彼女と一緒に楽しんだバンコク旅行から、もうひと月余りが過ぎた。
「久し振りに、タイ料理を食べにいこうよ」と彼女を誘う。
待ち合わせ場所は大好きなお店、丸ビルの35階にある『マンゴツリー東京』。
今夜も私が先に着き、何時ものテーブルで彼女を待つ。
”リザーヴド”を書かれた紙を背負った象の置物が、私達のテーブルを守ってくれている。
遅れてくる彼女は、店の入り口の回廊を進み、左に折れると、店内のこの長い通路を私に向かって歩いてくることになる。
彼女の到着を支配人から告げられると、席を立ち、私に向かって歩いてくる彼女を迎える。
長い脚を交互に前に繰り出しながら、私を真っ直ぐに見据えて歩を進める彼女を眺めるのが好きだ。
そして今夜も彼女の姿を認め、胃がキュッと引き締まる。
何時まで経っても、この緊張感から逃れることができず、そしてそれを嬉しく思う。
最初のワインは、フランス、ラングドック・ルーションのシャルドネ。
ラルシェ、キュヴェ・ボワゼ、シャルドネ、2011年。
実はこのワイン、初めて飲むもので、どんな造り手のどんなシャルドネなのか知らない。
ラングドック・ルーションのシャルドネと聞き、面白いので試してみることにしたのだ。
顔を近付けると、結構アルコール感がある。
口に含むと、強い熟成感を持ち、果実味は抑え気味。
酸は少ないが、乾草のような熟成香と複雑なニュアンス。
これはなかなかのシャルドネである。
しかも、彼女の好みの味わい。
でも、彼女の美意識から見ると、アルコール感がちょっと強いようだ。
一度メニューから消えたが、それでも特別に作ってもらっていた。
そして彼女の願いが通じ、メニューに復活したのだ。
スイートチリやレモンハニーも美味いが、私達の好みはニョクマムとタイ醤油。
このソースも特別に出してもらい、調合して楽しむ。
大きなボウルにたっぷり出してもらう。
貴方が盛り付けると本当に美味しそう、と言われて嬉しくなる。
チリソースとタイ醤油で濃い目の味付けだが、柔らかな蟹が美味い。
さて、白を飲み干してしまったので抜栓しておいた赤を出してもらおう。
楽しい夜の続きは、また明日。