久し振りに牡蠣を食べたいと彼女が言い出した。
行きつけのオイスターバーも幾つかあるが、店の前を通るたびに入ってみたいと彼女が言っていた神楽坂のお店に初めて行ってみることにする。
お店は神楽坂(早稲田通り)の飯田橋寄りにある『貝殻荘』。
この狭い階段を上り、二階の店に向かう。
店内は鰻の寝床のように長く奥に伸びている。
上ってきた階段の上部にある、更に急な階段で上る中二階のような場所が、今夜の席。
他の席を見下ろす位置にあるただひとつのテーブルなので、個室感覚で食事をすることができる。
古民家を改造したそうで、天井には梁が剥き出し。
不釣り合いな豪華なシャンデリアが面白い。
すぐ下は、厨房。
コンロや鉄板を使ってシェフが料理を仕上げているのが良く見える。
最初のボトルは、シャンパーニュ。
モエ・エ・シャンドン、ロゼ・アンペリアル。
モエは1743年創業の名門。
アンぺリアル=皇帝の名前は、ナポレオン一世がモエのシャンパーニュを好んだことを記念して付けられた名前。
「美味しい。ロゼのシャンパーニュ、好きよ」と彼女。
「ロゼの綺麗な色は、君に良く似合うよ」と私。
予約時に頼んでおいた牡蠣が届く。
手前の二個が、北海道のマルえもん。
奥の二個が、静岡産の岩牡蠣。
口に含むと、どちらも驚くほど濃厚。
まさにシーミルク。
露木店長お薦めの、5種の魚介メリメロ・カルパッチョ。
つまり、ごちゃ混ぜカルパッチョ。
カンパチ、赤海老、蛸、・・・あと二種は失念。
柔らか鮎のコンフィ、夏野菜のラヴィゴットソース。
ラヴィゴットソースは、野菜のみじん切りに酢や油を加えたソース。
立派な鮎だ。
私が取り分けようとすると、「身を三枚に分けてね」と彼女。
「もちろん。鮎は背中をぐっと抑えると身が三枚に分かれるんだよ」と私。
綺麗に分かれた身に、ラヴィゴットソースを掛けて彼女に渡す。
「ありがとう。本当に上手ね」と言われて悪い気はしない。
ソースに使われている野菜は、野沢菜のようだ。
神楽坂の『貝殻荘』で彼女と過ごす楽しい夜は続きます。