ピエディ・ロッソとは、イタリア語で”赤い足”の意味。
それは、ぶどうの名前でもあるのです。
イタリアのカンパーニャ州には、ラクリマ・クリスティという美しい名前のワインがあります。
ラクリマ・クリスティ、「キリストの涙」という名前のワインには、面白い由来があるのです。
その昔、神によって天国から追放された大天使、サターンは、天国の土地を一部持ち去り、逃げ出しました。
その途中、サターンは盗んだ土地を地上に落としてしまい、その場所にナポリの街ができました。
ナポリの人達は、悪徳の限りを尽くしました。
その悲惨な様子を天上から眺めたキリストは、悲しみのあまり、涙を流します。
その涙が落ちたヴェスヴィオ火山の麓にぶどうの樹が生えてきて、素晴らしいワインが生まれたのです。
ラクリマ・クリスティは、ピエディ・ロッソに、アリアニコというぶどうを加え、造られています。
ラクリマ・クリスティには白と赤の両方があります。
赤はミディアム・ボディで、すっきりとした、しかししっかりとしたワインですので、一本目に飲むワインとして、白の代わりに飲んでいます。
『サラ・フェッラーリ』(六本木)に彼女を初めて連れて行った時には、スプマンテのフェッラーリではあまりに普通すぎるので、最初の一本としてラクリマ・クリスティを注文しました。
ラクリマ・クリスティ、ヴェスヴィオ火山とナポリ湾の景色を思い浮かべながら飲む、名前もボディも洗練された、美しいワインです。
ところで、ピエディ・ロッソとは赤い足のことですよね。
普通、赤い足とは鴨の足のことを表現します。
京都には”鴨足”という姓がありますが、読み方は”かもあし”ではなく、”もみじ”です。
ところが中国では銀杏のことを、”ヤーチャオ”、つまり”鴨の足”と呼ぶそうです。
銀杏は黄色ですが、形が似ているのでこう表現するのだそうだす。
余談ですが、韓国では銀杏は”ウネン”と発音します。
これは、銀行(ウネン)と同じ発音なのです。
お金のイメ-ジは金色=黄色ですよね。
ピエディ・ロッソが鴨の足になり、鴨の足が銀杏になり、銀杏が銀行になってしまいました。
言葉って、面白いですよね。