これがラットハウス、つまり市庁舎。
大きな彫像が水盤の上に立ち、手を差し伸べる。
ハンザ同盟の中心地であり、富を誇った都の歴史を感じさせる。
何かと近付いてみると、それは日本の震災復興を祈る展示。
寄せ書きもいっぱい張り出されている。
予想もしなかった、ハンブルクでの日本復興への暖かい想い。
感激のあまり数限りないパネルを一枚一枚見て歩き、目のあったドイツ人にダンケとつぶやき、優しい笑みを返してもらう。
以前はラットヴァインケラーという店だったが、今ではパーラメントという名に変わっている。
地下では色々な方向に通路が伸び、その先に何があるのかと思ってしまう。
きっと深夜になり明かりが消えると、別の世界の住人が繰り出してきて、賑やかになるのだろう。
今夜もフランケン地方のヴュルツブルグにある、ヴァイングート・アム・シュタインのシルヴァーナ。
エチケットの上には、ワイン生産者の物と思われる指紋のシールが貼られている。
これだからフランケンのワインは大好きなのです。
西瓜をグリルするとどうなるのか不安だったが、熟す前の西瓜のグリルはなかなか美味しい。
今夜も、ピノ・ノワールを選ぶ。
プファルツ地方のクニプザーが造る、ブラウアー・シュペートブルグンダー、2008年。
クニプザーは有名なピノ・ノワールの生産者で、人気が高く、日本では手に入りにくいワイン。
面白いのは、ピノ・ノワールのドイツ名は、ブラウアー(またはブラウ)ブルグンダーか、シュペートブルグンダーだが、このエチケットにはブラウアー・シュペートブルグンダーと表記されている。
とにかくレストラン内が暗いので、写真がボケてしまった。
色合いは濃く、濃厚な果実香とまろやかで強いタンニンを持つ。
今回の旅での最大の発見は、思っていた以上にドイツの赤の品質が上がっていること。
以前は硬いタンニンばかり際立っていたが、今ではぶどうの栽培技術が向上し、樽熟成と相まって素晴らしいボディを造り上げている。
これはワインとの相性抜群で美味い。
しかし、量が半端でない。
飲み過ぎとは思いながら、あまりの美味しさに店で一番高価な赤を頼んでしまう。
同じくクニプザーが造る、キュヴェX、2007年。
もちろん、ぶどうはシュペートブルグンダー。
クニプザーの最高のキュヴェだと思われるが、その自信がこのエチケットにも表れている。
重く強く、複雑なぶどうのニュアンスさえも感じる。
ドイツは白が美味く赤はいまいち、という概念を根底から覆す素晴らしいピノ・ノワール。
なんとかこのワインを買って帰りたいと思ったが、結局街のワイン・ショップでは手に入らなかった。
別のブランドは手に入れたので、それはまたご紹介する。
賑やかな話し声がホールにこだまする。
ラットハウスを出ると、ラットハウス・マルクト(市庁舎広場)には明かりが煌々と輝く。
やはりドイツは日本人に合うのかもしれない。
また訪れることを心に近い、最後の夜に別れを告げました。