
奈良県の桜井で『ひらまつ』が運営するオーベルジュ、『オーベルジュ・ド・ぷれざんす 桜井』で彼女と過ごす素敵な夜の続き。
シャンパーニュのグラスを飲み干すと、白ワインを抜栓。
『ひらまつ』直輸入の、二人が好きなシャルドネがあったので迷わず選択。
アルフォンス・メロが造る、レ・ペニタン、シャルドネ、2008年。
アルフォンス・メロは、サンセールで16世紀初頭から19代にわたりぶどう栽培とワイン造りを行う名門で、サンセール最大の造り手である。

え、サンセールでシャルドネ?
いえいえ、レ・ペニタンはブルゴーニュのジャンテ・パンシオンとアルフォンス・メロのコラボ・プロジェクトで、サンセールとブルゴーニュの間にあるコトー・シャリトワで造られているのだ。
ピノ・ノワールをジャンテ・パンシオンが、シャルドネをアルフォンス・メロが担当し、出来上がったワインを二人が半分ずつ自分の名前で販売している。
豊かな酸とミネラルを持ち、濃厚な果実味と熟成感が素晴らしいシャルドネである。

届いた前菜を見て、彼女が「可愛い」と思わず声をあげる。
奈良県野菜の田園仕立て、トマトと黒オリーブのタップナード、麹味噌風味。
シェフ自ら農家に出向き、新鮮な野菜を仕入れているのだそうだ。
種類があまりに多いので、どれを食べたかわからなくなる。
そこで彼女の提案により、私がまず食べる野菜を選び、彼女が同じものを食べることにする。

野菜に付けて食べるのは、トマトと黒オリーブのタップナード、ジェノヴェーゼソース、そして塩。
新鮮な野菜の甘みがたまらなく美味しい。

自家製パンと一緒に出されたのは、エシレバター。
大きな塊がそのまま一個出されたのが嬉しい。
フランスのエシレ村で造られるバターは、二人の大好物。
食事の間にすべて食べてしまった。

いよいよ魚料理。
和歌山県産金目鯛のポアレと焼きリゾット、木の芽の香り。
香ばしく焼かれた金目鯛の食感と、スープでほぐして食べる焼きリゾットの食感の組み合わせが絶妙。

魚料理と肉料理の間の口直しは、三輪素麺。
フランス料理に三輪素麺とは驚きだが、オーベルジュがある桜井市は、三輪素麺の故郷なのだ。
地元の食材にこだわるシェフの思い入れの一品である。

気が付くと、山際に夕日が沈みつつある。
オーベルジュの夜はゆっくりと静かに暮れてゆく。
「美味しいフレンチをいただきながら夕日を眺めることができるなんて素敵ね」
「今夜の君はもっと素敵だよ」
『オーベルジュ・ド・ぷれざんす 桜井』の優雅な夜は、まだ続きます。