だいぶ以前、香港に出張した時のことだ。
受入先の会社の社長が、毎日中華料理を食べに連れて行ってくれた。
私は五晩続けての中華料理で、少々食傷気味。
ところが最終日、その社長曰く、「今回の貴方の訪問に当たっては、毎晩異なる料理を食べに行くよう気を使いました。どこの料理が気に入りましたか?」。
よく聞くと、広東、北京、四川、福建、潮州の五つの料理を食べに連れて行ってくれたとのことである。
日本料理だと、会席料理、鮨、天麩羅、すき焼き、チャンコと五晩続けても、料理ははっきり異なり、飽きることがない。
会席と鮨が似ているなら、代わりに鉄板焼きを入れても良い。
しかし中華料理だと、確かに食材も調理法もバラエティに富んではいるが、ある一定の料理の幅に収まってしまっている。
一方で、中華料理について不思議なことがある。
中国に来るたびに思うのだが、毎日お腹一杯食べても、太らないのだ。
しかも、肌がスベスベになる。
これは、不良長寿を追い求めた、中国四千年の歴史の重みなのかもしれない。
ということで、今夜は少し変わった地方のものを食べに行こうということになった。
雲南料理、東北料理、湖北料理、そして蛙専門店と、色々な店がある。
結局選んだのは、どちらかというとメジャーな潮州料理、『梧桐小鎭』。
ここも開店と同時にどっと予約客が入店し、あっという間に満席に。
まずは前菜として、野菜(おそらくまたたび)のお浸しと、きゅうりのピリ辛漬けを注文する。
中華料理は、日本語に訳しにくい。
そのまま記載しようと思っても、ワープロには該当する漢字が無い。
そこで、適当に料理に名前を付けて紹介する。
野菜のお浸しに添えられた、カリカリに揚げた根菜との組み合わせが絶妙。
きゅうりは、単にラー油を掛けただけではなく、きゅうりそのものに辛子みそのような深い味付けがしてある。
そして、蟹の卵の白身和え。
フワフワの白身卵と、蟹の卵の歯ごたえのコントラストが素晴らしい。
あっさりとした薄味が素材の良さを引き立てる。
そして、料理に合わせて飲んでいるのが、またまた中国ワイン、ダイナスティ(王朝)、カベルネ・ソーヴィニヨン、1994年。
最後の夜なので高いワインを注文したら、筒のケースに入って出てきた。
それを見て絶句。
昨年、上海ガニの高級店で同じものを頼んだが完全にブショネで、お金を無駄にした悪い記憶が蘇ったのだ。
中国では、ブショネとクレームしても、認められることはまず無い。
恐る恐る飲んでみると、これが当たり。
ケースにフル・ボディと書いているが、中身は綺麗なミディアム・ボディ。
カベルネの香りを良く保ち、タンニンこそ既に落ちかかっているが、バランスの良いワイン。
今回の旅行では最高のワインを飲むことができて満足。
ピリ辛でとても美味い。
コールド・ストーンのアイスクリームは、やはり世界共通の美味でした。