選んだお店は二人が大好きな、『シルベラード』。
並木通りの店に待ち合わせ時間より少し早く着き、先にワインを選んでおくことにする。
店があるクリスタルビルは、白亜の素敵な建物。
このエントランスの前に立つと、それだけで胸が高揚する。
このドア、思わず手で押し開けたくなるが、実は自動ドアで左右に開くのも意外感があって面白い。
エレベーターホールでは、美しい生花が迎えてくれる。
百合の香りが気持ち良い。
ここは、彼女が一人で来ることができる、数少ない店のひとつ。
たいていの店は何度行っても場所を覚えないので、どこかわかりやすい場所で待ち合わせ、揃って店に行くことにしている。
「貴方としか行かないのだから、店の場所を覚える必要はないでしょ」と言われると、決して悪い気はしない。
彼女が到着する前に、今夜のワインと料理を検分する。
支配人の声で、彼女が到着したことを知る。
席を立ち、彼女を迎える。
長い脚を交互にまっすぐ前に繰り出し、私に向かってくる彼女を見るのが好きだ。
さっそく最初のワインを出してもらう。
イタリアのスプマンテ、ダブル・ファランギーナ・メトード・クラッシコ。
カンパーニャ州を代表する造り手、フェウディ・ディ・サン・グレゴリオと、シャンパーニュの寵児、ドメーヌ・ジャック・セロスのコラボで造られた最高のスプマンテなのだ。
細かで勢いのよい泡立ち。
ぶどうはカンパーニャの地ぶどう、ファランギーナ。
実は彼女は、ジャック・セロスはあまりに辛口で味わいが足りないと、好きではないのだ。
でも、このスプマンテはコクがあってキレがあり、美味しいとの評価。
彼女が気に入って、ほっとする。
私のセラーには、既に1本入っているのだ。
しびとは、マグロの成魚の別名。
パンもスプマンテに良く合う。
私たちのテーブルに置かれるエクストラヴァージンオリーブオイルには、私の好みに合わせてバルサミコが入れられている。
さて、彼女と過ごす銀座の楽しい夜の続きは、また明日。