先日のこと、積雪の天気予報にもめげず、乃木坂駅に降り立つ。
駅構内にも、国立新美術館の企画展のポスター。
乃木坂駅直結の国立新美術館に向かう。
入口への長いアプローチに出ると、外は雪。
ガラスの屋根がある部分を進む。
通路から外を見ると、細かい雪が激しく降っている。
まだ午後3時前だが、空は鉛色。
9日の初日は混むと思い、わざわざ二日目の15時のチケットを買っておいたが、よりにもよってその日が大雪注意報とは。
観に来た企画展は、”メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年”。
15時と同時に入場。
入口にはニューヨークのメトロポリタン美術館の大きな写真。
撮影OKなのはここまでで、以降は撮影不可。
たっぷり二時間をかけ、素晴らしい絵画の数々を鑑賞。
出口には今回展示されている絵画の年代と場所を紹介するヴィデオ上映。
ここには”撮影可”の大きな張り紙。
出口は売店に接続していて、”MET”の様々な記念グッズが販売されている。
中でも目を引いたのは、複製画。
筆のタッチまで忠実に再現されていて素晴らしいが、どれも十数万円もする。
”メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年”には、メトロポリタン美術館が所蔵するヨーロッパ絵画約2,500点の中から、名画65点(46点は日本初公開)が展示されている。
ニューヨークのメトロポリタン美術館には数回行ったことがある。
初めて訪問したのは約30年前で、日本ではなかなか観ることができないフェルメールの作品に感激したことを思い出す。
その時に観たのは、「水差しを持つ女」。
残念ながら今回は来日していない。
来日しているのは、「信仰の寓意」。
今回の展示は三部構成となっている。
64点の珠玉の名画の中から、絵画にも美術史にも素人の私が気になったものを少しご紹介。
まずは第一部”信仰とルネサンス”。
ここでは15世紀から16世紀にかけてのイタリアと北方のルネサンスを代表する画家たちの作品、17点が展示されている。
ここでまず目を引いたのは、カルロ・クリヴェッリの「聖母子」。
1480年頃の作品だが、この細密さと立体感は驚き。
二人が見ているのは、左下に居る蝿。
蝿は悪の象徴で、聖母子に悪が忍び寄っていることを暗示している。
この作品は日本初公開。
ラファエロ・サンツィオ(サンティ)の「ゲッセマネの祈り」。
ラファエロらしい優しさが好きだ。
この作品も日本初公開。
ルカス・クラーナハ(父)の「パリスの審判」。
「パリスの審判」と聞くと、1976年にパリで行われたフランス・ワインとカリフォルニア・ワインのブラインド・テイスティングで、シャルドネの部でシャトー・モンテりーナが、カベルネ・ソーヴィニヨンの部でスタッグス・リープが勝利した大事件を思い出す。
話しを絵に戻すと、クラーナハは同じモチーフの絵を多数描いており、それぞれの構図が微妙に異なっている。
この「パリスの審判」は、ヘナ、アテナ、アプロディテの三人の女神を横向き、正面、背面の構図で描いていて、数多くの「パリスの審判」の中でも素晴らしい作品と言える。
これも日本初公開。
第一部の17点の絵画の中で圧巻の存在感を放っているのは、エル・グレコ(ドメニコス・テオトコプーロス)の「羊飼いの礼拝」。
エル・グレコは「羊飼いの礼拝」を何枚も描いているが、晩年のこの作品は一番の名作だと思う。
これも日本初公開。
ティツィアーノ・ヴェチェッリオの「ヴィーナスとアドニス」。
危険な狩りに出ようとするアドニスを心配して止めようとするヴィーナス。
ティツィアーノはこの主題の絵を何枚も描いている。
これも日本初公開。
ティツィアーノの絵は好きで、イタリアを始め色々な美術館に観に行った。
コロナ前最後の海外旅行、ウイーンとドブロヴニクへの旅では、ウイーンの美術史博物館でティツィアーノやラファエロを観たことを思い出す。
その時の記事はこちら。
これはプラド美術館所蔵の「ヴィーナスとアドニス」。
メトロポリタン美術館所蔵の絵とどこが違うのか、間違い探しのようで面白い。
ところで、メトロポリタン美術館にはルーベンスが描いた「ヴィーナスとアドニス」もある。
ルーベンスの構図はティツィアーノと真反対となっている。
記事が長くなったので、第二部、第三部のお話しはまた明日。