
今夜のレストランは、二人が大好きなフレンチ、西麻布の『キャーヴ・ド・ひらまつ』。
何時もの通り白亜の一軒家の前で車を降り、門をくぐる。
緑に囲まれた階段を上り、二階のレセプションに向かう。
階段の途中には、美しい像が置かれている。

何時も素通りして上っていたが、今日は足を止めて像に向き合ってみた。
女性が子供を一人肩に乗せ、もう一人の手を引いている。
周りには、たわわに実ったぶどうの房。
子供を連れているのに、女性の顔はあどけない少女。
母というより、歳の離れた姉かベビーシッターのように見える。
彼女が階段の上で待っているので、急いで残りの段を上る。

レセプションでスタッフの出迎えを受け、三階のダイニングルームに向かう。
レトロなエレベーターもあるが、螺旋階段を上る方が好きだ。
このレストランは一階から四階まであるので、複数階の移動にはやはりエレベーターが便利だ。

テーブルに案内され、着席する。
テーブル上には今夜のセッティングが美しくされている。
おや、今夜はグラスの数が多いということは、ワインの種類も多いということだ。

今夜は珍しく、アペリティフではなく白から始まる。
スゥッド・ウエスト(南西地方)のムーラン・プジーが造る、ベルジュラック・セック、2012年。
「ベルジュラックってどこにあるの?」と彼女。
確かにあまり飲まないAOCかもしれない。
ベルジュラックはスゥッド・ウエストに分類されているが、ボルドーと地続きの産地で、ボルドーの東部、ドルドーニュ川両岸に広がる地域である。
ベルジュラックでは赤が主体であり、白は少ない。
ムーラン・プジーはベルジュラックに50haの畑を有し、今の当主は五代目。

色合いは淡い麦藁色。
口当たりは、甘いアプリコットや蜂蜜のニュアンス。
口中に広がると、爽やかな酸味が現れる。
南西地方産と聞くと濃厚な果実味を想像するが、綺麗なボルドータイプの白である。
セパージュは、ソーヴィニヨン・ブラン80%、セミヨン20%。

アミューズ・ブーシュは、水ナス・加賀太きゅうり・みょうが、味噌とオリーブのタプナード。
二番目の白がもう出される。
今夜は、2012年ヴィンテージのボルドータイプの白、三種類の飲み較べなのだ。
西麻布のフレンチ、『キャーヴ・ド・ひらまつ』で彼女と過ごす素敵な夜の続きは、また明日。