素敵なバーがあるので行ってみようということになった。
タクシーは、港に向かって暗い夜道をどんどん進む。
ちょっと、不安。
下ろされた場所は埠頭の先。
暗い波止場の道に面して、『サイレンス・バー』の灯りがぽつりとひとつ。
店の裏の暗がりには、貨物船が錨をおろしている。
長いカウンターには、客がずらりと並んでいる。
そして壁には、素晴らしいスピリッツがぎっしり。
事前に電話を入れておいたので、カウンターの真ん中に空席が二つ。
さっそく、大好きなアイランズ・モルトを注文する。
スカイ島のシングル・モルト、タリスカー、北緯57度。
醸造所が北緯57度にあることから造られた、アルコール度数57%のモルトなのだ。
店のオーナーとのウィスキー談話も楽しい。
それにしても、こんなお店があるとは、丸亀は凄い。
これは讃岐の名物。
ロンドン駐在歴のある友人が選んだウィスキーは、アズ・ウイ・ゲット・イット。
カスク出しそのままのシングル・カスク・ウィスキーで、色々な産地の物がある。
さすが友人は、スコッチに強い。
マル島のトバモリー。
トバモリーはマル島唯一の蒸留所である。
このモルトはライト・ピートなので、アイラ・モルトやアイランズ・モルトの中では、唯一ヨード香がしないすっきりとしたモルト。
今では珍しい、キャンベルタウン・モルトのスプリングバンク。
昔ながらの製法にこだわり、大麦の発芽から瓶詰めまで一貫して蒸留所内で行っている、唯一の蒸留所なのだ。
私がワインやウイスキーを嗜むようになったのは、イギリスの詩人、コリン・ウイルソンの著書、「わが酒の賛歌(うた) 《文学・音楽・そしてワインの旅》」を読んでからである。
私にとって聖書とも言えるこの本の中で、コリン・ウイルソンが最も飲んだというのが、スプリングバンクなのだ。
若い頃、手に入りにくいスプリングバンクを捜し歩いたことを思い出す。
丸亀で見付けた素晴らしいバーで友人と過ごす、楽しい夜でした。