英語の勉強を兼ねて、久し振りに友人達と六本木の『57(フィフティセヴン)』に行く。
階段を下りるにつれ、六本木の喧騒が背中に遠のき、ニューヨークが近付く。
そう、『57』はニューヨークの57thストリートから取った名前。
静かに流れるジャズの中に、客の英語の会話が心地よく耳に響く。
ダイニング・ルームの真ん中には大きな生花、バー・コーナーとの仕切りは、大きなワイン・セラー。
ワインで乾杯する前に、ペリエで喉を潤す。
でも、ペリエを飲んでしまうと、スパークリング・ワインを選びにくなる
ワイン・リストを片手に、お店の人とワインの相談。
お店の人との会話も、全て英語。
そして料理も、カリフォルニアとチャコール・グリル。
最初の一本は、ワシントン州のウォーターブルック・ワイナリーが造る、コロンビア・ヴァレー、ソーヴィニヨン・ブラン、2007年。
ォーターブルック・ワイナリーは、1984年に設立された、ワシントン州を代表するワイナリーのひとつ。
コスト・パーフォーマンス抜群の高品質ワイン造りで有名である。
自然なぶどうの果実味を大切にした、爽やかなハーブの香りを持つワイン。
樽を用いず、抑え気味の熟成感も心地よく、少し強めに冷やして飲めば、夏の夜のスターターとして最適な一本。
私の前菜は、無花果と山羊のチーズにバルサミコの香りをのせて。
キリカヌーン・ワインズのザ・ラッキー・シラーズ、2007年。
キリカヌーンは今ではオーストラリアを代表するワイナリーのひとつ。
オーナーのネイスン・ワックス氏とは、以前夕食を共にしたことがある。
ロンドン出身で、シドニー交響楽団のチェロ首席奏者でもあり、静かで控えめな語り口の紳士。
でも、話しがワインに及ぶと途端に言葉に熱を帯び、ワイン造りへの情熱を肌身に感じることができた一晩だった。
ザ・ラッキーは、キリカヌーンのフラッグシップ、キラーマンズ・ラン・シラーズのセカンド的位置づけのワイン。
それでも、このワインは素晴らし出来栄えなのだ。
なにしろ、パーカー・ポイント95点と言うモンスター・ワインなのだ。
ザ・ラッキーとは、下男という意味。
良い仕事をしているのに給料は安い、つまりコスト・パフォーマンスが良いと言うユーモアを込めた命名なのだ。
二皿目は、ミックスベビーサラダ、オレンジとラズベリーのヴィネグレット。
話が弾み、あっという間に二本目も飲んでしまった。
そこで、三本目には再びワシントン州のワインを選ぶ。
チャールズ・スミス・ワインズの、ザ・ヴェルヴェット・デヴィル・メルロー、2009年。
チャールズ・ズミスは、ケイ・ヴィントナーズのオーナー兼ワイン・メーカー。
ケイ・ヴィントナーズは、奇抜なエチケットと、コスト・パフォーマンスの良さで有名。
メルローは、ヴェルヴェットのように滑らかなワインと言われている。
このヴェルヴェット・デヴィルは、滑らかさの中に、力強さを併せ持つ素晴らしいメルロー。
まさに、ヴェルヴェットの衣をまとったデヴィルなのだ。
発酵はステンレス・タンクを用い、フレンチ・オ-クの樽で10カ月熟成させている。
新樽比率は、40%。
メインは、ヘーゼルナッツをまぶした骨付き仔羊肉のロースト、ローズマリーソース。
レアで焼いてもらい、骨を持ってかぶりつくと、ジューシーな肉汁が口に溢れだす。
ニューヨークで食べるケーキよりも小さめなのが嬉しい。
気が付くと、もう夜も更けてしまっている。
次回は彼女と、バーで食前酒を飲んでからダイニング・ルームに移ることにしよう。
友人達と過ごす、楽しい六本木の夜でした。