でも、このまま帰りたくない。
彼女も同じ思いのはず。
手を取ると、ミッドタウン方向に歩を進める。
45階でエレベーターを降り、『リッツカールトン東京』の『タワーズ・グリル』に席を取る。
この時間だと、他に客はもうほとんど居ない。
もう充分に飲んできたが、六本木の夜を締めくくるワインを一本、飲むことにする。
そこで、良く冷えたシャルドネをお願いする。
シチリアの、プラネタ・シャルドネ、2008年。
二人が好きなワインである。
濃厚な果実味と深い熟成感。
彼女との熱い夜を過ごすのに、最適なシャルドネ。
このシャルドネで、プラネタや一躍世界で注目されるワイナリーとなった。
コルクに刻印されたプラネタの文字が、普通とは異なり、円周方向に並んでいる。
お腹はいっぱいだが、ちょっとフォルマッジオがあると、嬉しい。
眼下には、迫りくる夜の帳に一人抗うように、東京タワーが輝く。
彼女と過ごす、天上の楽園でのひとときでした。