ウィーン最古のレストラン、『グリーヒェンバイスル』の「マーク・トゥエインの間」で彼女と過ごす素敵な夜の続き。
ここは1500年頃から営業しているお店で、この部屋は著名な作家や音楽家のサインが壁一面を飾る特別な場所。
白ワンのボトルを飲み干し、赤ワインを選ぶ。
「ねえ、お店の方にお薦めを聞いてみましょうよ」と彼女。
そこでスタッフを呼んで好みを伝え、選んでもらったのがこのボトル。
ヴァイングート・ゲルハルド・マルコヴィッチが造る、マルコヴィッチ・ルビン・カルヌントゥム、2017年。
カルヌントゥムはウィーンの近くに位置する910haの小さなワイン産地で、近年、優秀な赤ワインの産地として注目されている。
そしてこのカルヌントゥムで最良の造り手と称されるのが、このマルコヴィッチ。
マルコヴィッチは、あるピノ・ノワールの試飲会で第一位を獲得したことで有名になった造り手とのこと。
それは世界各国のワイン会の著名人がテスターとなって開催された試飲会で、ブルゴーニュのDRC、ニュージーランドのフェルトン・ロード、オレゴンのドメーヌ・セリーヌ等を抑え、第一位に選出されたのだ。
あとでワインリストで調べてみると、一番高いワインを勧められたことがわかった。
”良いものは結局お得です”という言葉を思い出し、美味しかったので良しとしよう。
2017年とまだ若いので、コルクも真新しい。
香りも良い。
良いワインを注文したからか、デキャンタージュをしてくれた。
しっかりした果実味、心地よい樽のニュアンス。
まだ若いことは否めないが、タンニンは綺麗に果実味に溶け込み、バランスの良いボディを生み出している。
確かにこれは上質のツヴァイゲルトだ。
サラダに続き、私のメイン料理が届く。
あまりの大きさに目が点になる。
ドイツには数十回行っているので料理のヴォリュームには慣れているつもりだったが、ここの料理も侮れない。
豚のすね肉のロースト、シュバイネハクセ。
オーストリアではシュテルツと呼ばれる。
好物のザワークラウトがたっぷり添えられているのも嬉しい。
彼女は大好きな仔羊を選択。
肉厚なラムチョップが四本も入っている。
取り皿をもらい、豚肉を彼女にお裾分け。
彼女からもラムチョップのお返し。
肉はジューシーで、パリッとローストされた皮も美味い。
彼女はお腹がいっぱいで最後の一本を残してしまった。
そして私も残りわずかではあるが、ギヴアップ。
サラダもまだこんなに残っている。
壁のサインを見上げ、どれがモーツァルトでどれがベートーヴェンでどれがヨハン・シュトラウスだったのか二人で探すが、もうわからなくなっている。
どのサインの主も、きっと当時は有名な方達だったのだろう。
満ち足りた思いで『グリーヒェンバイスル』をあとにすると、腹ごなしに街を散策。
シュテファンスプラッツに出ると、右折してグラーベン通りに歩を進める。
もう夜9時になろうかというのに、この明るさ。
これはペスト記念柱。
その先の右側には、ペーター教会。
平日は午後に、土日は夜にオルガンコンサートが開かれている。
グラーベン通りからコールマルクトにかけては高級ブランドの店が軒を連ねる。
コールマルクトの先には王宮が見える。
王宮の前まで来た。
今日はここでのミサに始まり、美術史博物館、ベルヴェデーレ宮殿を巡った長い一日だった。
そろそろホテルに引き揚げることにしよう。
彼女と過ごすウィーンの旅は続きます。