ドンナフガータ | ワインは素敵な恋の道しるべ

ワインは素敵な恋の道しるべ

白ワインは天使の如く貴方の心を解き放ち、赤ワインの真紅のグラスの底には悪魔が潜む。そして貴方は天使の如く大胆に、悪魔の如く繊細に、新たな恋の道を歩み始める。


「ドンナフガータの意味、まだ話していなかったね」


「ドンナフガータって、タンクレディを造っているシチリアのワイナリーでしょ。でも、本当に変わった名前ね」


「ドンナフガータは、”逃げた女”という意味なんだよ」


それは19世紀のことでした。


ナポリに居を構えるブルボン王朝のフレデリコ4世の妻、マリア・カロリーナ王妃がナポリを逃れ、今のドンナフガータがある場所に来ました。


シチリアの人々がこの”逃げてきた女”を暖かく迎えたことから、この地にできたワイナリーの名前をこの史実に因んで、ドンナフガータと名付けたのです。


「ヨーロッパのワインは歴史を受け継いでいるのね。 今夜のワインも飲むのが楽しくなってきました」


ワインは素敵な恋の道しるべ
今夜のワインは、ミッレ・エ・ウナ・ノッテ
、2005年。


ドンナフガータを代表するワインで、イタリアでも最高の賞を受賞するなど、高い評価を得ている。


使われているぶどうは、シチリアの地ぶどうであるネーロ・ダーヴォラが大部分を占め、若干の他の地ぶどうが混ぜられている。


ミッレ・エ・ウナ・ノッテとは千夜一夜という意味で、見るからに幻想的なエチケットである。


このエチケットは、シチリアのサンタ・マルゲリータ・ディ・ベリーチェの宮殿を描いたもので、王妃がナポリから逃亡する際に、身を隠したと伝えられている。


「綺麗なエチケットでしょ。見るだけで楽しくなるよね」


ぶどうの凝縮感が強いフルボディでありながら、樽を利かせ過ぎた厭味が無く、本当に洗練された素晴らしいワインである。


今夜、彼女と二人でミッレ・エ・ウナ・ノッテを楽しんでいる場所は、並木通りに面した白亜のビルの8階。


窓から見下ろすと、並木通りのイルミネーションが美しく輝いている。


そして、ワイン・グラスを傾ける彼女の顔は、より美しく輝いている。


『シルヴァーナ』(銀座)は、何時来ても二人の夜を美しく演出してくれる。


美しく装飾が施されたビルのエントランスに一歩足を踏み入れた時から、物語は始まる。


それは、彼女と私の素敵な千夜一夜物語。