
『ブラッセリー・ポール・ボキューズ銀座』で彼女と過ごす素敵な夜の続き。
アペリティフの次は、スゥッド・ウエストの白。
ムーラン・プジー、ベルジュラック、セック、2012年。
ドメーヌ・ド・ムーラン・プジーは、ベルジュラックに50haのぶどう畑を所有し、現当主は5代目。
ベルジュラックと聞けば、まず思い出すのはシラノ・ド・ベルジュラック。
ベルジュラックはスゥッド・ウエストに分類されるため、イメージとしては南の産地だが、実際にはボルドーと地続きの産地。
ボルドーの東部、ドルトニュー川の両岸に広がる地域である。

ベルジュラックで生産されるワインの大部分は赤で、白は少ない。
パリ総合農業コンクール2013年での金賞受賞シールが貼られている。
ムーラン・プジーのワインは飲んだことがあるが、このベルジュラック・セックは初めて。

甘い花の香り。
口に含むと最初に甘味を感じるが、口中に広がると切れの良い辛口。
もう少し濃厚なワインをイメージしていたが、綺麗なボルドー・タイプ。
セパージュを聞くと、セミヨン60%、ソーヴィニヨン・ブラン40%。
最初の口当たりはセミヨン由来のようだ。
やはり『ひらまつ』のワインは美味い。
ひらまつワインの責任者、統括ソムリエの日紫喜さんが選ぶワインに間違いはない。

合わせる料理は、香草風味のスズキのグージョネット、バスク風ピペラード添え。
グージョネットは、細長く切った白身魚に小麦粉を付けて揚げたもの。
ピペラードはバスク地方の料理で、パプリカ、タマネギ、トマト、ニンニク等を炒め、唐辛子を加えて煮込んだ料理。

泡、白のあとは、赤。
これもスゥッド・ウエストのワイン。
ドメーヌ・アラン・ブリュモンが造る、マディラン、シャトー・モンテュス、2007年。
ドメーヌ・アラン・ブリュモンは、1979年に父親の畑を継いで創業。
タナ種のワインを世界的に認められるレベルに高め、安い南のワインというイメージを塗り変えた。
このためマディランの皇帝と称されており、フランスの三ツ星レストランのほとんどでオンリストされているそうだ。
父親から継いだシャトー・ブースカッセに新たに購入したシャトー・モンテュス、コート・ド・ガスコーニュを加え、180haの畑を保有している。

タナで造られたワインと聞くと、どうしても南のどんよりとした土臭いワインを想像してしまう。
だがアラン・ブリュモンのワインは、濃厚で力強いだけでなく、洗練されたボディを持っている。
熟したプラムやブラックベリーの芳醇なニュアンスを持ち、タンニンは強いがシルキー。
セパージュは、タナ70%、カベルネ・ソーヴィニヨン20%、カベルネ・フラン10%。
熟成はシュールリー方式で、60%を新樽、40%を一年使用樽で行われている。

木下料理長が合わせる料理は、鶏腿肉のコンフィ、ジュ・ド・ヴィヤンド、焼き野菜とアリゴと一緒に。
ジュ・ド・ヴィヤンドとは、牛肉のソース。
今夜のアリゴは、ジャガイモのピューレにグリエール・チーズを合わせたもの。
シャトー・モンテュスが強いので、普通の鶏料理では負けてしまう。
味の濃い鶏の腿肉にジュ・ド・ヴィヤンドを合わせることにより、ワインに良く合う料理を作りだしている。
銀座の『ブラッセリー・ポール・ボキューズ』で彼女と過ごす楽しい夜は、まだ続きます。