再び007の登場です。
ジェームズ・ボンド(ピアース・ブロスナン)の相手役は、クリスマス・ジョーンズ(デニス・リチャーズ)でした。私はエレクトラ・キング、つまりソフィー・マルソーの方が好みですが、彼女はボスフォラスに浮かぶクズ塔でジェームズにあっさりと殺されてしまいます。
トルコの英語名は、ターキー(Turkey)、つまり七面鳥です。そこで、トルコには”We are not turkey in Xmas”という冗談があります。
ジェームズが最後のシーンでクリスマスを抱きしめ、”Christmas in Turkey”と囁きますが、これはこの冗談を逆さにしたものです。この一言のために、ボンド・ガールの名前をわざわざクリスマスにしたのでしょうか?
ところで、Turkeyという言葉には、七面鳥の他に、俗語で”失敗作の映画”という意味もあります!
ジェームズがクリスマスを抱くときには、どんなワインを飲んでいたのでしょうか?まず間違いなく、ボランジェ・ラ・グランダネでしょうね。
でも、トルコにも素晴らしいワインがあるのです。
え、何ですって?トルコはイスラム国家ではないのかですって?
そのとおり、イスラム圏に属します。しかし1924年、ケマル・パシャ・アタチュルクがトルコ共和国を建国したとき、政教分離を国是としたのです。そのためかどうか知りませんが、トルコの人はワインを良く飲みます。
トルコのぶどう作付面積は世界第四位ですが、大部分が食用に消費され、ワインに使われるのはごく一部です。それでも、なかなか良いワインが生産されているのです。
使われるぶどうは、地ぶどうでは白ではナーリンジェ、エミル、サルターナ、赤ではボガズケレ、オキュズギョズ等が使われ、それ以外は白のセミヨン、赤ではメルローやガメイが使われています。
日本でも、美味いトルコ料理とトルコ・ワインを味わえる店があります。私が好きなのは、『ソフラ』(神楽坂)です。ソフラとは背の低い食卓(いわゆる座卓)のことで、暖かい家族団欒の場所を指します。
そうです、トルコ文化は、日本とよく似ているのです。
『ソフラ』の素晴らしさはもう一つあります。夜八時になると始まる、ベリー・ダンスの質の高さです。私は本場イスタンブールで、数え切れないほどベリー・ダンスを観ましたが、そのどこよりもトルコ人ダンサーの質が高いのです。
カッパドキア・ワイン
フロアに出て美しいベリー・ダンサーと踊り、縦に折った千円札をチップとしてダンサーのブラに挿むのがエチケットです。
心配そうに見つめる彼女の視線を意識しながら、敢えてダンサーと身体を合わせて踊り、ブラに深くチップを差し込めば、彼女の心は千々に乱れます。
そこですかさず珍しいカッパドキア・ワインを彼女のグラスに注ぎ、「僕たちはまるでジェームズとクリスマスみたいだね」と囁けば、一気に彼女の心は貴方に傾くでしょう。
時として、逆の結果になることもありますので、ご注意ください。
イスラム圏で生産されるトルコ・ワイン、是非あなたもその禁断の液体に浸ってみて下さい。