場所は、西麻布の『キャーヴ・ド・ひらまつ』。
素敵な、白亜の一軒家レストランである。
エントランスをくぐり、緩やかな階段を上り、2階のレセプションに向かう。
顔馴染の受付スタッフとソムリエが、「高原様、お待ちしていました」と暖かく迎えてくれる。
レセプション・スタッフの女性が、私たちを3階のメイン・ダイニングにある予約テーブルに案内してくれる。
満席の予約が入っているとのことだが、まだ客の姿はまばら。
あと10分もすると来客でこの部屋が満杯となるのだ。
春の嵐の前の静けさ。
テーブルの上には、今夜の料理とワインが書かれたカルテが置かれている。
「あ、今夜の白はプイィ・フュメなんだ」と彼女。
彼女はロワールのソーヴィニヨン・ブランが好きなのだ。
アペリティフ・メゾン、”桜”。
今夜は桜をテーマとした料理とワインの会。
スパークリング・ワインに桜シロップを加えて作ったアペリティフに、桜の花が浮かべられている。
使われているスパークリング・ワインは、ヴーヴ・アンバルのクレマン・ド・ブルゴーニュ、ミレジム、2013年。
ヴーヴ・アンバルは、アンヴァル未亡人が1898年に設立したクレマン専業のワイナリー。
当時確立されたばかりのシャンパーニュ方式を用いた高品質スパークリングの生産を始め、成功を収めた。
そのミレジムをアペリティフのベースに使うとは、さすが『ひらまつ』。
部屋の片隅のテーブルには、クレマンがいっぱい入れられたワイン・クーラーが置かれている。
このクレマン・ミレジム、もちろんこれだけ飲んでもとても美味い。
『ひらまつグループ』の、ハウス・スパークリングとも言えるワインで、私達も時々飲んでいる。
前菜は、グリンピースのムースと甲殻類のゼリー、桜エビのチュイル。
料理にも、”桜”が付いた食材が使われている。
桜エビのチュイルとは、いわば”えびせん”。
海老の香り、甲殻類の香りが漂う一品である。
横から見ると、グラスの下側にグリーンピースのムースが、そして上側に甲殻類のゼリーが層状にアレンジされており、とても美しい。
グラスが大きいので、ヴォリュームもたっぷり。
二人とも甲殻類が好きなので、嬉しいアミューズ。
でも、甲殻類アレルギーの人には危険な食べ物だ。
もちろんお店では予約時にアレルギーや嫌いな食材について聞かれるので、甲殻類アレルギーの人には別メニューが提供される。
私たちはこの質問を受けることは無い。
何故なら、このお店は私達の好みや嫌いな食材を熟知しているからだ。
西麻布の『キャーヴ・ド・ひらまつ』で彼女と過ごす楽しい夜の続きは、また次回。