先日のこと、二人が大好きなフレンチ、西麻布の『キャーヴ・ド・ひらまつ』でのディナー。
何時もシックな装いのお店も、ハロウィンの飾り付け。
ハロウィンの仮装をして食事に来たわけではないが、飾り付けを見るだけで心が浮き立ってしまう。
エントランスには、小さなジャック・オー・ランタン。
彼女の真っ黒なドレスが素敵だ。
「初めてのドレスだね。ハロウィンに黒のドレスは良く似合うよ」
「着るのは初めてだけど、覚えていないの?バンコクのスクンヴィット通りのアソークにあるブティックで一緒に買ったじゃないの」
むむ、言われて思い出した。
「君が御用達のあのお店だね。また行こうよ」と場を取り繕う。
二階のレセプションに向かう階段にはランタンが置かれ、何時もとは違う雰囲気を醸し出している。
レセプションで支配人や顔馴染みのスタッフに迎えられ、レトロなエレベーターで三階のメイン・ダイニングに進む。
何時ものテーブルに案内され、彼女が着席するのを待って腰を下ろす。
アペリティフで、目と目を合わせ乾杯。
今夜のアペリティフ・メゾンは、”キティ”。
赤ワインと自家製ジンジャエールのカクテル。
ジンジャーの香りが心地よい。
様々な茸のボルドレーズと秋刀魚のタルト仕立て、玉葱のコンポートとトマトのアクセント。
秋刀魚は美味い食材だが、香りが強いのでフレンチに使うには技量が必要。
数種類の茸、玉葱、トマトを上手く使い、秋刀魚を素晴らしいフレンチの一皿に仕上げている。
今夜の白ワインは、ドメーヌ・フランソワ・カリヨン、ブルゴーニュ・ブラン、2012年。
ルフレーヴやソゼと並び称されるピュリニー・モンラッシェの偉大な造り手、ルイ・カリヨンの次男が創設したドメーヌ。
15代目のルイの引退に伴い、2010年に息子のジャックとフランソワ兄弟で畑を分割。
兄のジャックがルイ・カリヨンを継ぎ、弟のフランソワがフランソワ・カリヨンを設立。
ぶどうはビオディナミで栽培され、発酵には自然酵母を用い、全てのワインの発酵、熟成にバリックを使用。
ACブルゴーニュにもピュリニー村のシャルドネを用い、バリックでの熟成期間は10ヶ月。
まず口に含んで驚く。
これがACブルゴーニュ・・・、少し軽めのピュリニー・モンラッシェといった風情。
熟した洋梨のような果実味、引き締まった酸とミネラル、強い熟成感と複雑なストラクチャー。
あまりに美味しいので、グラスで飲んでいたが二人でほぼ一本飲んでしまった。
寒鰆のミ・キュイ、爽やかな茄子のコンポート、花穂紫蘇のブールブランソース。
関西では鰆は文字どおり春の魚。
でも関東では秋の鰆が脂がのって美味いのだ。
西麻布の『キャーヴ・ド・ひらまつ』で彼女と過ごす素敵な夜の続きは、また明日。