彼女を誘って、彼女が行ったことのないワイン・バーへ行くことにした。
ブルゴーニュの好きな彼女のために、特に選んだ店である。
有楽町で待ち合わせ、車で西麻布に向かう。
ただ、問題が一つあった。
今夜のお店、『ル・キャビスト』(西麻布)は、19時開店なのだ。
彼女も私もどちらかというと朝型で、夜はあまり遅くなりたくない。
どこの店に行くのも一番乗りで、混み始めるころには店を後にすることが多い。
今夜も早く来すぎたので、西麻布交差点を少し過ぎた六本木通りで車を降りると、手をつないで店に向かってゆっくりと歩くことにした。
冬の夕方はもう夜の気配。
冷たいそよ風が気持ちよい。
店に着くと、カウンターに席を取り、今夜のワインを選ぶ。
『ル・キャビスト』とは、ワインカーヴの番人のことである。
店の中には大きなセラーが二つもあり、素晴らしいブルゴーニュ・ワインが数多く眠っている。
白は、彼女が好きなソーヴィニヨン・ブランを選ぶ。
造り手も彼女のお気に入りの、アンリ・ブルジョア。
選んだワインは、アンリ・ブルジョア、サンセール・ラ・ブルジョアーズ、2004年。
アンリ・ブルジョアは、サンセールで10代、300年以上にわたってワインを造り続けている名門。
ソーヴィニヨン・ブランの特徴を生かした、華やかでミネラルに富み、キリリと締まった素晴らしいサンセールである。
料理は、プロシュートのサラダ、トリッパとキノコのソテーを合わせる。
そして、パスタはイタリア産カラスミのアーリオオーリオ。
パスタが出されるのに合わせ、店長が選んででくれたブルゴーニュ・ワインがグラスに注がれる。
アラン・ビュルゲの、ジュヴレ・シャンベルタン、メ・ファヴォリット、ヴィエーユ・ヴィーニュ、2001年である。
メ・ファヴォリットとは、私のお気に入りとの意味。
また、ヴィエーユ・ヴィーニュは樹齢50年以上の古木のぶどうから造られたことを示す。
ピノ・ノワールには、鴨胸肉のローストを合わせる。
アラン・ビュルゲは25年前から有機栽培に取り組んでいる。
新樽比率は50%から80%と高い。
ぶどうの凝縮感に富み、ヴィエーユ・ヴィーニュらしく力強く、そして滑らか。
彼女も、アラン・ビュルゲには大満足。
初めて飲むアラン・ビュルゲ。
『番人』のお陰で新たな素晴らしい造り手に出会えた、忘れ得ない夜となりました。