「球体/MUCC」レビュー | brilliant-memoriesのブログ

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ドエルさんでもあり、V系好きのギャ男でもあり、60〜00年代の音楽好きでもある私がお送りするこのブログ。アルバムレビューや自作曲の発表、日常、ブログなどいろんなことをします!

「水曜日、DEZERTのSORAくんがkenちゃんと達瑯(途中参戦)とゲーム配信していましたね。その前にスペースもやっていたのですが、丁度その時渋谷にいまして、配信を聴いてニヤニヤしながらセンター街を歩いていました。スペースには地味にYUKKEが聴き手にいたのも面白かったです。」

 

今回はMUCCの9thアルバム「球体」をレビューする回です。前作「志恩」ではかなりマニアックなサウンドに挑戦して、見事民族音楽とダンスを自身の音楽性と融合することに成功しました。今回は、アメリカの音楽祭「taste of chaos」ツアーに参加した後で得た経験を活かしたアルバムだそうですよ!果たしてどのような世界が広がっているのでしょうか!

 

アルバム「球体」のポイント

 

・今作の前半は、アメリカの音楽祭「taste of chaos」ツアーに参加して得た経験を楽曲に注いだたため、メタル成分がかなり強いのがポイントです。その荒々しさと殴りかかる重圧は「朽木の灯」とタメを張れるか、それを越える勢いがあり、メタラーさんも喜べるような内容になっています。中盤以降は、自身の音楽性の広さをアピールする楽曲達で構成されていますが、至る所にメタル要素が登場して、メタルと融合しようと試みてる気がします。

 

シングル「アゲハ」「空と糸」でプロデューサーとして参加したラルクのkenちゃんが今作の一部楽曲のプロデュースを担当しています。今回は一部の楽曲のみでしたが、この後もkenちゃんはアルバムをプロデュースしたり、ライブにゲストとして出てきたり、達瑯に楽曲提供をしたりと、現在でもMUCCと深い交流が続いています。

 

それではいってみましょう!

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青→シングル曲 黒→アルバム曲)

 

1.「球体」(作曲:ミヤ)

 

今作の始まりは勿論インスト。前作「志恩」を思い出させる民族サウンドの雰囲気をかき乱すようにへヴイなエフェクトを掛けたドラムの重圧が乗るという内容。「志恩」→「球体」という世界観の変化を表現したようなサウンドです。

 

2.「咆哮」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

そして、早速今作の要でもあるヘヴィメタナンバーが登場。キメを意識した力強いリフの刃が降り注ぐ中、サビでは、事務所の後輩メンバーを総動員させたという男臭いコーラスが殺伐とした雰囲気を更に引きだしていて素晴らしいですね、ライブ及びフェスで更に化ける楽曲だと思います。中盤の達瑯の咆哮も、元々低音を得意としていることもあってかなり迫力があります。歌詞は世界の不条理に逆行する者を称える内容、楽曲に映る世界観にピッタリなリリックです。

 

3.「アゲハ」(作詞:達瑯・ミヤ 作曲:達瑯・ミヤ)

 

19thシングルでkenちゃんプロデュース第1弾。遂に達瑯の曲がシングルに採用、これにてメンバー全員の楽曲がシングルに採用されたことになりました。ド頭のラルクのような、シンセパッドで生みだした浮遊感の上を舞うギターソロから始まり、なだれ込む本編はMUCC全開のステータスを攻撃力に全振りしたヘヴィメタル。「朽木の灯」を凌駕するキメを意識したバンドサウンドの重い弾丸は私たちの頭を深く深く抉ります。達瑯の低音で荒々しさを全面に押し出すヴォーカルがカッコ良すぎる、サビでは一転してファルセットを使った高音を現れるので、表現力の凄さにシビれます。更にkenちゃんがアドバイスしたであろう、これまでに無かった「リフに混ざる主張の強いワウギター」や「技を入れまくるギターソロ」といったギターアプローチの進化も見逃せないポイント。これらの要素が混ざっているのだから半端ないです。

 

歌詞はアゲハが「復活・死と再生と変化の神」という象徴にスポットを当てて展開、恋人がいなくなって堕落していく自分を映したシチュエーションに、アゲハの象徴、アダモとイヴ、極楽浄土といった表現が入り乱れ、幻想的なリリックになっているのが特徴です。

 

4.「ハイドアンドシーク」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ)

 

前作の要でもあったデジタル要素とメタルの融合を図ろうとする実験的な要素が目立つナンバー。この前に出てきた2つのメタル曲と比べるとこの曲はザ・V系特有のダークな要素を強く出していて、ちょっと「R指定」味があります。

 

タイトルはハイド...hyde様?では無く、「ハイドアンドシーク」でかくれんぼの意味。子供の頃は希望を夢見ていた少年が、現実を知り堕落して、世界の終わりを告げる鐘を鳴らす瞬間の主人公が映ります。最近は見れなかった「6」辺りで見られるダークさが戻ってきたようにも思えます。これは、似たような経験したことある人ならとことん刺さる歌詞ですね。

 

5.「陽炎」(作詞:達瑯 作曲:SATOち)

 

SATOち作曲の楽曲に達瑯が作詞した楽曲。「1R」の延長線上ともいえるこの歌謡ワールド、出だしは「いい日旅立ち」を思い出させるメロディ、基本的に楽器陣は誰も目立とうとせずに黙々と世界観を演出し、達瑯のヴォーカルが光ります。

 

歌詞はバスに乗って君の恋人の元へ向かう主人公が映ります。どうやら彼女はリストカット癖があるようですが、原因でもある孤独感は二重の意味に受け取れてしまう所に、逹瑯の作詞力の高さが表れています。

 

果たして「伝えたい陽炎」とは、どちらの告白なのでしょうか?

 

6.「レミング」(作詞:ミヤ 作曲:SATOち)

 

SATOち作曲の楽曲にミヤが作詞した楽曲。いかにも今作らしい荒々しく突き抜けるメタルナンバーですが、変拍子を挟んだ展開やシンセの音色からファンタジー要素も感じられて不思議な雰囲気を醸し出します。コードの使い分け方と不安定さを醸し出す確かなメロディラインが印象的ですよね。

 

「レミング」とはネズミの一種で、集団移動することで集団自殺するとの迷信があるとのこと。歌詞は失恋した主人公が立ち直るために自分を鼓舞することで、立ち直ろうとする前向きなリリックですが、タイトルの「レミング」は傷跡を溜めすぎちゃうと痛みに溺れて死んでしまうという例えで使われていると思われます、仮にこの考察が正解ならば、負の世界出身のムックらしい表現だなと思いますね。

 

7.「オズ」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

前作「志恩」の世界観を引き継いだダンスナンバー。ココにも「ネオ・フォーク」の要素が感じられてバンドの音楽性の核は健在であることを証明しているのが、MUCCらしいですね。ということで、サビはかなりの中毒性、「おっさきはくら〜ぁ〜い♪」の部分が特にお気に入りです。この唐突なダンスナンバーの出現は、次に来る大きなチャレンジした楽曲を引き立てる役割も果たしている感じがします。

 

歌詞はかなり難解でしたが、こんな考察してみました。タイトルのオズは勿論、「オズの魔法使い」。このお話は大まかに話すとドロシー御一行が欲しいものを手に入れるために努力してほしいものを手に入れる話です。しかし、所詮はおとぎ話。今回はずっと欲しかった「愛」をどれだけ努力しても手に入れなくて闇堕ちしてしまった主人公が映ります。努力しても手に入れられないものはあるということの暗示と皮肉ですね。

 

歌詞にはライオン、カカシが登場するのですが、ブリキの木こりだけは登場せずハブかれちゃいました。木こりにとっては解せない事案ですよ!

 

8.「浮游」(作詞:達瑯 作曲:YUKKE)

 

YUKKE作曲。今作のアルバム曲の中ではこの曲のみkenちゃんプロデュース。YUKKEお得意の歌謡曲に「ネオ・フォーク」を取り込んでより濃密にさせて、更にそこに前作「志恩」で得たダンスの要素と融合させるという、かなり大きなチャレンジをした楽曲です。「ネオフォーク」の核を知ることとなった前作のYUKKE曲はオーケストラとの融合を図った「小さい窓」だったので、「ネオ・フォーク」と融合したYUKKE曲を聴けるのは、今回が初。元々歌謡的な音楽が得意だったこともあって、見事なまでに素晴らしい化学反応を起こしております。

 

歌詞は、夢見ていた少年の頃の自分と、現実を知ってしまった社会人の自分。街や環境が変わる中、2つを結ぶ共通点が空の鯨のような雲だったということに気づいて、空想でタイムスリップをするというという内容です。

 

9.「賛美歌」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

ゲストとしてミヤの母も参加した、7分間にミヤの深い想いが詰まった亡くなってしまった祖母へ送る壮大なバラード。バンドサウンドの音が中心で、悲しげなアルペジオ、確かな血を注ぐベース、儚い感情をぶつけたようなドラム、サビになると一気にファルセットを使い高音を披露するヴォーカルといった「クラシック」な要素が強いですね。間奏では祖母が好きだったという「アヴェ・マリア」のメロディーがそのまま挟まれていて、逹瑯とミヤの母が歌います。少し自分語りが入ってしまいますが、私の音楽好きになったきっかけがクラシックで、しばらくクラシックの世界に居て、こちらの世界に来たので、ここにはかなり興奮しました。歌詞はミヤから祖母へのメッセージです。

 

10.「空と糸」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ)

 

20thシングルでkenちゃんプロデュース第2弾。原曲は「アゲハ」同様、海外で製作されていましたが、日本の雰囲気を出すために、帰国してからレコーディングしたというエピソードがあります。そのこともあり、和のメロディラインを感じられる要素とデジタル要素、さらにはヘヴィ要素も織り込んでいて、実験的な部分も多く見受けられます。また、達瑯のヴォーカルに様々なエフェクトを掛けまくっているのも新しいですね。少し前に、この曲のエフェクトを掛かった場所を「ボカロっぽい」ってレビューしている人がいたのですが、きっとハモり部分ですよね、分かります!

 

歌詞は達瑯が2種類用意していて、それをkenちゃんが選んで決定したとのこと。オラオラ系主人公の恋人ができた幸せな瞬間から別れて絶望するまでのストーリーを描きます。そして、タイトルから妖怪ウォッチの「あやとりさま」を思い浮かべてしまった私です。

 

 

11.「hanabi」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ)

 

今作のラストは、アカペラから始まりバラードかと思わせるように進行して、途中から一気にポップロックに変わる展開が印象的なナンバー。ロックサウンド上にはシンセストリングスやシンセ、さらには木管楽器も現れより幻想的に、そしてより和ロックに。真夏の夜、花火が上がる前の静寂と花火が上がり盛り上がる心の高鳴りを思い出させます。この曲を聴いて思い出したのが、同じ真夏の楽曲である「流星」の存在。このリリックが「流星」の”あの頃の夜”の出来事で、みんな知らない2人だけの場所からこの打ち上げ花火を見ているというかなりエモい光景が浮かんだのですよね。しかしながら、歌詞は別れた後に恋を回想して感傷に浸る主人公が映る失恋がテーマです。

 

 

全11曲、これまでのMUCCのアルバムの曲数からすると少なく感じますが、海外から影響を受けた、MUCCのヘヴィメタル要素の更なる追求とそのヘヴィ要素をどうにかして他の楽曲に組み込もうとするチャレンジ精神が見受けられたアルバムでした。また、前作「志恩」のマニアックな要素も登場していて、中盤にて異彩な存在感を放っていたのが印象的でしたね。次回でその異彩を追求した結果、暴走した問題作が生まれる訳でもありまして、その片鱗が見えるようにも感じます。

 

次回はそんな問題作の「カルマ」...の前に「カップリング・ベスト」のレビューをしようと思います。よろしくお願いします!