シンガポールから帰ってきてまだ日が浅いが、もうマッド・クラブを食べたくなった。
早速彼女を誘って、品川の『シンガポール・シーフード・リパブリック』に向かう。
暖かくなったので、テラスのドアを開け放し、自然の風を呼び込む。
時間が早い今は人影もまばらだが、陽が落ちればテラス席も恋人たちで埋まってしまうのだろう。
最初のワインは、サイクルズ・グラディエーターのピノグリージョ、2008年。
カリフォルニアのワインだが、エチケットの絵は、フランスの良き時代、ベル・エポックを代表する画家、G・マシアの作品。
グラディエーター(剣闘士)と言いながら、図柄は自転車と妖精。
これは、パリにあった「サイクルズ・クラディエーター」という名の自転車会社の宣伝ポスターなのだ。
自転車は、ベル・エポックを象徴する発明品であり、女性に移動手段を与えたことにより、女性の社会進出が一挙に進んだ。
さらに、自転車に乗れるように、女性の服装革命をも引き起こしたのだ。
グラスに注ぐと、薄いグリーンの爽やかなボディ。
そして華やかな花の香りも感じる。
キレの良いピノ・グリージョのボディに華やかさを加えるため、リースリングが配合されているのだ。
料理は、フレッシュ・マンゴーと鴨のサラダ、海老の黄金揚げ、空芯菜のソテーなど、好きなものを次々と頼む。
メインは、もちろんマッド・クラブ。
店に入った時に、入り口の生簀の中から、一番大きく元気の良いものを選んでおいた。
今夜は、ブラック・ペッパーで仕上げてもらう。
口の中はペッパーでヒリヒリするが、ぎっしりと詰まったプリプリの身が美味い。
仕上げの赤は、オ-ストラリアのローズマウント、ダイヤモンド・シラーズ、2007年。
強いボディに滑らかなタンニン、甘みさえ感じる深みを持ち、余韻は柔らかい。
日本に居ることを忘れさせるコロニアル様式の一軒家、そして美味い南国料理と素敵なワイン、これだから『シンガポール・シーフード・リパブリック』は楽しいのです。


