渡し」 フレスコ

ホメロスの抒情詩のトロイア戦争の一場面。

アキレウスが武功として授かった美女、ブリセイスを総大将のアガメムノンに奪われ、引き渡すシーン。

アキレウスは憤慨し、以後出陣を拒否した。

 

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「ヘレネの略奪(あるいはクリュセイスの帰還)」 フレスコ

これもホメロスの抒情詩のトロイア戦争の一場面。

トロイアの王子パリスはスパルタ王メネラオスの妻、ヘレネと恋に落ち、彼女を略奪する。

これに激怒したメネラオスは兄アガメムノンに支援を求めて挙兵し、トロイア戦争が始まった。

 

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「イフィゲネイアの犠牲」 フレスコ

これもトロイア戦争の一場面。

女神アルテミスの怒りを鎮めるため、愛娘のイフィゲネイアを生贄として捧げよとの神託を受け、悲嘆にくれるアガメムノン(左端)。

アルテミスはイフィゲネイアを憐み、犠牲台に代わりに鹿を置いて助けた。

天空には鹿に乗るアルテミスと弓を持つアルテミスが描かれている。

 

第5章は、”発掘のいま、むかし”

79年のヴェスヴィオ山噴火で埋没した三都市、エルコラーノ、ポンペイ、ソンマ・ヴェスヴィアーナの遺跡の、18世紀から現在に至るまでの発掘の歴史が紹介されている。

 

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三つの遺跡はヴェスヴィオ山を取り囲むように位置している。

 

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「ペプロスを着た女性(通称”踊り子”)」 ブロンズ、象嵌::銀・銅、目:骨・石

エルコラーノ出土。

アウグストゥス時代(前27~後14年)のブロンズ像。

 

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ポンペイで最初に発掘された建築物の一つ、「キケロ荘」の食堂の壁画が再現されている。

 

「キケロ荘」復元壁画より

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小さな絵はとても細密。

 

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ソンマ・ヴェスヴィアーナでの、東京大学海外学術調査隊の発掘風景。

古代ローマ遺跡、「アウグストゥスの別荘」で、ディオニュソスとペプロフォロスを発掘しているところ。

 

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「ヒョウを抱くバックス(ディオニュソス)」 パロス大理石

豊穣と葡萄の神、ディオニュソスが豹を抱えている姿。

豹は、ディオニュソスの聖獣の一つ。

 

ヒョウを抱くバックス(部分拡大)<br />

美しい像だが、抱えているのは豹というより獺に見える。

 

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「ペプロスを着た女性(ペプロフォロス)」 パロス大理石

東京大学海外学術調査隊が発掘したこの二体の彫像は、”ポンペイ展”を締めくくるのに相応しい展示品だ。

 

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最後に、「アレクサンドロス大王のモザイク」の修復などのヴィデオを観て、終了。

 

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今回の”ポンペイ展”は、内容・規模ともに素晴らしかった。

展示室を出ると、記念グッズの販売店。

右手の四本の柱で囲まれた展示コーナーの真ん中に黒っぽく見えるのは、ポンペイのパンの形をしたクッション。

 

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ポンペイに因んだワインも販売されている。

東京国立博物館を出ると、彼女と共にディナーのお店に向かうこととする。

この続きは、また何時か。