2月16日から2月26日まで、銀座の「シンワ・プリヴェ ギャラリー」で開催された”長坂真護 個展”訪問記の続き。
長坂真護さんがどんなアーティストかは昨日の記事をご参照ください。
作品が展示されているのは、一階。
地下もあるので階段を下ってみる。
そこにはMAGOこと長坂真護のメッセージ。
電子機器の墓場と化したガーナのアグボグブロシーの、アートによる再生への強い意志が表明されている。
壁にはMAGOやアグボグブロシーの写真パネル。
そしてヴィデオの上映。
そのヴィデオはこちら。
エミー賞受賞監督、カーン・コンウィザーによるMAGOのドキュメンタリー映画の予告編が上映されている。
ヴィデオを二度観たあと、一階の展示室に戻る。
「WE ARE IN THE SAME BOX 2018」 193 x 162cm
この個展の副題、~蓋を開けたら結局同じ~の作品。
中央がMAGO本人。
先進国も、黒人も白人も黄色人種もみんな同じ脳を持ち、思考を持ち、思惑を持ち、信頼を装っている。
これこそがこの世界のどこでも繰り広げられている真実であることが描かれている。
「世界平和のワクチン 2018」 152 x 183cm
これはとても意味深な作品、
世界の先進国の指導者の背後には、妖しき化け物たち。
彼らの前にはごみに埋め尽くされたアグボグブロシー。
アグボグブロシーが乗ったテーブルには脚が三本しかなく、左端の男性が手でテーブルを押さえている。
この男性に何かが起これば、例えば後ろの化け物に襲われ手を離せば、先進国が享受する今の世界がいとも簡単に崩壊することを暗示しているのだろう。
「内界は外界であり、外界は内界であって、内界は外界である 2020」 240 x 180cm
物事は視点によってそのポジションが変り、全ては表裏一体であるとのこと。
地球は微妙なバランスの上に成り立っており、後先考えずにそのバランスを崩してしまうと崩壊することを暗示しているように見える。
その危うい世界が、アグボグブロシーの人の手の上に乗っているのだ。
「Let's Go Diversuty 2020」 180 x 360cm
MAGO最大の作品。
あらゆる人種、そして犬も猫も龍もヴィーナスも差別なく、みんなで新しい世界に行こうという作品。
現実を見据えた問題提起の作品が多い中で、夢のある作品となっている。
右:「Wild Turkey at Slum 2020」 150 x 120cm
左:「malco 2021」150 x 120cm
キャンバスに描かれたターキーの上には、拾ってきた電子機器のごみが貼り付けられている。
マルコの顔にもごみが。
「未来の自動車 2020」 212 x 152cm
「未来の農耕器具 2021」 150 x 180cm
「I can take you as my dad 2021」 100 x 100cm
「corona into us 2020」 122 x 122cm
「時間の歪み 2021」 120 x 150cm
最近はシュルレアリスムへの傾向を強めているのだろうか。
別室にはちょっと雰囲気の違った作品が展示されている。
これらの作品は、越前和紙の上に、墨、金粉、銀粉とスワロフスキーのクリスタルガラスで描かれている。
左:「COUNT ON THE UNIVERSE 2020」 120 x 120cm
中:「Full Moon 2020」 100 x 100cm
右:「The new moon count on universe」 120 x 120cm
左:「Moon Stream 2020」 120 x 120cm
右:「FULL MOON 2020」 120 x 120cm
「炎の妖精 2019」 H40cm
2019年には造形にも取り組んでいる。
土で作られた人頭の中には電子機器のごみ。
「E-waste God 2019」 H180cm
頭部はアフリカの伝統工芸、そして身体は先進国が廃棄した電子機器の残骸。
身長180cmの人形は存在感がある。
MAGOの活動は地球規模で見るとまだまだ小さなものだろう。
しかし燎原の火も最初は小さな灯だったのだ。
こんな日本人の若者が居ることに感動を覚え、勇気をもらった。
この小さな活動が地球の貧困と環境を救う大きなうねりとなることに少しでも貢献できればと思う。
「シンワ・プリヴェ ギャラリー」を出ると、急に喉の渇きを覚えた。
そこで銀座から日比谷仲通りに向かう。
東京宝塚劇場の前で空を見上げると、アグボグブロシーの汚染された空とは異なる青空が、しかし高層ビルに切り取られた小さな空が見える。
さて、どこかのお店でワインを、できればスパークリングを一杯飲んで帰ることにしよう。
長坂真護に出会えた有意義な銀座のひと時でした。