今夜は、シチリアの大好きなドンナフガータのフラッグシップ、ミッレ・エ・ウナ・ノッテ、2008年を抜栓。
以前、白金台のイタリアンのお店を借り切って、「ドンナフガータを飲み尽くす会」を二晩にわたって開催したことがある。
第一回目の開催日の直前が3.11だったため、延期して開催したことを覚えている。
私は、3.11の16時30分成田空港着のANAで、バンコク経由コルカタから帰国する予定だった。
成田空港への着陸寸前に、何故か搭乗機は再度高度を上げ、結局関西空港に着陸してしまった。
3.11は寒かった。
コルカタ帰りで、成田空港には迎えの車が来ていたので、麻のスーツだけという軽装だった。
大阪までは移動したものの、新幹線は止まり、ホテルは満室で、東北の被災者の方々に比べればたいしたことはないものの、寒い夜に震えたことを思い出す。
東京に戻るとすぐにワイン会を延期し、ミネラルウォーターや食料品の調達に苦労する東京を離れ、ロサンゼルスに飛んだ。
そういえば、阪神淡路大震災の日は始発の東京発ののぞみに乗車したが、名古屋で止まってしまい、何故止まったか情報が無い中で、大阪にも行けず、東京にも戻れず、大変な経験をしたことを思い出した。
9.11の時は、翌朝の便でウィーンに飛んだ。
機内でNYの国際貿易センタービルに飛行機が突っ込むニュース映像を繰り返し見せられた上、ウィーンの空港に着くと「テロのリスクを避けるため、至急帰国されたし」とのメッセージを受け取った。
しかし「飛行機に乗る方がよほどリスクが高いと判断する」と返信し、しばらくウィーンに滞在した。
関係の無い話が長くなったが、ドンナフガータの名前には深い意味が込められている。
「逃避する女」という意味で、1800年代初頭にナポレオン軍の来襲を恐れてブルボン家のフェルディナンド4世の妻、ハプスブルグ家のマリア・カロリーナ王妃がナポリの宮廷からシチリアの、今ではドンナフガータのワイナリーのある場所に逃避してきたことに由来している。
ワイナリーの名前に加え、トレードマークもこの歴史に因み、「髪を風にたなびかせた女」となっている。
ミッレ・エ・ウナ・ノッテは、文字通り「千一夜物語」だが、エチケットに描かれた宮殿は、マリア・カロリーナが逃避したサンタ・マルゲリータ・ベリーチェである。
ドンナフガータのワインの中には、「千夜一夜物語」の主人公、シエラザーデの名前を冠したワインもある。
シエラザーデのご紹介は、以前(2015.04.17)にしたことがあるので、良ければ参照願いたい。
コルクの長さは十分であり、状態はとても良い。
使用されているぶどうは、シチリアの偉大な赤を生み出すネロ・ダヴォラ90%で、残り10%はその他の土着品種である。
以前はネロ・ダヴォラと言うと、重くて洗練されないどんよりとした赤のイメージだった。
最近のネロ・ダヴォラはとても上質の赤ワインとなっているが、このミッレ・エ・ウナ・ノッテは非常に洗練されている。
樽が効いているが重過ぎず、ぶどうの豊かな果実味と熟成感を持っている。
7年の熟成を経てタンニンも強いながら滑らか。
新樽のフレンチ・バリックで14~16ヶ月熟成させた後に瓶詰し、12ヶ月の瓶内熟成を経てリリースされている。
今夜も美味しい、お家ワインでした。