昨年末の忘年会でのことである。
会の代表者が、驚くような日本酒を持参してくれた。
何と、一升瓶一本で、五万円もする日本酒である。
ワインだと、ヴィンテージ物となると、一本数十万円するボトルもあるし、焼酎にも最近は一万円を超えるプレミアム物が売られている。
しかし、日本酒は基本的にフレッシュな内に飲むものであり、いわばヌーボーとして楽しむのが常であった。
ところが、最近では古酒が販売されており、従って価格も高いものが出回っている。
それにしても、五万円とは驚くべき価格である。
その酒は、石川県の菊姫酒造が造る、菊理媛(くくりひめ)である。
素晴らしい吟醸酒の醸造元として有名な菊姫が、さらに10年の歳月を掛けて磨きあげた10年古酒。
菊理媛とは、「菊姫の中の菊姫」の意味で名付けられたとのことで、白山神社に祀られる神の名前を冠したもの。
それを、会場の『蛇の市本店』(日本橋)に持ち込んで味わうことに。
『蛇の市本店』は日本橋で100年以上の歴史を持つ老舗。
名前も、創業者の市さんが、何時も蛇の目傘をさしていたことから、志賀直哉が命名したという由緒正しきもの。
濃い色合いだが、古酒の臭みも旨味の減退もなく、ほのかな醸造香がかぐわしい。
ひねたところの全く無い、重厚な中にもすっきりとした切れ味。
これぞ日本酒の極みと言って良いのだろう。
何時もはワインばかり飲んでいるが、こんな日本酒に出会うと、やはり日本に生れて良かったと思う。
そんな楽しい忘年会でした。
追伸、 写真は川越の五百羅漢の中にある、酒を酌み交わす羅漢像です。古の時代から、みんな日本酒が好きなのですね。