白金台の東京都庭園美術館の中にあるフレンチ、『レストラン・デュ・パルク』で彼女と過ごす素敵な夜の続き。
ここは青山のフレンチの名店、『ロアラブッシュ』が運営するレストラン。
スパークリング、白をグラスで飲んだあとは、ブルゴーニュの赤をボトルで。
メゾン・ジョセフ・ドルーアンが造る、リュリー、2014年。
リュリーはコート・シャロネーズ北部の村で、私が好きなAOCだ。
コルクの状態は良く、濡れ具合、香りも上々。
色合いは薄めのルビー色。
ラズベリー、ブラックベリーの香り。
カシス、薔薇、そして口の中で転がしていると、黒い土やシャンピニオンのニュアンスが現れる。
タンニンも円やかで、控えめな酸とのバランスが良い。
やはり良い造り手のリュリーは好きだ。
フレンチオークの樽で12~15か月熟成されており、新樽比率は20%。
二皿目の前菜はスープ仕立て。
スープ・ド・ポアソンと黒ニンニクのアイヨリソース。
中に垂らされたソースは、黒ニンニク、卵黄、オリーブオイルで作られた、アイヨリソース。
魚介のアラで作られたスープに、心地良いアクセントとなっている。
彼女が選んだ魚料理は、やさしく焼いたサーモンとホワイトアスパラガス、二種類のソース。
サーモンは低温調理。
彼女によると、生に近い食感で旨味が凝縮されたサーモンが素晴らしく美味しいとのこと。
私が選んだのは、姫鯛のグリエ、ベーコンと新玉葱のバルサミコソース。
姫鯛の身は肉厚。
皮はパリっと焼かれ、身はしっとり。
姫鯛の上には、ラタトゥイユ。
庭に夕闇が迫り、灯りが点灯し始めた。
写真では明るく見えるが、外は既に薄暗い。
肉料理が届いた。
鴨の脚の肉をジャガイモと合わせて作ったコロッケ。
肉厚の鴨は、肉質がしっかりし旨味が凝縮されている。
ハーブは、防風という名前のセリ科の植物。
肉用に出されたのは、ブラジルのトラモンティーナ。
1911年にイタリア移民のバレンティーノ・トラモンティーナが設立したナイフメーカーで、今ではブラジルで圧倒的シェアーを誇る総合キッチンウェアメーカーとして発展している。
デセールは、桃のムース、マジョラムの香り、タイム風味の牛乳ソルベ添え。
プリンプリンしたムースの中には、桃のダイスカットが詰まっている。
牛乳のソルベには、ライチが合わされている。
気が付くと、外は夜の闇に覆われている。
照明が当たった樹々が怪しく光る。
木をふんだんに使った、柔らかな天井の造形が美しい。
「アメリカのプロテスタントの教会みたい」と彼女。
フロアマネジャーに聞くと、久米設計の作品なのだそうだ。
「こんな素敵なフレンチに連れてきてくれてありがとう。貴方のレストラン選びのセンス、大好きだわ」と彼女。
心の中で密かに、ここを教えてくれたredfoxさんに礼を述べる。
彼女は青山の『ロアラブッシュ』も好きなので、フロアマネジャーと本店の話も弾む。
店を出る前に、亀田純也料理長とご挨拶。
「もうすぐメニューが変わりますので、またお越しください」と亀田シェフ。
亀田さん、今夜はお世話になりありがとうございました。
新メニューをいただきに、また来ます。
外に出ると、庭園美術館の森は夜の帳に覆われている。
彼女と過ごす白金台の夜は素敵に更けていきました。