代官山の『メゾン ポール・ボキューズ』で開催された『ひらまつ』グループの”パリ祭ディナー”に彼女と共に参加した素敵な夜の続き。
今夜のメニューには、『ひらまつ』の名前と共に、今年がフランス革命から228周年であることがフランス語で書かれている。
そして、絵が面白い。
ドラクロワの「民衆を導く自由の女神」かと思ったら、何ヶ所か原画から描き変えられている。
この原画と見較べると、一目瞭然。
自由の女神が女性シェフとなり、少年が銃ではなくワイングラスを持っている。
そして折り重なる死体の構図は削除されている。
パトモスさん流に言えば、「民衆を旨い料理に導く自由の女神シェフ」である。
魚料理は、穴子と鱸と帆立のムースリーヌのフイユテ、ソース・ショロン。
穴子、鱸、帆立を層状に重ね、パイ包み焼きにした料理。
食べ進むと、スタッフがテーブルを回ってソース・ショロンをたっぷりと注ぎ足してくれる。
レモンの切り身もトリコロールになっている。
鱸のパイ包み焼きは、ポール・ボキューズ氏が『ラ・ピラミッド』のフェルナン・ポワン氏から伝えられた料理で、元々はブールブラン・ソースが使われていた。
これをポール・ボキューズ氏が進化させ、酸味の効いたショロン・ソース(ベアルネーズ・ソースにトマトピューレを加えたもの)を使うようにした。
今夜の入砂料理長の料理は、この伝説的な鱸のパイ包み焼きをアレンジしたものなのだ。
赤ワインは、ボルドー、サンテステフのシャトー・フェラン・セギュール、2008年。
モンローズとカロン・セギュールに隣接するという好立地のシャトー。
サンテステフのクリュ・ブルジョワ・エクセプショネルに格付けされている。
とてもエレガントで繊細なボディ。
熟成を経てタンニンは滑らか。
セパージュは、メルロー50%、カベルネ・ソーヴィニヨン50%。
肉料理は、仔羊のロースト、シャンピニオンのクルート、バジルの香るジュ・ソース。
「肉厚が凄いわね。こんなラム、大好き」と彼女。
彼女はかなりの肉食女子で、ラムの厚みが薄いと機嫌が悪くなる。
ラムはニュージーランド産。
ジュ・ソースは、仔羊の骨とマルサラ酒を煮詰めて作られている。
ディジェスティフは、アルザスのスイート・ワイン。
アルザスで最高ランクと評価される、ドメーヌ・ヴァインバック、キュヴェ・ローランス、ゲヴュルツトラミネール、2009年。
ドメーヌの設立は1612年と古く、1898年に現在のオーナー一族の所有となっている。
濃厚な甘さの中に、果実の熟成感がしっかりと感じられる、繊細で丁寧な造り。
現在は、亡くなった先代オーナーの夫人、コレット女子と長女カトリーヌ(ドメーヌ経営)、次女ローランス(ぶどう栽培、醸造)の女性三人で運営されている。
ぶどう栽培は、ビオディナミ。
デセールは、ピーチメルバ、”メゾン ポール・ボキューズ”風。
これは美味い。
でも、ヴォリュームが半端ではない。
今夜のコーヒーカップはシンプル。
出席者があまりに多いので、何時もの金をあしらったカップは数が足りないようだ。
ミニャルディーズが届く。
入砂料理長のミニャルディーズは、ちょっとしたデセールくらいの量がある。
今夜のパーティーは素晴らしく楽しかった。
同席された方々も皆さんフレンチ好きの素敵な方々で、初対面にもかかわらず、お話しが弾んだ。
先﨑支配人、入砂料理長、竹内シェフ・ソムリエ、石井ソムリエと挨拶を交わし、店をあとにする。
お腹がいっぱいで酔っているときは、夜風に当たりながらの散策が気持ち良い。
「このお店、見なくて良いの?」と私が足を止める。
「どうして私が好きそうなお店だとわかるの?」と彼女。
彼女が着ると似合いそうな素敵なサマードレスがいくつも展示されている。
二人でドレスを選び、彼女の試着姿を眺める。
気が付くと、金曜日の夜は既に深夜。
彼女と過ごす代官山の”フランス革命記念日”の夜は素敵に更けて行きました。