「脈拍/MUCC」レビュー | brilliant-memoriesのブログ

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ドエルさんでもあり、V系好きのギャ男でもあり、60〜00年代の音楽好きでもある私がお送りするこのブログ。アルバムレビューや自作曲の発表、日常、ブログなどいろんなことをします!

「さて、6月が終わりいよいよ7月、夏が来ます!今年は大復活を遂げた『PARTY ZOO』『M.A.D』の融合したとんでもない神イベント『DEZART Prezents SUMMER PARTY ZOO~帰ってきたM.A.D』もありますよね!私も参戦します、最初で最後でもある二十歳最高の夏の思い出になりそうで楽しみです!」

 

というわけで、興奮しっぱなしの頭をそのままに、今回はMUCCの13rdアルバム「脈拍」のアルバムレビューとなります。2度目のメジャーデビューした「SONY」からは最後にリリースされたオリジナルアルバム。kenちゃんをプロデュースに招いていたことにより、バラエティさは共通しているものの、「SONY」からリリースされた「シャングリラ」「THE END OF THE WOELD」「T.R.E.N.D.Y」とは異なる世界が広がるとのことです。果たしてどのような世界が広がっているのでしょうか!!

 

アルバム「脈拍」のポイント

 

・34thシングル「ハイデ」より久しぶりにプロデュースに携わったkenちゃんプロデュース。かつての「球体」では一部楽曲のプロデュースだったのですが、今作では全ての楽曲をプロデュースしております。今作最大の特徴は”歌メロ”を重視した楽曲が多いなという印象で、最近のMUCCに現れていたデスヴォ&シャウトを交えて暴れ散らかす楽曲が1曲しか無い、しかもその曲も最後に出来た楽曲なので実質無かったというチャレンジをしておりました。

 

・個人的には中期ムックの集大成という感じがします。歌メロを重視したラインが敷かれる今作の楽曲ですが、かなりバラエティに富んでいるのが特徴ですね。尚、限定リリースとなった33rdシングル「ブリリアント・ワールド」は未収録となっております。

 

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青→シングル曲 黒→アルバム曲 赤→カップリング曲

 

1.「脈拍」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

アルバムタイトルナンバーで開幕、荒々しいサウンドで突き進むハードロックナンバーですが、サビでは大きく世界が開き、歌謡的でキャッチーな歌メロがおでまし。これまでのミヤの曲にも、唐突に様々な展開が現れては消えてまた現れるという予測不可能さを楽しむ楽曲は多くありましたが、今回はある程度次の展開を予測できそうな伏線を置いて次の展開に引き継ぐというパターンを取っており、特に「メリハリのある展開」に重点を置いた楽曲だなと思いました。

 

歌詞は生まれる前の赤ちゃん視点で光が見たい、愛が欲しいという内容。おそらく「花が咲く」時にこの赤ちゃんは産まれるということなのでしょうね。「生と死」を掲げたこのアルバムの開幕にピッタリなリリックです。

 

2.「絶体絶命」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

いかにも、MUCCらしい激しいナンバー。ヘヴィなサウンドに乗せて、リフ重視のキメを意識した音の弾圧に支配された世界、達瑯のデスボ&シャウトが響き渡るというこのアルバムでも、そしてライブでも起爆剤となる楽曲ですね。「バラバラ」にコール&レスポンスも楽しそうです。しかし、kenちゃんのアドバイスなのでしょうか、これまでのようにひたすら暴れ散らかして終わりまで突き進むのかと思いきや、キャッチーな歌メロが響くサビが現れ、世界観が光に包まれるという急展開、一筋縄ではいかない1曲になっているのが特徴です。

 

意外にもアルバム最後に出来たのが、この曲のようです。ミヤ曰く「強いパンチ力が欲しかった」とのこと。確かに、今回は特にバラエティに富んでいて、この曲を抜くと、最近のMUCCの王道でもある「Mr.Lair」「Ms.Fear」系列の楽曲が無いので、この曲がアルバム全体のバランスを保っているとも言えますね。

 

3.「CLASSIC」(作詞:YUKKE・達瑯 作曲:YUKKE)

 

35thシングル。4度目となるYUKKE作詞楽曲が遂にシングルに、しかも「七つの大罪」のOPに採用されました。

 

複雑に展開する楽曲を作曲することが多いYUKKEがここまでシンプルな展開の楽曲を書くのかという驚き、どこかシリアスさが漂うJ-POPナンバーです。凍てつく世界の中を疾走していくのですが、地味にジャジーなピアノや最近のYUKKE曲ではよく見られるナレーションなど、見どころも多く、ここに自分のカラーを入れてきたなという感じがしますね。

 

歌詞は幼い頃に大切な友達との強い絆とあの頃の思い出の回想という感じでしょうか。幼い頃から一貫されて強気結ばれているキズナ、友情についてが描かれています。アニメの方は未視聴ですが、アニメのストーリーを意識している可能性も高いです。

 

4.「KILLEЯ」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ)

 

カップリングが3曲もある34thシングル「ハイデ」のカップリング曲より参戦。カップリング曲がアルバムに採用されるのは、「是空」の「商業思想狂時代考偲曲」以来でしょうか。さて、楽曲の方はその(平成版)を思い出させるスラッシュメタルを軸にダンスビート、ハードコアと展開に展開を重ねるミヤらしさ全開のナンバーですね。メタルゾーンでは要所要所に挟まれるツインギターソロや、楽曲の楽器陣のアプローチ、フレーズなどに「X」を思い出させます。

 

タイトルの「Я」は前作の「HATEЯ」にも見られましたが、やはりKORNリスペクトでしょうか。歌詞はやはりライブを意識したような感じがして、特に深い意味は無いように思えますが、厨二心をくすぐられる攻撃的なワードが散りばめられ2重に盛り上がれそうな感じがします!

 

5.「BILLY×2~Entwines ROCK STARS~」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ・SATOち)

 

前々作、前作には曲を提供しなかった為、凄く久しぶりな感覚がするSATOちの楽曲、懐かしさを感じさせるロックンロールをMUCC流に構築したようなナンバーとなっております。インタビューによるとこの曲はあまり深くは作り込まず、「せーの」と1発録りに近い形で制作されたとのこと。メンバーもこの曲に対しては初期衝動しか無いという感覚だそうですよ。他の曲に比べると良い意味でかなりラフな感じがして、SATOちの楽曲に映る明るさも存分に彩る非常に楽しい楽曲に仕上がっています。

 

歌詞も達瑯の音楽対する目覚め・初期衝動のものが感じられ、BACK-TICKやhideをはじめとしたアーティストの名前が出てくるのも特徴ですね!!

 

6.「りんご」(作詞:ミヤ 作曲:YUKKE・ミヤ)

 

YUKKE作曲。ベースリフが引っ張り、レゲエ・スカ要素を感じさせる世界観、そこにYUKKE特有の歌謡性を織り交ぜた独特且つ歪な楽曲となっています。今回YUKKEはこのアルバムに3曲の楽曲を提供していますが、個人的にこの曲が1番YUKKE”らしさ”を感じるのですよね。

 

歌詞は作詞を担当したミヤ曰く、「ちょっと不思議な女の子をイメージした」とのことですが、そのイメージで「りんご」といったら、間違いなくあの歌姫しか思い浮かびませんよ笑。しかしながら、同じインタビューで同じ名前の世界的企業の名前を挙げていたので、歌詞が描く世界像の中にチクりと刺さるシニカルさも踏まえて、もしかしたらその企業に対する楽曲なのかもしれませんね。

 

7.「EMP」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ)

 

ヘヴィなリフが鳴り響いているハズなのに感情のギリギリを征くようなメロディラインと展開によって、非常にシリアスな世界を構築しているというある意味チャレンジしている楽曲です。達瑯の歌い方もラップの部分などではこれまでの楽曲で見たことの無い感情をむき出しにしていてかなり新鮮味がありました。

 

歌詞は達瑯がインタビューで答えていたように、「世の中に怖いこと・不穏なことが一杯起きてるけど、人々は見て見ぬ振りをしている」という現状を描いており、シリアスな世界観とシニカルなリリックが共演してしまうというまさかの事態!、絶妙な化学反応を起こしています。

 

ちなみにこの曲、よほど気に入ったのか後に発売されるトリビュートアルバムにてkenちゃんがカバーすることとなります。

 

8.「故に、摩天楼(ALBUM MIX)」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

32ndシングル。アニメ「金田一少年の事件簿」のOPとなっております。発売が2014年ということで、前回レビューしたミニアルバム「T.R.E.N.D.Y.」よりも前にリリースされたまるで夜の中を駆け抜けていくような王道ポップロックナンバーです。このアルバムに収録されたシングルの中では1番古く、唯一kenちゃんプロデュースでは無いシングルですが、今作に収録するにあたり、アルバムリミックスされており、kenちゃんを交えてのアレンジとなります。

 

作詞はミヤが担当、タイトルからして、てっきり達瑯作詞かと思いました。歌詞はこの不条理なこの世界から脱するために新世界へ行こう(要はいなくなろう)というリリックとなっており、前々作「THE END OF THE WOELD」を彷彿とさせるにようとなっています。

 

9.「秘密」(作詞:達瑯 作曲:YUKKE)

 

今のところ3の倍数ごとにやってくるYUKKEの楽曲、今度はキラキラ煌めく洒落たダンスチューンが現れました。メロウなエレピの鳴らし方、シンセの入れ方が夜の煌めく大都会を演出、そしてBメロにヒップホップ要素を入れることにより、現代音楽感を強く打ち出した楽曲となっています。かつての「カルマ」に収録されたデジタルな楽曲とはまた別の道を征く都会的な楽曲ですよね。終盤はジャズに切り替わり、更にシャレオツな雰囲気を生みだして終わります。

 

歌詞は2人の愛がさらに深まる経過を描いたラブソングとなっていて、どことなくMUCCの都会的なナンバーの原点にもなった「ファズ」の延長上のような感じもしますね。

 

10.「コミューン」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

この曲を聴いて最初に浮かんだ感想は「?」。しかしながら、自然とやみつきになってしまう不思議な魅力が詰まったスルメ曲のような役割を果たしている楽曲とも言えるでしょう。非常に異国情緒さが漂う摩訶不思議なナンバーとなっており、あの「志恩」の世界観をこの当時のMUCCが再構築したような感覚がします。常になんらかのハモりが乗っかって、達瑯のボーカルが楽器みたいな役割を果たしているのが特徴ですね。

 

タイトルの「コミューン」は「共通の宗教または、理想的理念を実践するために集合した人々をさす」とのことで、歌詞にもどことなく宗教なワードが登場しますが、所謂「人を蹴落として美を手に入れた君」は教祖様ということですかね。インタビューでミヤがこの曲の印象について「表ではなかなか出てこないけど、裏では何か成立している」というワードこそがこの曲そのものだと思いました。

 

11.「勿忘草」(作詞:達瑯 作曲:達瑯)

 

インタビューではkenちゃんのセンスが存分に発揮されているとミヤと達瑯が答えているように、非常にkenちゃんの楽曲に現れる情緒さがそのまま乗り移ったかのような達瑯のバラードです。イントロやソロに於けるギターも非常にkenちゃんが奏でてそうな美しいラインを奏でています。ラルクの「虹」「叙情詩」「ALONE EN LA VIDA」辺りの楽曲が好きなドエルさんは絶対にハマると思いますよ!!

 

歌詞は勿忘草の花言葉でもある「真実の愛」「誠の愛」を失恋してしまった恋に捧げるというシチュエーションとなっており、消えた恋の未練を真逆の意味の言葉を使って感情をより濃密に浮かび上がらせます。このリリックを謳う達瑯の感情表現の付け方にも注目して欲しいですね。

 

12.「シリウス」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

幻想的なクリーンギターの音色が彩る世界の中を疾走するポップロックナンバー。アニソンに通用するようなキャッチーさが特徴です。中盤では一時ヘヴィになる部分がありますが、デスヴォが出てくる程ハードにはならず、あっけらかんと本来の姿に戻る部分が意外だなと思いました。

 

歌詞は死んでしまった主人公が恋人を空から見守っているというシチュエーションと考察しています。恋人と死別してしまったシチュエーションを描いた楽曲はこれまでにいくつかありましたが、こちら側が死ぬのはおそらくこの曲が初でしょう。

 

13.「孵化」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ)

 

6分にも及ぶかなり緊張感が漂うナンバー。歌メロは歌謡曲っぽく始まり懐かしさを感じさせるMUCCらしい世界観なのですが、その後はミヤらしく展開に展開を重ねながら展開していき、新しい世界観が現れては消えてまた現れるを繰り返すという楽曲となっています。特に曲の長さに対してヴォーカルが謳う部分がそこまで多くないので、先述の要素をより強く堪能することができ、バンドの演奏力の高さと達瑯の表現力を堪能することができます。

 

歌詞は殻を破って新たな世界に飛んでいく様を描いており、これが生へ向かって飛び出すのか死へ向かって物理的に飛び出すのかで、映る解釈がガラリと変わりそうですが、この後に来る「ハイデ」と、アルバム全体、そしてタイトルナンバーの「脈拍」にも繋がる世界観を見てみると個人的には後者などではないかと思います。

 

14.「ハイデ」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ)

 

34thシングル。シングルではかなり久々となるkenちゃんプロデュースで、ここから35thシングル「CLASSIC」を経て、今回のこのアルバムのプロデュースにまで繋がります。歌謡曲のような展開をする楽曲となっており、同じ展開でも楽器陣や歌詞がどう盛り上げるかによって、映る景色ががらりと変わるという部分がこの曲の注目ポイントです。

 

歌詞はハイデの意味の通り、夢を見ていたけど厳しい現実に直面して堕落、再起不能になった主人公をそっと包み込んでくれるというシチュエーションとなっております。やはり、この曲があるからこそ、前曲の「孵化」の意味もより濃密になりますし、結果的には堕落してしまいましたが、最後に最後救いの手を差し伸べて、孤独じゃ無いという大切なものに気づかさせてくれるという大切な楽曲でした。

 

 

最後の楽曲でもある「ハイデ」はおよそ4分の楽曲ですが、本作の収録時間を「69分」にするために3分ほどの無音が入っています。これはあの最凶のアルバム「朽木の灯」と同じパターンですが、無音の間に感じる感情は「真逆」と断言しても良いでしょう。kenちゃんプロデュースということもあり、歌メロを重視しつつ更にバラエティに富んだ楽曲達が並んだ中期ムックの集大成ともいえるアルバムでしたね。

 

ここで新たなことに挑戦したくなったのか、この後MUCCはベストアルバムを発売した後、インディーズへ戻り現在にも続くMUCCの「現在期」が始まることとなります。しかし、ここから7年後、2024年にMUCCが3度目のメジャーを果たしますよ(予言)。

 

次回は「カップリング・ベストⅡ」のレビューをする予定です。今回もありがとうございました、次回もよろしくお願いします!