バスルームで洗顔中のこと。
クレンジングフォームを泡立て、両の掌で顔を洗う。
鼻の脇には皮脂が溜まりやすいので、特に念入りに掌でごしごしと洗う。
と、ゴリという異音が頭の中に響き、鼻の奥に鋭い痛み。
一体何が起こったのか、気を静め状況分析に努める。
結論は、左手の小指が鼻の穴に突き刺さったようだ。
右手で顔の泡を拭い、目を開けて恐る恐る左手の小指を鼻から引き抜く。
すると生暖かい液体が鼻の奥からどくどくと流れ落ち、左の掌を真っ赤に染めていく。
左の親指で鼻の穴を塞ぎながら急いでシャワーを浴び、濡れた身体で脱脂綿を取りに行く。
ティッシュペーパーにドバっと血抜きをし、手早く脱脂綿を詰めるが、あっという間に真っ赤になって血が染み出す。
上を向いて横になり、何度か脱脂綿を交換しながら血が止まるのを待つ。
自分の小指を鼻の穴に突っ込んで怪我をするとは、何とも間抜けな話でした。
という訳で、結構な量の血液を失ってしまった。
これは濃い赤を飲んで補わなければならない。
セラーをのぞき込むと、神楽坂の『ドルチェ・ヴィータ』で買ったシチリアのネロ・ダーヴォラを見付けた。
ファジオが造る、エーリチェ、トッレ・デイ・ヴェンティ、ネロ・ダーヴォラ、2016年。
エーリチェはシチリア島西部のサン・ジュリアーノ山(標高751m)の山頂部にあるコムーネ(基礎自治体)。
ファツィオは良いコルクを使っている。
香りもとても良い。
ネロ・ダーヴォラらしく、色合いはとても濃い。
甘い果実の香り。
完熟した黒果実、カシス、プルーンを感じる。
口に含むと、強い果実味の中にビターチョコレート、スパイス、樽熟成由来のバニラのニュアンス。
強いタンニンを持つが、強くても滑らかなボディ。
美味いネロ・ダーヴォラだ。
アルコールを飲むと血流が活発化し、また出血するのではとも思ったが、大丈夫だった。
美味しいシチリアの赤で血液を補った、楽しいお家ワインでした。