神楽坂の隠れ家イタリアン、『トラットリア・ラ・タルタルギーナ』で彼女と過ごす楽しい夜の続き。
フランチャコルタのあとは、サンジョヴェーゼを飲みたいと彼女が言う。
プーリアを中心としたお店なので、私はプリミティーヴォかネグロ・アマーロでもと思っていたが、彼女の希望に従い、セコンド・シェフでワイン管理を担当する熊谷さんにお薦めをお願いする。
見せてもらった5本のサンジョヴェーゼの中から選んだのは、二人が好きなラ・スピネッタのワイン。
イル・ネーロ・ディ・カサノーヴァ、トスカーナ・サンジョヴェーゼ、2012年。
ピエモンテの著名な造り手、ラ・スピネッタがトスカーナに設立したカサノーヴァ・デッラ・スピネッタのワインである。
アルブレヒト・デューラーの犀のエッチング画のエチケットを見ると、無条件で注文してしまうのだ。
因みに、この絵の原板は大英博物館に収蔵されている。
ラ・スピネッタで二人が一番好きなワインは、バルバレスコ、スタルデリ。
イル・ネーロ・ディ・カサノーヴァはスタルデリと比較にはならないが、しっかりとしたタンニンと酸を持つバランスの良い美味い赤である。
ぶどうはサンジョヴェーゼにコロリーノが少量ブレンドされている。
二皿目のパスタは、今夜のお薦めメニュー。
スパゲッティ、生雲丹のバーリ風。
今日届いた北海道産の雲丹がふんだんに使われている。
雲丹をパスタに混ぜ込んで、二人に取り分ける。
香りが素晴らしく、食べると濃厚な雲丹の旨味が口いっぱいに広がる。
メインは、鴨のロースト。
何時もは北海道産の鴨の胸肉のローストだそうだが、今日は青森で網で捕獲された良い鴨が入荷したとのことで、半身をローストしてもらう。
鴨は銃で捕獲したものは身体に血が回り、体内に入った銃弾の周りからすぐに傷み始めるので不味くなる。
網で捕獲した鴨は状態が良く美味い。
シンプルにローストした鴨に、粗塩と煮詰めたバルサミコを掛けて食べる。
二人に取り分けるのは私の役目。
肉の配置と野菜の盛り方に気を使い、最後にバルサミコを糸状に左右に振って垂らして飾り付け。
素晴らしく美味い。
彼女のドルチェは、フォンダンショコラート・コン・ヴァニーリア。
熱々のチョコレートケーキの中から、チョコレートがとろ~りと溶け出す。
私のドルチェは、トルタ・カプレーゼ。
カプリ島発祥のチョコレートケーキ。
彼女はエスプレッソを、私はカプチーノを注文。
ナポリ直送のコーヒー豆を使用している。
「この絵は私の似顔絵ですか?」と聞くと、描いてくれた女性スタッフが「いいえ、ムーミンです」とのこと。
カプチーノをググッと飲むと、ムーミンが”ムンクの叫び”風の顔になってしまった。
スタッフの皆さんはとても明るく親切で、店は満席で活気があり、南イタリアのトラットリアで食事をしているようだ。
神楽坂の『トラットリア・ラ・タルタルギーナ』で彼女と過ごす、美味しく楽しい夜でした。