西麻布のフレンチ、『ラ・テール』で彼女と過ごす素敵な夜の続き。
夜も更け、2Fまで吹き抜けの空間を彩るシャンデリアの光が一層明るく輝く。
デセールは、桃。
テーブルには桃とバニラアイスクリームだけが盛られた皿が届いた。
そこに桃の香りのスパークリングが注がれる。
ガンチア、ロミーナ、ピーチ。
イタリア、ピエモンテ州のガンチアが造る、桃の風味のスパークリング・ワイン。
桃の香りと、スパークリングのシュワシュワ感がたまらなく良い。
このデザート皿は斜めになっていて、手で皿を傾けなくてもスパークリング・ワインを最後までスプーンで掬って飲むことができる。
食後のコーヒーは、有田焼のカップで出される。
私のカップはブルー。
彼女のカップは華やか。
プティ・フールは、フランボワーズのマシュマロ。
プティ・フールを食べ終えると、滝沢マネジャーと金子シェフに見送られて店をあとにする。
今夜は新屋シェフは来られていないそうだ。
広尾方向に歩いていると、小さなパン屋さん、『パネッテリア・カワムラ』を見付けた。
もう時間が遅いので残っているパンは少ないが、どれも美味しそう。
数個を購入。
あとでサフランさんに教えていただいたが、人気のパン屋さんなのだそうだ。
外苑西通りに交わる角には、『カフェ・デ・プレ』。
このお店、前身は『ソムリエズ・ハウス』、その前は『ラ・カーヴ・ド・ポール・ボキューズ』、そして更にその前は、『カフェ・デ・プレ』。
長い紆余曲折を経て再開店した懐かしいお店に寄ることにする。
椅子は通りに向かって並べられている。
夜も遅いので、通りには人影もまばら。
外苑西通りに面した側はガラス窓で仕切られているので、道を行き交う多くの車の騒音や排気ガスも店内には流れ込まない。
彼女は、ここの名物のシュークリーム。
「またデザートを食べるの?」と私。
「今夜も結構飲んだから、お酒よりコーヒーを飲みたいの」と彼女。
コーヒーはポットで届くので、ゆっくり時間を掛けて楽しむことが出来る。
私はテキーラ、サウザ・シルバーをロックで。
サウザは1873年創業の名門。
初めてテキーラを名乗ったことから、”テキーラの父”と呼ばれている。
『カフェ・デ・プレ』のメニューの表紙も、店内の絵も、ロートレックの作品、「アンバサドゥールのアリスティード・ブリュアン」。
モンマルトルの伝説の歌手、アリスティード・ブリュアンが、キャバレー『アンバサドゥール』に出演することを伝える石版画のポスター。
『カフェ・デ・プレ』は本当に居心地の良い店だ。
彼女と過ごす、西麻布、広尾の夜は素敵に更けて行きました。