今日もタイはお酒を飲むことが出来ない祝日。
昨夜予約した、そっと飲ませてくれる馴染みのお店、『アントニオス』に再び向かう。
昨日より早い時間なので、店に客は少ない。
何時ものカウンター席に座り、店内を一渡り眺める。
テラス席は暑そうだが、欧米人には人気の席だ。
1階にはテーブルが並び、2階には二つの個室がある。
タイは酒類の輸入関税が高く、レストランで飲むワインの価格は日本の二倍近くになってしまう。
『アントニオス』には良いワインが揃っていて、しかも価格はバンコクの一流店の中ではリーズナブル。
前夜はソーヴィニヨン・ブランで始めたので、今夜はシャルドネでスタート。
オーストラリア、西オーストラリア州のドメーヌ・ナチュラリストが造る、ディスカバリー、マーガレット・リヴァー、シャルドネ、2015年。
綺麗な黄金色。
グレープフルーツやジャスミンのニュアンス、オークの香りも心地良い。
カウンターは大理石。
私達の指定席は、店全体を見渡すことが出来る一番奥。
明るいうちは窓からの陽光が入り、大理石の面に庭の緑が映る。
ワイングラスを置いて、サフランさん風に撮影。
白ワインのお供は、定番のパンのセット。
これが美味いのだ。
一人で来てもこの量が出されるので、これだけでお腹がいっぱいになってしまう。
最初の料理は、牛のカルパッチョ。
この牛肉も、日本産。
昨夜のサーモンと違い、牛のカルパッチョは比較的綺麗に取り分けることができた。
赤ワインを選んでいると、彼女が昨夜と同じワインを飲みたいと言う。
飲み物担当のタオさんに聞いてみると、最後の1本がありますとのこと。
イタリア、ピエモンテ州のマッソリーノが造る、ランゲ・ネッビオーロ、2014年。
マッソリーノは高品質のバローロで有名な造り手。
このネッビオーロは本当に美味い。
使われているぶどうは、バローロの畑のぶどうなのだ。
次の皿は、帆立。
これも北海道産。
バンコクでは帆立は高級食材として人気がある。
でも、バンコクで食べると驚くほど高価。
タオさんが真剣な表情で黒胡椒を掛けてくれる。
このカウンターはとても高く幅があるので、彼女はつま先立ちになり思いっきり手を伸ばさないと届かないのだ。
我ながら綺麗に取り分けることができた。
ここに来れば、この料理を頼まないわけにはいかない。
アントニオ家伝統のラムシャンク。
ラム肉を半分そぎ落とし、彼女の皿に。
残った肉が付いた骨は私の皿に。
ペンネのポモドールソースも二等分。
肉を半分そぎ落としても、このヴォリューム。
トロトロに煮込んだラム肉が口の中で溶けてしまうほど美味い。
常連さんには、この一皿だけを食べて帰る人もいるヴォリューム満点の人気メニュー。
外は既に真っ暗。
店内も夜遅くなると、照明が落とされる。
彼女はアイスクリームをデザートに注文。
おや、カウンターの向こうの端に座っているのは、昨夜と同じイタリア人カップル。
彼らもここでしかワインを飲めないので、今夜も連続で来たようだ。
女性が私の視線に気が付き、会釈する。
私も会釈すると、ワイングラスを持ち上げて乾杯の仕草。
彼女も気が付き、「ワイン好きが考えることは同じね」と微笑む。
彼女は、イリーのコーヒー。
私は今夜も、タオさんにカクテルをお願いする。
今夜は、ギムレット。
ジンにライムジュースを少し加えて作る強いカクテルが身体に染みる。
コーヒーを飲み終えると、彼女が「リモンチェッロを飲みたい」と言う。
タオさんの方を見ると、「お店からです」と言って、リモンチェッロを二杯なみなみと注いでくれる。
ダイニング・ルームが暗いので、厨房の窓が明るく浮かび上がっている。
レンブラントの絵画のように美しく感じるのは、酔いのせいだろうか。
スタッフの皆さんに今夜のお礼を述べ、店をあとにする。
今回はアントニオさんに会えなくて残念だったが、彼の温かい配慮のお陰で、飲酒禁止の祝日にもワインを楽しむことができた。
最後の夜なので、街を散策しながらホテルに戻ることにする。
場面はガラッと変わって、スワンナプーム国際空港。
バンコクに来た人のほとんどが写真に撮る、ヴィシヌ神のモニュメント。
30数回目のバンコクの旅も楽しかった。
ラウンジで休んでから、搭乗することにしよう。
来るときは「美女と野獣」と「コング」を観たので、帰りは「ローガン」と「ジョン・ウィック・チャプター2」を観ることに決めている。
日本はバンコクよりも暑そうだ。
彼女と過ごすバンコクでの楽しい休日でした。