代官山の邸宅イタリアン、『リストランテASO』で彼女と過ごす素敵な夜の続き。
ドゥラモットのシャンパーニュ、アルザスのヴァインバックのリースリング、キュヴェ・サント・カトリーヌに続いて飲んでいるのは、サンセールのアルフォンス・メロが造る、サンセール・ブラン、ジェネラシオンⅩⅠⅩ、2009年。
アルフォンス・メロの当主は19代目なので、最高級キュヴェも19代と名付けられている。
「アルフォンス・メロのジェネラシオンⅩⅠⅩは本当に美味しいわね」と彼女。
「君は右岸のプイィ・フュメではドゥ・ラドゥセットのバロン・ド・エルが好きで、左岸のサンセールではアルフォンス・メロのジェネラシオンⅩⅠⅩが好きなんだね」と私。
要するに、右岸も左岸も一番高級なキュヴェが好きだということだ。
魚料理は、ハタのムース仕立てと鮑のパセリ風味キャビア添え、芹の香り、フィノッキオソース。
これはなかなか贅沢な一品。
イタリア語のフィノッキオは、フランス語ではフヌイユ、英語ではフェンネル、そして日本語ではウイキョウ。
芹科ウイキョウ属の植物である。
今夜の赤ワインは3ℓボトル。
イタリアでは何と呼ぶのだろうか。
ボルドーだと、ドゥブル・マグナム、シャンパーニュだとジェロボアム。
ボルドーだと、ジェロボアムは4.5ℓボトルのこと。
トスカーナ州のファットリア・ラ・マッサが造る、キャンティ・クラッシコ、ジョルジョ・プリモ、2000年。
サンジョヴェーゼで18年物とは驚きだが、ジェロボアムなので熟成もゆっくり進み、飲み頃なのだそうだ。
裏のラベルには、DOCGキャンティ・クラッシコと記載されている。
実はラ・マッサは2003年にDOCGから離脱し、以降はIGT表記で生産している。
そして今ではサンジョヴェーゼを止め、ボルドータイプ(カベルネ・ソーヴィニヨン60%、メルロー35%、プティ・ヴェルド5%)のワインに転換している。
飲んでみると、驚くほど果実味が強く、濃く重い。
タンニンも強いが、滑らか。
2000年は暑かった年なので、果実の凝縮感も半端ではない。
そして何より素晴らしいのが、まだまだ若々しく熟成のポテンシャルを持ち続けていること。
昨年11月にボーヌに行った時に見付けた、ワインボトルの大きさの展示。
左から二本目が750mlのブティユで、四本目が3ℓのジェロボアム。
ブルゴーニュではシャンパーニュと同じ呼び方のようだ。
肉料理は、蝦夷鹿背肉のロースト、赤すぐりと赤ワインのソース、南瓜のピュレとアーモンドのキャラメリゼ。
蝦夷鹿背肉の火入れが素晴らしい。
南瓜のピュレとアーモンドのキャラメリゼ。
この自然な甘さが好きだ。
付け合わせの盛り付けも美しい。
最初の二本のボトルは予めデキャンタージュされていた。
足りなくなり、三本目が抜栓されたので、新しいボトルも試してみることに。
濃く不透明なので、光をほとんど通さない。
このボトルも美味い。
苺とモスカートダスティのザバイオーネ、ピスタチオのジェラート。
モスカートダスティはピエモンテ州で造られる微発泡の白ワイン。
そしてザバイオーネはピエモンテ州名物のクリーム菓子。
ピスタチオのジェラートは私の好物。
ザバイオーネの中には苺が詰まっている。
ザバイオーネは、フランスでのサバイヨンのこと。
食後には、再度シャンパーニュを飲むことにする。
シャンパーニュは、ドゥラモットが『ひらまつ』のために造るスペシャル・キュヴェ、ドゥラモット・ブリュット、プール・ヒラマツ。
ミニャルディーズは、マカロンとフレッシュ・チョコレート。
「今夜のお料理もワインも素晴らしかったわ。何時もありがとう」と彼女。
「高橋支配人と高階料理長に今夜のお礼の挨拶をして、そろそろ帰ることにしよう」と私。
ホールを後にし、高橋支配人に見送られて店を出る。
今夜も明日の朝のサラダを買うのかと思ったら、少し飲み過ぎたので真っ直ぐ帰りたいという。
店の前で、高橋さんがタクシーを止めてくれ、乗り込んで彼女を送ることにする。
彼女と過ごす、代官山の素敵な夜でした。